「AIがニュースを書く。ジャーナリズム新時代の夜明け」

米国の有力ニュースアグリゲーター(ニュース紹介サイト)「ドラッジ・レポート」は20日、大きな活字でこんな刺激的な見出しとデジタルを象徴する0と1の進数で描いた不気味な人物像でこのニュースを伝えた。19日、ニューヨーク・タイムズ紙など米国のマスコミが「グーグルがニュース原稿をAIに書かせるソフトを開発している」と一斉に報じたことを伝えたのだ。

ドラッジ・レポートのHPより
ドラッジ・レポートのHPより
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記事によれば、このソフトは「Genesis(ジェネシス)」(訳:創世記)と呼ばれ、マスコミ界に新しい時代をもたらすものという位置付けなのだろうが、私にしてみれば「ついに来たか」という感じだ。

既にニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙、ウォールストリート・ジャーナル紙など米国の有力マスコミの経営者にはプレゼンをして、好意的な反応を得ているという。

AIが取材から原稿執筆までするのかなど、その仕組みは明らかではないが、そうした作業を職業にしている私にとっては死活問題だ。

ChatGPTの“実力”は?

そこで「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という孫子の言葉を借りて、まずはこの「ジェネシス」の実力をはかるべく、生成AIで先行するChatGPTにコラムを書かせてみた。

(イメージ
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私:
Googleはニュース原稿を書くAIを開発しています。もし完成すれば私のようなジャーナリストは職を失うことになります。この問題について私に代わって500字でコラムを書いてくれませんか?

チャットGPT:

タイトル:AIによるニュース原稿執筆の影響:ジャーナリズムの未来への展望

近年、GoogleはAIによるニュース原稿執筆を開発しており、これが実現すれば、私のようなジャーナリストたちの仕事が脅かされる可能性があります。この技術の進展は確かに懸念すべき点がありますが、冷静に見つめることで、ジャーナリズムの未来に新たな展望が広がることに気付くことも重要です。

まず、AIによるニュース原稿執筆の実現は、ジャーナリズム業界に効率と変革をもたらす可能性があります。AIは大量のデータを素早く分析し、事実確認やデータ収集などの繁雑な作業を効率的に処理することができます。これにより、ジャーナリストはより多くの時間を深い調査や洞察に充てることができるでしょう。AIがルーティンワークを担当することで、ジャーナリストたちはより価値のある業務に集中できる点は、肯定すべき側面です。

しかしながら、AIによるニュース原稿執筆が実現すれば、信頼性とオリジナリティの問題が浮上することも避けられません。AIは感情や創造性を持ちません。ジャーナリズムの本質には人間の洞察力や感受性が不可欠であり、AIだけでは伝えきれない重要な要素があります。したがって、ジャーナリズムの魅力としての深い洞察や人間らしさを維持することが重要となります。

ジャーナリズム業界がAIの進化に対応するためには、いくつかのアプローチが考えられます。まず、AI技術を適切に導入し、ジャーナリストとの協力を強化することが重要です。AIが提供するデータや洞察を取り入れながら、ジャーナリストの洞察力とクリエイティビティを活かすことで、より高度な報道が可能になります。また、AIによるコンテンツ生成においては、ジャーナリストの監修が必要となります。AIが執筆した内容に対して、ジャーナリストが事実確認や文脈を加えることで、信頼性を担保することができます。

ジャーナリストがAIと共存する未来に向けて、ジャーナリズムの本質的な価値を再確認し、専門性を高めることが重要です。ジャーナリストの重要な役割は、ただ情報を提供するだけではなく、問題提起や社会的な意識を喚起することにあります。深い洞察や人間の感情に訴えるストーリーテリングは、AIでは代替不可能な部分です。

結論として、AIによるニュース原稿執筆の進展は、ジャーナリズムに新たな挑戦をもたらす一方で、新たな可能性をも切り拓くと考えるべきです。ジャーナリストがジャーナリズムの本質を守りながら、技術と共存し、より質の高い報道を提供することで、ジャーナリズムの重要性と存在意義を未来にも示していくことができるのです。
(終)

……ということだが、文章がややかたいものの、問題のツボをよく抑えていて、このままでもこのコラムに通用しそうだ。

改めて記者という職業の先行きに不安を抱かせたが、その一方で、そこまで優れているのならば使わない手はないとも考えた。今後の記事にAIを活用するが、チャットGPTが言うようにあくまでも補助手段としての利用だ。そしてAIを利用した際は、必ずその旨を原稿に明記することをお約束する。

これで「ジャーナリズム新時代の夜明け」に間に合うことになるのだろうか?

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

※2023年7月18日に公開した記事「バイデン氏に“7人目の孫”」について、同大統領は7月28日に声明を発表し「我々の息子ハンターとネイビー(7人目の孫)の母ランデンは、娘のプライバシーをできるだけ守りながら娘のためになる関係を育むために協力しています」と、初めてネイビーちゃんの存在を認めた。

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。