SNSの普及で若年層へのまん延が深刻化する「大麻」。薬物犯罪を一件でも減らそうと捜査する警察。その取り締まりの現場に、TSSのカメラが密着した。逮捕された男の自宅はまるで“大麻の栽培ハウス”だった。

10代の大麻検挙者 過去最多

6月、大麻栽培の情報をもとに捜査を進めていた警察が、この日、動き出した。夜も明けきらぬ早朝から広島県警の捜査員たちに緊張が走る。

広島県の呉警察署
広島県の呉警察署
この記事の画像(21枚)

呉警察署内で、刑事第二課長の山本幸雄警部が前に立つと捜査員たちは一斉に敬礼した。
「気をつけ!礼!」

呉警察署 刑事第二課長・山本幸雄 警部:
本日いよいよ着手となりました。ガサ(家宅捜索)にあたっては証拠品を根こそぎ徹底的に持ち帰るように。薬物犯罪を一件でもなくしていく。これがわれわれに課せられた使命です。この使命を全うするために全力で取り組んでください

広島県警によると2022年、県内において大麻取締法違反で検挙されたのは57人。10年前から40人ほど増え、近年は増加傾向にある。

検挙された57人のうち10代の検挙者は16人にのぼり、過去最多となった。

若年層への拡大を防ぐため、一件でも多く検挙することが求められている。

家宅捜索は「引っ越し」レベル

現場は呉市内から車で約1時間ほどの場所。

海岸沿いにある男の自宅近くで張り込み、その時を待つ。張り込み開始から約2時間後、男が姿を現した。捜査員が動く。

捜査員:
ちょっと自転車とめてもらってええ?

男:
はい

捜査員:
なんで来たかわかっとる?

男:
あ、わかります

捜査員:
呉簡易裁判所から大麻取締法違反で捜索差押許可状が出ています

捜査員が声をかけたのは40代の男。ほかの捜査員たちも続々と集まってきた。約20人の捜査員が男の自宅に入り、家宅捜索が始まった。

家宅捜索が始まり、捜査員でごった返す現場
家宅捜索が始まり、捜査員でごった返す現場

しばらくすると、捜査員から驚きの声が…

捜査員:
すごいね。気合入っとるね。これだけの量あったら…。物が多い。押収する物は100点超えると思う。引っ越し、もう引っ越しじゃけ

「引っ越し」…その意味を取材陣はこの後、知ることになる。

捜査員も驚き!“やばい量”の大麻栽培

男の自宅1階に置かれていたのは、乾燥大麻のほか電子加熱器やプランターなど、大麻の栽培に使用するいくつもの器具だ。

さらに、2階に上がると想像を超える光景が…。部屋には大麻のにおいが染み付いている。

捜査員:
2階のほうがやばい。見た?やばいよ、やばいやばい。これ総重量なんぼになるかね?想像もつかん量だ。1階だけでも十分あるのに

外から撮影した男の自宅2階
外から撮影した男の自宅2階

2階の6畳和室2部屋を大麻の栽培室・乾燥室として利用。栽培室の天井をいくつものLEDライトが覆い、乾燥室には逆さにつるした大量の大麻が…。そのほか、大麻を栽培したとみられる数多くのプランターや液体肥料などが置かれていた。

栽培自体は数週間前に終わったというが、いたるところにその形跡が残されていた。

栽培方法の入手はインターネットか

何をきっかけに、これほどの大麻を栽培するようになったのだろうか。

男:
やることもないし、暇だし…作ってみようかなと

画像提供:広島県警
画像提供:広島県警

捜査員:
作ってみようってすぐできるもんじゃないじゃろ

男:
ネットを見てたら、いろいろ載っているので

画像提供:広島県警
画像提供:広島県警

インターネットであらゆることがわかる時代。しかし、大麻の所持・譲渡・栽培などは処罰の対象で、営利目的の有無によって量刑が異なるが、懲役10年以下罰金300万円以下の厳しい罰則が課せられる可能性もある危険な薬物だ。

捜査員:
そんなに大麻が好き?

男:
好きなわけではないけど時間がつぶせる

画像提供:広島県警
画像提供:広島県警

見つかった大量の大麻について、さらに男を問いただす。

捜査員:
この量を1人で使うためっていうのは無理があると思う

男:
いや、自分だけのためにやっているので

捜査員:
けっこう長期的に栽培しているでしょ?いつから始めた?

男:
3~4年前に、栽培に使う物を買い始めた

捜査員:
誰かに譲ったこともない?

男:
ないです

捜査員:
ほんまに?

末端価格で925万円分の大麻を押収

家宅捜索は約3時間にわたり行われた。乾燥大麻のほかプランターや照明器具など栽培用の道具が、次々と捜査車両へ運び込まれる。

捜査車両へ運び込まれる押収物
捜査車両へ運び込まれる押収物

押収された数は71点、大麻の量は約1.8キロ、末端価格にして約925万円にものぼるという。

その後、警察は「大麻取締法違反」の疑いで男を逮捕。男は「すべて自分で使うための大麻」と供述しているが、販売に関わっていたとみて、入手ルートなどを調べている。

「大麻取締法違反」の疑いで逮捕された男(左)
「大麻取締法違反」の疑いで逮捕された男(左)

広島県警 組織犯罪対策第三課・堀田真二 警部:
大麻検挙者はここ2、3年増加傾向にあります。若い世代、特に未成年者を含む若年層への拡大が認められています。今はSNSが主流。昔のように電話で注文するという時代ではなくなった。ネットで簡単に手に入ってしまう。捜査に全力を投入しています。情報があれば寄せてもらって捜査を展開していきたい

画像提供:広島県警
画像提供:広島県警

SNSで若年層へ拡大する薬物犯罪。その撲滅に向け、警察は徹底した捜査を続けている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。