人気上昇中のヤギ。厄介な雑草を食べてくれるだけでなく心を和ませてくれるとして、引く手あまたの人気ぶり。3カ月3000円の料金でレンタルをしている牧場では「順番待ち」となっている。最新事情を取材した。
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会社の敷地でムシャムシャ
長野県岡谷市の金属加工会社・今井商工。7月、新たな仲間を迎えた。
5月1日に生まれた双子のヤギ。2頭ともオスで、名前は兄が「にいに」、弟が「めえめ」。南木曽町の牧場から買い取り、工場の横に小屋を建てて飼育している。
リードをつけてもらい勢いよく飛び出すと、雑草が生い茂る会社の敷地でムシャムシャと草を食べ始めた。これがヤギを飼育するようになった理由の一つだ。

企画室長の福本克三さんは、「環境負荷の軽減と従業員の癒やしになればと思ったのと、SDGs推進登録企業に申請していて、ヤギを飼うことになった」と話す。
会社の敷地は1万2千平方メートル。その3割ほどが空き地となっていて夏場は雑草が伸び放題。
これまではシルバー人材センターに依頼して、年2回、草刈り機で刈ってもらっていたが、燃料を使わない「エコな除草を」とヤギを飼うことにした。ヤギは1頭あたり1日に3キロから5キロ、面積にして6畳分ほどの草を食べるといわれている。

従業員たちの癒やしの存在にも
2頭は従業員が持ち回りで世話をしている。
従業員たちは、「仕事の合間にほっとできる」と、予想通り、癒やしの存在にもなっている。

会社では近隣の保育園児たちにヤギとふれあってもらうことも検討中。
いずれ2頭は会社の「広報担当」にもなる。
企画室長の福本さんは、「一応もう社員になったので、これからこの子たちを媒体にして会社のイメージアップも図っていきたい」と、ヤギに期待している。

サルの追い払いにも効果
県内でも注目されるヤギの飼育。
以前、紹介した小谷村の集落では農地の雑草を食べてくれるだけでなく、サルの追い払いにも効果を上げていた。
もちろん、「かわいい」と住民たちの心も和ませている。

“草刈り代行” レンタルは順番待ち
ヤギの人気ぶりをうかがえる施設がある。伊那市の「産直市場グリーンファーム」。
動物たちとふれあってもらおうとロバやヤギを飼育し、15年ほど前からレンタルにも対応している。
ヤギのレンタルは1頭で3カ月・3000円。最大6カ月まで延長可能。
現在、7歳前後までの70頭ほどがレンタルの対象となっているが、すべて出払っている。

ヤギは農家を中心に引く手あまた。リピーターも多いという。
現在、20組が順番待ちをしていて、早くて1カ月待ちという状況だ。
エコな除草として人気で、ここ数年、レンタルが増えているという。
若者もヤギを地域との交流に活用
ヤギを地域との交流に生かしている若者たちもいる。
信州大学の学生有志「ヤギ親衛隊」。キャンパスに近い畑の一角に小屋を建ててヤギ1頭を飼っている。
ヤギ親衛隊の一員の上野真太郎さんは、「ヤギは頭をつつき合うのが遊びみたいで、たまにこうやって頭を角を持って押し合いみたいなことをすると楽しいかなって。なかなか体力使いますけど」と、飼育を楽しんでいる。

ヤギの名前は「草取正雄」(オス・5歳)。
代表の山本果凛代表は、「創始者が『草刈正雄』が好きだったかもしれない」と話す。
2016年に発足したヤギ親衛隊。「ヤギのミルクを飲もう」というのが出発点だったが、今はヤギとボランティア活動もしている。
夏の間は地域の草刈りに出かけたり、地域のイベントに参加したりしている。

「ありがたい、ますます愛着が」
この日は「正雄」を軽トラに乗せて、農地の草刈りへ。
大人の背丈ほど伸びた雑草。東京在住の人から「実家の農地の草を何とかしてほしい」と依頼された。
早速、「正雄」は草をムシャムシャー。

でも、「正雄」だけに任せていたら、いつ終わるかわからない。
学生たちが必死に草を刈る。
ヤギ親衛隊の上野さんは、「グルメなので、もっと雑草を食べてほしい」と冗談交じりに話す。でも、実のところ「正雄」はマスコット的な存在だとか。

一緒に草刈りをした依頼主の親族は、「最初は怖かったけど、見るうちにかわくて愛着がわいてきた」、「本当にありがたく、ますます頑張ってもらいたい」と感謝している。
ヤギ親衛隊の代表・山本さんは、「ヤギを通して私たちがいろんな人とのつながりとか持てているので、イベントにはたくさん、これからも行きたい」と、ヤギとともに積極的に活動をしていきたいとしている。
厄介な雑草を食べ、心も和ませてくれるヤギ。
ますます、重宝されそうだ。

(長野放送)