秋田・にかほ市で黒毛和牛の繁殖に取り組む男性がいる。子牛が生まれてから食肉用として市場に出すまで、こだわりの生産方法に挑戦する生産者を紹介する。
受け継いだ牧場で育てる「経産牛」
鳥海山の麓(ふもと)、標高500メートルの場所で牛を放牧し育てているのは、にかほ市出身の渡邊強さん(24)。にかほ市上の山放牧場を、若干20歳という若さで父から受け継いだ。

にかほ市は冬場の雪が少なく、夏もほかの地域より気温が上がらないため、牛にとって過ごしやすい環境と言われている。

上の山放牧場は、40年以上前から肥料や農薬を使わない自然の牧草で牛を育てている。渡邊さんが手がけるのは長い間子牛を産んだ母牛「経産牛」だ。

これまでは主に、和牛を繁殖させ子牛を産み、その子牛を競りにかけるところまでを商売にしていたが、渡邊さんが放牧場を受け継いでからは「経産牛」を食肉として売るところまで手を広げた。
現在「放牧経産牛肉」はほとんど市場に流通していないが、渡邊さんはそのおいしさに太鼓判を押す。

上の山放牧場・渡邊強さん:
ただの赤身というわけではなく、10年以上育てているので赤身の肉の味の濃さがある。肉は固いが、かめばかむほど肉汁が出てくるような、牛の滋味深い味わいを感じることができる牛肉

渡邊さんの経産牛は、上の山放牧場のオンラインサイトで購入することができるほか、地元・にかほ市のフランス料理店「レメデニカホ」で味わうことができる。
注目される“牧草だけで育てた牛”
渡邊さんの挑戦はこれだけでは終わらない。2023年3月に「子牛に草だけを食べさせて食肉にする」という新たな取り組みを始めたのだ。
上の山放牧場・渡邊強さん:
生まれてから肉になるまでの4年間、草だけを食べさせて育てる黒毛和牛。今のところ、僕が調べた限りでは、日本では生産している人は(自分しか)いない

牛肉は、育て方の違いで大きく2種類に分類される。穀物や人工的に配合した穀物を与えて育てられた「グレインフェッドビーフ」と、基本的に牧草のみを食べた「グラスフェッドビーフ」の2つだ。

渡邊さんが育てるのは「グラスフェッドビーフ」だ。国産の草だけを食べさせて育てた牛は、健康や体づくりを大切にするアスリートなどから注目されている。

上の山放牧場・渡邊強さん:
これからは、いま取り組んでいるグラスフェッド黒毛和牛を少しずつ増やしていきながら、(牛に)ストレスをかけないように、牛が嫌な気持ちにならないように育てていることを(消費者に)しっかり伝えることができる農家になりたい
(秋田テレビ)