クレヨンを使って、ものの凹凸をこすり出して表現する「フロッタージュ」と呼ばれる技法で、島根県内に残る戦争遺構を写しとった作品の展覧会が、島根・出雲市で開かれた。作品を通じて、身近なところに残る“戦争の記憶“にスポットを当てる。

作品をきっかけに戦争を考える

色とりどりのクレヨンで描かれた作品。

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よく見ると、積み重なったレンガがかたどられている。

展覧会を主催した写真家・高嶋敏展さん:
和紙を敷いて、上からクレヨンでこすり出している。なので、1分の1の模写です。

「フロッタージュ」で作品を写しとる高嶋さん
「フロッタージュ」で作品を写しとる高嶋さん

出雲市佐田町で開かれている企画展「写しとる戦争」。写真家・高嶋敏展さんが、凹凸のあるものの表面に紙を当て、クレヨンでこすって形を写しとる「フロッタージュ」の技法を使って、島根県内の戦争遺構を描いた作品9点が展示されている。

アーチ状のモニュメントは、松江工業高校の構内にある戦争遺構のひとつだ。高嶋さんが定時制の美術部の生徒と一緒に制作した。

写真家・高嶋敏展さん:
この作品をきっかけに、歴史から戦争について考えてもらえたら。

また、大きく「平和の碑」と書かれた作品は、戦争で傷害を負い、出雲市佐田町に帰ってきた傷痍(しょうい)軍人たちが建立した石碑の文字をこすり出した。裏面の「戦争のない平和な世界」を願った文章も、そのまま写しとられている。

写真家・高嶋敏展さん:
この人たちは戦争で傷ついている。戦争っていうのは、人が傷ついたり、死んだりすることなのだということを、真剣に考えないといけない。

「手を動かし“腑に落ちた”」

一方、松の木の「フロッタージュ」には、「松やに」を採取した痕跡が写し取られている。

戦時中、不足する石油の代用品として、戦闘機の燃料に使われようとしていた「松やに」。出雲市内では、出雲大社の神門通りの松並木をはじめ、採取された痕跡が多く残っている。高嶋さんはこれまで、その多くを写真に収めてきたが、今回は写真ではなく「フロッタージュ」という新たな手法を用いて記録した。

写真家・高嶋敏展さん:
最初写真を撮っていたときは自分の中で、被写体と距離があった。「フロッタージュ」で、手を動かし記録することで、すっと、当時のことが分かった気がする。気持ちとか、松やにのにおいとかを感じることで、“腑(ふ)に落ちた”というか、そういう体験をした。

学校に、観光地の松並木。身近なところにも残る「戦争の惨禍」を知ってほしい。
高嶋さんは「フロッタージュ」で写し取られた「痕跡」が、“戦争の記憶”を伝えるきっかけになればと願っている。

(TSKさんいん中央テレビ)

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