“あおり運転厳罰化”改正道交法が施行へ

クラクションを鳴らし続けるとあおり運転になるかもしれない!?
「あおり運転」を「妨害運転」と新たに規定した改正道交法が6月30日から施行される。
対象となる行為は、「急ブレーキ」「急な車線変更」、「幅寄せ・蛇行運転」「車間距離を詰める」など10項目。
「執拗なクラクション」や「不必要なパッシング」も含まれている。
他の車の通行を妨害する目的で上記のようなあおり運転をした場合、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」の罰則が新たに設けられた。
違反点数は酒気帯び運転と同じ25点となり、免許は即取り消し。
2年間は再取得ができなくなる。
さらに、高速道路などでほかの車を停車させるなどした場合には、より罰則は厳しく、「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」に。
違反点数も、酒酔い運転と同じ35点で、即免許取り消しの上、再取得には3年間かかる。
たとえ事故を起こしていなくても、あおり運転と判断されれば、30日からは、これだけ厳しい罪と行政処分が適用されることになる。
警察庁の幹部は「あおり運転をしそうになった人に思いとどまってほしい」と話し、厳罰化による抑止効果を期待している。

悪質なあおり運転を分析 “1㎞以上継続”約4割に

全国の警察が去年までの2年間に暴行や強要、危険運転致死傷容疑を適用して摘発した悪質なあおり運転133件について、警察庁が調査・分析を実施した。
高速道路では2㎞以上に及んであおり運転が行われたケースが48%と約半数を占め、一般道もあわせると40%近くが1㎞以上に渡ってあおり運転が続けられていたと言う。
加害者の年齢別では40代が27%で最多、次いで20代が22%、30代が20%、50代が17%、10代は4%だった。
ただ免許保有者10万人当たりでみてみると、10代が0.57人で最も多く、20代が0.28人で続き、若い人ほど、危険な運転に及ぶ傾向が明らかになった。
具体的には、あおり運転で最も多かったのが、幅寄せや蛇行運転の「安全運転義務違反」で約42%、「急ブレーキ」が約36%で続いた。
加害者があおり運転を始める端緒となったのは、「自分の進行を邪魔された」などと被害者から何らかの行為をされたと認識したケースが約92%にものぼる。
しかし、実際に被害者の行為によって、加害者があおり運転に及んだと認められるケースは約44%にとどまり、残る半数程度は、加害者の一方的な『思い込み』によるものとみられている。

自転車もあおり運転の対象に 刑事罰の可能性も

あおり運転の厳罰化は、実は、子どもから高齢者まで多くの人が利用する「自転車」にも適用される。
これは法律上“軽車両”扱いに区分けされているためだ。
たとえ自転車でも、悪質なあおり運転行為をした場合、刑事罰が科される可能性がある。
また、自転車の「危険行為」には、これまで“信号無視”や“酒酔い運転”など14の項目が指定されていたが、今回、新たにあおり運転が追加された。
危険行為は、3年以内に2回違反した14歳以上の自転車利用者に安全講習の受講を義務づけていて、受講しないと5万円以下の罰金が定められている。
自転車が絡む事故は、去年1年間で8万473件にのぼる。
今回の法改正が、自転車の交通ルール遵守の向上、そして重大事故減少にも繋がるか、
注目される。

(執筆:フジテレビ社会部警察庁担当 山下高志)

山下高志
山下高志

フジテレビ社会部記者司法キャップ。記者歴12年以上。
首都圏連続殺人事件やオウム真理教の死刑執行、国会議員の汚職など事件中心に取材。
埼玉県警担当・国土交通省担当・司法担当(検察・裁判)・警察庁担当を経て、現職。