太平洋戦争末期、広島と長崎に原子爆弾が落とされた。被爆者の平均年齢は85歳を超え、その声を直接聞けなくなる時代が刻一刻と迫って来ている。あの日の出来事を紙芝居を使い語り続ける、熊本市在住の女性の思いに迫った。

78年前の被爆体験語り継ぐ女性

「母ときょうだいたちで食卓を囲んだときでした。突然、強烈な閃光(せんこう)がして雷の稲光が束になってきたような光がして、私は母にしがみつきました」と語るのは、熊本市に住む工藤武子さん(85)だ。

78年前、長崎で被爆した熊本市在住の工藤武子さん(85)
78年前、長崎で被爆した熊本市在住の工藤武子さん(85)
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長崎で被爆した工藤さんは78年前、きのこ雲の下で何が起こったのかを熊本で語り続けている。

工藤武子さん:
核兵器は廃絶しないと私たち人類と地球の未来はないと本当にそう思うから、まず知ってほしい。知らない人が多い気がするから

78年前の8月9日、当時7歳だった工藤さんは爆心地から約3kmの所にあった長崎市の自宅で被爆した。家族を含めて大きなけがはなかったが、14年後、父親が肝臓がんで54歳の若さで亡くなった。その後、母と姉、弟、妹も相次いでがんを患い亡くなった。そして、工藤さん自身も3年前に肺がんの手術を受けたという。

工藤武子さん:
私は3年前に肺がんの手術。(原爆の影響は)延々と人の体内に残って細胞を痛めつけて。こんな恐ろしい非人道的な兵器は即刻、廃絶しなきゃって

非人道兵器 紙芝居使い恐ろしさ継承へ

「核兵器の非人道性を多くの人に伝えたい」

結婚を機に長崎から熊本に移り住んだ工藤さんは、6年前から紙芝居を使った被爆体験の継承に取り組んでいる。

紙芝居使い被爆者の体験伝える
紙芝居使い被爆者の体験伝える

工藤さんの紙芝居の講話:
まだ火の気のある焼け跡を夢中で掘り返しました。そして、ついに変わり果てた弟の姿を発見しなければなりませんでした。戦争のない、核兵器のない世界が一日も早く来ることを心から願わずにはいられません

参加者:
体験した方の実際の話はすごく心に響きました。核兵器は絶対使ってはいけない

核兵器の恐ろしさを語り継ぐため工藤さんは、近く紙芝居の語り手を被爆二世に託すことも考えている。

語り手を次の世代に引き継ぐべき時と語る
語り手を次の世代に引き継ぐべき時と語る

工藤武子さん:
私が被爆者の平均年齢の85歳です。体験して記憶している最後の世代。体力的にもう何年もは続けられないから、今が二世・三世の人たちに引き継ぐべき大事なときだって

被爆者の平均年齢85歳超え…次の世代へ

8月9日、工藤さんの姿は長崎市で行われた平和祈念式典の会場にあった。被爆者の代表として核兵器廃絶への思いを込め平和への誓いを読み上げた。

平和祈念式典で被爆者代表として平和への誓い読み上げる
平和祈念式典で被爆者代表として平和への誓い読み上げる

工藤武子さん:
地球と人類の未来を守るには核兵器廃絶しかないと強く訴えるべきです

被爆者の平均年齢は85歳を超え、その声を直接聞けなくなる時代が刻一刻と迫って来ている。

工藤武子さん:
思い出すのはつらいことですが、伝えることのほうが大事。平和と核兵器廃絶は知ることから始まると思うんです。そして、今の平和の大切さ守らなくてはと感じていただけたらうれしいです

同じ悲劇が二度と繰り返されないよう、その恐ろしさを次の世代へとつなぐため工藤さんは語り続ける。核兵器のない世界がいつか来ることを願って…。

(テレビ熊本)

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