昭和の愛媛・松山市の写真を保存している村上浩一さんは、白黒写真を鮮明に残そうと、写真のカラー化に取り組んでいる。梅津寺公園や、大街道商店街、道後温泉本館の入口…。鮮やかによみがえる風景から、街の変化を追った。

アルバム100冊分の昭和の記憶

松山市でガラス製品の工房を営む村上浩一さんは、昭和20年代から40年代にかけての愛媛県内の街並みを記録した白黒写真を保存している。

梅津寺パーク(昭和44年6月8日)
梅津寺パーク(昭和44年6月8日)
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当時(昭和44年6月8日)、遊園地だった梅津寺公園(現・梅津寺公園)。

まだ車が通っていた昭和35年の大街道商店街。

道後温泉本館(昭和44年5月15日)
道後温泉本館(昭和44年5月15日)

今とあまり変わらない昭和445月15日に撮影された道後温泉本館の入口。

写真は、村上さんの父・武さんが撮影したものだ。

村上浩一さん:
父がカメラが好きなので、休みとか平日でも時間があったら松山市内とかいろんなところで写真を撮っていたのがアルバムに結構たまっていて、今は父は亡くなっているんですけど、それを掘り起こしてデータ化したのがはじまり

村上浩一さんの父・武さんは、カメラを複数台持ち、自作の暗室で現像するほどの写真好きだった。撮り続けた写真は、子どもである村上さんたち兄弟へ向けて、合計100冊近くのアルバムに残した。「この写真を鮮明に保存できないか」村上さんが考えたのが、白黒写真の「カラー化」だった。オンラインのサービスを使って、1年前から写真のカラー化に取り組んでいる。

村上浩一さん:
カラーになったら、今まで白黒で見ていたのと違くて、臨場感もあるし、雰囲気も白黒で見るより違いますね感覚は

カラー化で鮮やかによみがえる松山

写真がカラーになるとどんなふうになるのか。

現在の松山市の大街道商店街千舟町側で東を向いて撮影した写真と、70年前の昭和28年に写真を比べると、現在、マンションが建っている場所には映画館があったことがわかる。

東映グランド大街道(昭和28年12月1日)
東映グランド大街道(昭和28年12月1日)

映画館の名前は「松山グランド劇場」。

1949年にオープンした、当時としてはかなり大きな3階建ての建物で、娯楽の少なかった当時は連日多くの人で賑わっていたという。

続いては、JR松山駅前の現在の様子。

国鉄松山駅前にて(昭和29年9月1日)
国鉄松山駅前にて(昭和29年9月1日)

昭和29年9月1日にタイムスリップすると…今より建物が少なく、空が広く感じられる。そして、よく見てみると松山城の姿も確認できる。見比べてみると、街の変化をつぶさに見て取ることができる。

白黒だった写真がカラーになったことで、当時の状況もより鮮明に浮かび上がる。

AIでカラー化し最後は手作業で調整

ここで気になるのが、白黒写真をどのようにしてカラー化しているのかということだ。村上さんの知人、デザイナーの藤田まゆみさんに、その技術を聞いた。

デザイナー・藤田まゆみさん:
機械が白黒をカラーに変えてくれます。自動で。このカラー化ボタンをポンと押すと、もう何秒かで、復元

カラー化するのは人工知能「AI」だ。

画像編集ソフトで白黒写真を読み込んだ後、ボタン一つであっという間に写真がカラーになった。しかし、これで完成ではないという。

デザイナー・藤田まゆみさん:
空の感じとかを、もう少し青みとかを強めにするとか、茶色い建物も赤が多いなと思ったら、少し赤を落とすとか

仕上げの作業は人の手。細かい色味の調整作業で行って完成させる。

デザイナー・藤田まゆみさん:
ちょっと想像もいりますよね。本当の風景を私は見ていない時代のものなので、ここの木は緑色がこうかなとか、あります

古写真が撮影された場所を歩く

写真を撮影してから数十年の時がたった今、その場所はどうなっているのか。実際に撮影した場所を村上さんと歩いてみた。

愛媛県庁を比較
愛媛県庁を比較

まずやってきたのは愛媛県庁。今から94年前に完成した県庁本館。周辺の建物は建て替わっているものの、本館は当時と変わっていない。

内木敦也アナウンサー:
路面電車が通っていて、県庁があるからかなり面影は残しているというか、この天井の球体も形はそのままで、色はちょっと違うんですかね

松山市駅を比較
松山市駅を比較

続いてやってきたのは松山市駅。

松山市駅前の様子は、この70年で一変。駅舎をはじめ、建物の高さが、今とは全く違う。駅前の広場も、今ほど整備は進んでいないが、路面電車の乗り入れ位置は変わっていないようだ。

内木敦也アナウンサー:
この風景で思い出すことありますか?

村上浩一さん:
当時小さい子どものときなんで覚えてないですけど、車もかなり昔のですけど、あんまり覚えがないくらい。こんなにビルがいっぱい建ってなかったから全然様相が変わりましたね

そしてもう一つ、村上さんが行きたい場所が、松山市二番町にある居酒屋・象三だ。店内には村上さんの父の写真が大きくプリントされ、飾られていた。

村上浩一さん:
こうやって貼っていただいて、いろんなお客さんにぜひ見て頂いて懐かしんでいただいたらと思いますね

象三・河合浩代表:
年配のお客さんで、ずっと見る人もいるんですよ。懐かしいなという形で。テレビとか映画とかで出てきそうな写真ですから、若い方も見てますね

父の残した写真を写真集へ

父が残したたくさんの写真。村上さんはこれから写真集を作る計画を立てている。

村上浩一さん:
タイトルはまだ決まっていないですけど、今、考えているのは、父が撮った昭和の松山とか。やっぱり父がずっと撮っていた写真なので、できればそういうふうに受け継いで、カラー化して写真集にするとか、“父の功績”じゃないですけど、何かにつなげたいなと思ってやっています

現在と過去の記憶を結ぶ写真。白黒がカラーとなり、より鮮やかに写し出された記録は、時空を超えて街の歴史を伝え続けます。

(テレビ愛媛)

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