高校球児ならぬ“高校ペン児”をご存じだろうか?1992年に始まった「まんが甲子園」に参加する高校生の愛称だ。2023年の大会では、鳥取県立米子高校の漫画研究部が最優秀賞を受賞、山陰勢として初めて“高校ペン児”の頂点に立った。
“熱い”夏を終え、新学期を迎えた学校で、部員たちの素顔に迫った。

山陰初の“快挙”を達成

米子市・鳥取県立米子高校の体育館のステージに縦5メートル、横10メートルの巨大なイラストがお目見え。漫画研究部の部員たちからは「おおぉぉ!」と声を上がった。

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これは、8月30日から2日間開催される「学園祭」のメイン会場を彩るキービジュアル。学園祭を楽しむ生徒がアニメタッチで描かれている。

イラストを制作したのは、8月に山陰初の「まんが甲子園」最優秀賞という快挙を成し遂げたばかりの、米子高校漫画研究部の部員たちだ。

高知市で開催された「まんが甲子園」は高校生の漫画の頂点を決める大会だ。1992年に始まり、32回目を迎えた2023年は、山陰から米子高校ただ1校が予選を突破し、高知市で開かれた本選に進出した。

本選で与えられたテーマは「どんでん返し」。
現代文明に生きるおばあさんの前に、川上から桃が流れてくるが、洗濯機を使い川で洗濯をしないおばあさんは、桃をスルーしてしまった…という、昔話の「桃太郎」を題材にしたストーリーで「どんでん返し」を表現した米子高校は高い評価を得た。

米子高校 漫画研究部・鶴市万結副部長:
(結果が)大丈夫かなと(不安は)あったが、優勝できてすごいと思うし、部としてもうれしい

“企業からの依頼”で作品を制作

夏休みが明け、漫画研究部は新たな作品に取り組んでいた。

制作するのは、米子市の建設会社から依頼を受けた求人募集用のPRマンガ。主人公は、就職先を探し建設会社を訪れた女子高校生だ。

女子高校生:
私体力ないんですけど そういうのに向いてるのあるんですか

男性社員:
いい質問だ。今の時代、体力勝負というより、プログラミングができるやつとかの方がいい

女子高校生:
それなら…パソコン得意だし、私にもできるかも

男性社員:
ここに来いとは言わんが、その“できること”を大切にしな

高校生ならではの視点でストーリーを展開。シナリオは部員が作成し、作画にはパソコンを駆使。専用のタッチペンで描いていく。

米子高校 漫画研究部・鶴市万結副部長:
自分の好きな絵柄で描きつつ、依頼されてきた人の要望に応える。自分だけの考えだけで描かないという考え方が生まれるようになった

育まれる“社会とのつながり”

企業からの依頼というかたちで地域と接点ができたことで、イラストの表現にも幅が生まれたという。

米子高校 漫画研究部顧問・河本文則顧問:
地域の人のためになったり、誰かを喜ばせることにつながったりして、外に自分の作ったものを自信を持ってアピールして、表現したり、絵がもっと好きになってもらえたら。それが部活の目標

米子高校 漫画研究部・鶴市万結副部長:
将来イラストレーターになりたいと思っているので、漫画研究部がこんな漫画を描けるというのも(地域に)広まっていったらと思う

描くことの楽しさ、そこから生まれる社会とのつながり。山陰初の偉業を成し遂げた“高校ペン児”たちの描く世界は、広がり続けるに違いない。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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