夏の厳しい暑さも和らぎはじめ、やってくるのが秋の旅行シーズン。ゆっくり温泉旅にでも行きたい!と計画している人もいるだろうが、温泉宿につきものなのが、客室の卓上に用意されている“お菓子とお茶”だろう。

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お菓子は定番の「温泉まんじゅう」だったり、その土地の名物だったり、お茶についても緑茶やほうじ茶などと種類は色々ある。そして、旅館のラウンジで提供されたり、客室にお茶とセットで用意されているお菓子を「お着きお菓子」と呼ぶ。

この「お着きお菓子」、 過去にはTwitter(現X) で「温泉で最初に出てくるお菓子とお茶は、血糖値が低下した状態・水分が不足した状態で温泉に入って倒れてしまうのを防ぐためのもの」といった内容の投稿が話題になったのをご存じだろうか。

血糖値が低下・水分が不足した状態での入浴は危険(イメージ)
血糖値が低下・水分が不足した状態での入浴は危険(イメージ)

たしかに、「水分不足の状態で温泉に入るのが危険そう」というのは感覚で理解できる。部屋に置いてあるお菓子はおもてなしの意味を込めた“ウェルカムスイーツ”だったり、土産としてお菓子を買って行ってもらうための“試食品”と考えている人もいるのではないだろうか。

お着きお菓子は「サービスと販売促進」

お着きお菓子は実際に「温泉に入る前の準備」として宿が用意しているものなのだろうか?旅行シーズン本番になる前に、ぜひ知っておきたい「お着きお菓子」について、温泉ソムリエ協会の家元・遠間和広さんにお話を聞いた。


――「お着きお菓子」とは、何のためにあるもの?

お客様へのサービスと、売店での販売のためのサンプルが本来の意味だと思われます。入浴前にお着きお菓子を食べることで結果的に貧血・低血糖等で倒れることを防ぐ効果が期待されますが、そのためにお着きのお菓子ができたということはないと思います。


――もともとお菓子のPRのために生まれたということ?

お着きお菓子の起源は明確にはなっていませんが、(「お着きお菓子」としてよく知られる)「温泉まんじゅう」は伊香保温泉の明治43年に開業した「勝月堂」という店が、伊香保の湯の色に似せてつくった「湯乃花まんじゅう」が発祥とされています。 

伊香保に「名物のお土産がなかった」ことから作られたもので、やはりお客様へのサービスであるとともに、販売に結びつけるためというのが実際の意義でしょう。

お土産の販売に結び付けることも目的のひとつ(イメージ)
お土産の販売に結び付けることも目的のひとつ(イメージ)

――「入浴前に食べて危険回避するため」に作られたものとは言えないけれど、お菓子やお茶を入浴前に食べることは正しい?

その通りです。


 ――客間に置くお菓子の量や種類などに決まりはある?

統一ルールはありません。夕食に影響がない程度の大きさで出しているので、必然的に「大きくもなく小さくもなく」になっています。 

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――「お着きお菓子」が用意されていなくても、入浴前には何か食べるのがいいの?

満腹で入浴すると消化不良になりやすい一方、空腹だと貧血・低血糖などになることがあるので、入浴が食事後でなく空腹ならお茶菓子を食べた方がいいです。 


――反対に、入浴前に「食べたり飲んだりするのがNG」なものは何かある?

入浴前の飲酒は避けた方がいいです。 ビールは利尿効果が高いため、飲んだ量より尿で排泄される量の方が多くて脱水症状になるので注意です。食事直後の入浴もNGです。 

入浴前の「乾杯!」はNG(イメージ)
入浴前の「乾杯!」はNG(イメージ)

遠間氏によると、「お着きお菓子」には宿に訪れた客へのサービスと、お菓子の販売のためのサンプルとしての側面があり、このふたつが本来の意味だそう。

しかし実際に「お着きお菓子を食べ・お茶を飲んでから入浴すると、貧血や低血糖対策といえる」として、「昔からやっていたことは実は理にかなっていた、ということで言えば正しいこと」と話していた。

宿イチオシの「お着きお菓子」とお茶でしっかりと体を整え、温泉を楽しんでほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。