大阪府が保管する「美術作品」の“ずさんな管理”が明らかになった。評価額が総額で2億円を超える作品が、約6年もの間、劣化や盗難のおそれがある状態で保管されているということだ。美術作品が置かれている場所とは…

天井にはスプリンクラー

咲洲庁舎にある地下駐車場の一角。この場所には誰でも入ることができるという
咲洲庁舎にある地下駐車場の一角。この場所には誰でも入ることができるという
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坂元龍斗フィールドキャスター:
大阪市住之江区にある大阪府の咲洲庁舎の地下駐車場です。ビルのテナントの従業員の皆さんが利用する駐車場で、実際に車が止まっています。その中に美術作品があって、とても大きな作品もあります。作品にはブルーシートが掛けられており、手前には工事現場で使われるような「安全第一」と書かれたフェンスがあります。施錠などはしておらず、誰でもこのフロアに来ることができます

今回はブルーシートをめくり特別に見せてもらっているが、普段はブルーシートで覆われた状態
今回はブルーシートをめくり特別に見せてもらっているが、普段はブルーシートで覆われた状態

駐車場には、1992年に開催された「大阪トリエンナーレ」でグランプリを獲得したルーマニア人アーティストの作品もあった。この作品の評価額は700万円ほどだという。

この場所の天井にはスプリンクラーがある。非常時には水が出てくるため、ブルーシートが掛けられてるとはいえ、水浸しになってしまう可能性がある。2022年には近くの配管で水漏れなどもあったということだ。

美術作品は通常「収蔵庫」という湿度・温度が保たれている場所に置くのが理想だが…この場所はとても暑く、冬場はとても寒くなるといい、作品にとっていい状態ではないようだ。

なぜこの場所に?

この駐車場に美術作品が置かれることになった経緯は何なのだろうか。

1980年代から1990年代にかけて、美術館を作ろうという話があり作品を集めた。しかし、財政難で計画が頓挫し、作品は施設に置いたりもしたが、一部を咲州庁舎の中に置いた。そのあとに行財政改革があり、咲洲庁舎のスペースは民間に使ってもらいお金を稼ごうとなった。結果的に美術作品を置くスペースがなくなり、駐車場に置かれてしまっているというわけだ。

駐車場に置いているものは金属製の作品が多く、腐敗しやすい木製の作品などは咲州庁舎の中に展示。「収蔵庫」を借りるとなると、年間数千万円かかってしまうという。

作品が駐車場に置かれているアーティストの方を取材した。

ーー駐車場にご自身の作品が置かれているということを聞いてどう感じられましたか?

彫刻家 中ハシ克シゲさん:
保存状態が非常に悪くて、ネズミが走っていても不思議はない。あきれたって感じですね。公的な機関なので信用していますので、上からブルーシートを掛けられてっていう形はちょっとびっくりしました

中ハシさんの作品は茶室を再現した大型の作品で、茶室の中に写真などが貼られたものだが、解体されて一部が置かれている。中ハシさんは「『作品は自分の子どもと同じ気持ち』なので、このような状態だととても悲しい」と話した。

この状態での保管…できる対策は?

近現代美術の専門家、京都工芸繊維大学の平芳幸浩教授に聞くと、せめてできる対策としては以下があげられるとのことだ。

・作品ごとに適切な梱包
・こまめなモニタリングで「劣化」にいち早く気付く 

防犯カメラもなく、施錠もされていないので、盗難のおそれもある。アーティストの方や専門家の方も、行財政改革という事情は理解しているが、少しでもよい方法を模索してほしいということだ。

(関西テレビ「newsランナー」7月25日放送)

関西テレビ
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