24時間の介護を必要とする子どもたち、「医療的ケア児」。

北海道内で、医療的ケア児を支える動きが広がり始めている。

”医療的ケア児” 支える社会へ 

看護師:
たんの量は多いです?

佳江さん:
まだ多いような気がしますね

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看護師:
結構取れますね。じょうず~!

北海道札幌市で2歳から14歳の娘4人を育てる、運上昌洋さんと佳江さんの夫婦。

長女の愛夕さんと次女の実來さんが遺伝子に疾患を持つ「医療的ケア児」で、2人とも人工呼吸器や痰の吸引など、24時間医療的ケアが欠かせない。

この日、次女の実來さんは肺炎を患い入院中で、家では愛夕さんが訪問看護を受けていた。

「私が家のことをやっている間に看護師さんが来てくれてお姉ちゃんの体調管理と寝るまでの準備をしてくれる。子どもたちがいながらケアをしている余裕がないのですごく助かる」(佳江さん)

介護と、小さな子どもたちの子育てとの両立。

そのバランスの取り方が難しく感じることもあるという。

「救急車を呼ぶことが結構最近あったが、お姉ちゃんが搬送されて私も夜中に行くとなったら下の子たちも起きたら『ママはどこに行くの?』と泣き叫んだ」(佳江さん)

「子育てをさせていただいて勉強させてもらっている。健常の子も障害がある子も、育てるのは本当に大変だから一緒かなと思う」(昌洋さん)

長女の愛夕さんは生後6カ月を過ぎたころ、遺伝子に異常があることが分かった。

「愛夕ちゃんの育児とか介護にすごく行き詰って一緒に死んでしまいたくなるような気持ちもあったし、愛してやれないと思うこともあった。先生に話した。私は悪い母親でしょうか、と」(佳江さん)

医療的ケア児支える”NPO法人”立ち上げる

次女の実來さんにも障害があることが分かり2017年、同じ立場の母親たちが働けるようNPO法人「ソルウェイズ」を立ち上げた。

ソルウェイズは現在、北海道の札幌市と石狩市で重い障害のある子どものためにデイサービスを行っている。

職員約100人のうち18人が医療的ケア児を育てながら働いている。

「お母さんが休む時間も必要。ときにはぐっすり寝て、仕事をしない時間も必要。なにか自分がこの事業を通じて社会貢献できればいいなと思って始めた」(佳江さん)

北海道小樽市に住む小島健太郎くん、6歳。

脳が髄液で圧迫される水頭症や二分脊椎症などの障害がある「医療的ケア児」だ。

生まれつき下半身が不自由で歩くことができない。

「生まれる前の主治医の話だと車いすの生活になる。歩くことはないでしょうと言われていた」

母の照子さんが出会ったのは、元メジャーリーガーの松井秀喜さんなど多くのプロアスリートのトレーナーを務める小波津祐一さんだった。

神経へのアプローチに特化した治療法で、健太郎くんは去年10月から自宅で施術を受けている。

「体感がすごくしっかりしだした。足にずっと力が入っている」(小波津祐一さん)

健太郎くんは寝返りを打てるようになった。

「まさか自分の力でゴロンと動けるようになるとは。その姿を見たときは感動した」(母・照子さん)

7月、北海道石狩市に歌やダンスのパフォーマンスを届ける「心魂プロジェクト」がやってきた。

鑑賞するのは医療的ケア児とその家族。

劇団四季や宝塚歌劇団出身の俳優の歌声が会場に響く。

公演を依頼したのはソルウェイズの運上さん夫婦だ。

”短期の入所施設”2025年度を目標に計画

”障害を理由に楽しむことを諦めてほしくない”

運上さんはいま、医療的ケア児が宿泊できる、短期の入所施設を2025年度を目標に石狩市に作る計画を進めている。

「日中、看ている人たちが夜間も看られるような形で子どもたちも移動することなく夜間泊まれるようなイメージ。隣に小児科を作ってドクターが近くにいることで安心して泊まることができるし連携もできる」(運上昌洋さん)

建設予定地は住宅地のすぐそばだ。

障害のある子が地域にいることが当たり前になってほしいという願いも込めている。

「地域に障害のある子どもたちがいて、成長して成人になっても地域の役割を果たすことを支援者と家族だけでやっているのではなくて、地域の人たちにどう関わってもらえるのか。みんなに知ってもらうことも非常に大事」(運上昌洋さん)

どんなに重い障害でも医療的ケア児が地域の一員として生きられる社会を作りたい。

運上さんたちの活動が続いている。

北海道文化放送
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