温泉で知られる佐賀・嬉野市。2022年、西九州新幹線が開業し、コロナ禍を乗り越えた今、観光客は増加。にぎわいが戻り旅館や商店街からは“うれしい悲鳴”が聞こえてくる一方、“人手不足”が深刻な課題になっている。

にぎわい戻ってきた観光地

「西九州新幹線」と玄関口の「嬉野温泉駅」が開業して9月で1年。県内有数の観光地・嬉野市では新型コロナの5類引き下げや、全国旅行支援などをきっかけににぎわいが戻ってきた。

観光客(五島から):
武雄で新幹線に乗り換えてこちらへ。やっぱり温泉ですよね。嬉野温泉初めてなんですけど、すごく気になるなと

観光客(長崎から):
夜市に行ったら人の多さにびっくりした

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橋爪菓子舗 橋爪久美子さん:
いままでの反動で、わっと押し寄せてくる感じがあって、お客さん多いですね。こじんまり、家内工業で回していますから、ということで、お客さまには「いっぱいいっぱいでごめんね」と言っています

嬉野の観光を支える宿泊業。1950年創業の和多屋別荘では国内外から旅行客が増え、夏休み期間から9月まで土日はほぼ満室だ。

和多屋別荘 中島徳恵支配人:
新幹線にご乗車のお客さまが大変多くなっていて、私たちも駅までの送迎が大変多くなりました。コロナ禍に比べたらだいぶお客さまも戻ってきたので、忙しい日々を送っております

旅館は深刻な“人手不足”

一方、長いコロナ禍を乗り越えたともいえる今、嬉野の観光業界はある課題に直面している。

嬉野温泉旅館組合 山口剛代表:
嬉野も特に旅館は“人手不足”になっている。なかなか求人をかけても応募がないとか

嬉野温泉の観光協会と旅館組合、いずれも代表を務める山口剛さんは、コロナ禍では多くの旅館が従業員の解雇を余儀なくされた一方、新たに求人を出しても宿泊業ならではの働き方を背景に人手が集まらないと話す。

嬉野温泉旅館組合 山口剛代表:
旅館は連続休暇が取れない、土日休みが取れないので結構酷な業種なんです。そのあたりがネックになっているのかなと思っています

新規参入で“求人数”は倍増

ハローワークの調査では宿泊業・飲食サービス業の求人数は最も落ち込んだ2020年と比べ、この2年間で倍増した。

解雇した従業員は戻らない一方、旅行客は急増しているのが主な要因だとみられている。こうした結果、最新の有効求人倍率はフルタイムで3.80倍、パートタイムで12.71倍まで膨れ上がり、まさに“求人過多”、人手不足が顕著だ。

さらに、嬉野の宿泊業には新規参入の動きもある。7月、嬉野温泉駅前に開業したのは、アメリカ大手のホテルチェーンマリオットなどが手掛けるホテルだ。

フェアフィールド・バイ・マリオット・佐賀嬉野温泉 池田厚支配人:
オープニングスタッフ11人のうち7人は佐賀県出身者で、そのうち3人は嬉野市出身のスタッフ。地域活性化につながることをやっているので、基本的に地元雇用で進めている

嬉野市内には、2022年と比べ3つの旅館やホテルが増え、34施設になった。10月1日にはJR九州の高級旅館「嬉野八十八」がオープンする。従業員の8割から9割は“地元雇用”で進める方針で、人材確保の競争が加速している。

大胆な“働き方改革”で人材確保へ

こうした中、山口さんが副社長を務める1925年創業の老舗旅館、大正屋ではある“働き方改革”を始めた。

大正屋 山口剛副社長:
青が予約入っている分。で、もうこれが休館で、赤です

予約画面には“休館”の文字がずらり。

大正屋 山口剛副社長:
なかなか有給休暇の消化が難しくなったんですね、忙しくて。どうしたらいいかなと考えたときにまとめて取ろうと。売り上げは減るけど致し方ないと決断して、10日間の連休を決めました

大正屋グループが2023年から始めたのが10日間の連続休館日だ。運営する3つの温泉旅館が、休む時期をずらすことで、グループ全体としては休業することなく220人の従業員全員がリフレッシュ休暇を取得できる仕組みになっている。

大正屋 山口剛副社長:
売り上げより“人材確保”これが本当に第一です。今度の新入社員にしても“こんな企業なんだ働いてみようかな”とか思っていただけるようになったらいいなと思います

このほか、従業員のいないセルフステイ型を進めたり、予約を制限したりと、各旅館で試行錯誤が続いている。

大正屋 山口剛副社長:
本当に人手不足は深刻。旅館は人がいないと商売できないからですね。お客さんにマッチしたサービスする仕組みを今から模索していかないといけない

西九州新幹線の開業1周年を迎える9月以降、行楽シーズン・秋の繁忙期に入る観光業。さらなるにぎわいづくりに向け今度は“人手不足”という課題をどう乗り越えていくかがポイントと言えそうだ。

(サガテレビ)

サガテレビ
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