中部横断自動車道が延び、長野県内からも静岡県側へのアクセスが向上。これを生かし、長野県下諏訪町の魚の卸業者は配送範囲を東信地方にも広げ、新鮮な「太平洋の幸」を届けている。配送先のスーパーの特設コーナーは大盛況、買い物客も「新鮮な魚を食べられる」と満足している。

新鮮な太平洋の幸が届いた!
大勢の買い物客の前にお目見えした本マグロ。
「マグロの解体ショー」が始まった。
手際良くさばいているのは、下諏訪町の鮮魚卸「丸松水産」の松浦志保社長(44)。
ショーが行われたのは、下諏訪に近い中南信のスーパーではなく、東御市のスーパーだ。
東信地方はここで2店舗目。この日から本格的に魚を卸すようになり、その記念に「ショー」を開催した。

「中部横断道」延伸で配送エリア拡大
丸松水産・松浦志保さん:
静岡と長野の間が短い時間でつながるようになった、ここがやっぱりすごく大きな要素ですね。それによって、下諏訪の拠点から、より遠くのエリアまでお届が可能になっていく
配送エリアを広げる魚の卸業者。
それを可能にしたのが「中部横断自動車道の延伸」だ。

7月7日―。
富士山のシルエットが現れ始めた朝4時の静岡市清水区。
「中央卸売市場」には、カンパチやホウボウなど太平洋でとれた新鮮な魚が並んでいた。
松浦さんは、ほぼ毎日、この市場で魚を買いつけている。

丸松水産・松浦志保さん:
全国の浜から直接荷物が届く市場になるので、そこは中央卸売市場の強いところ。全国から毎日新しい魚がどんどん入ってくるので
静岡出身の松浦さんが下諏訪で卸業を始めたのは8年前。
「内陸だからこそ需要がある」とみて開業した。

丸松水産・松浦志保さん(2021年取材):
マグロの消費量、長野県が5位、6位だとか、全国でもトップに入ってくるようなマグロの消費量があったものですから
この日はお目当ての解体ショー用の本マグロなど、20種類の魚を仕入れた。
魚を積んで下諏訪町へ。

「時短」1時間以上の短縮
新東名高速道路に乗り、新清水ジャンクションから中部横断自動車道へ。
佐久市から静岡市を結ぶ中部横断道。部分開通が進み2021年8月、双葉ジャンクションと新清水ジャンクションを結ぶ山梨・静岡間およそ74キロが開通した。
中央道も利用すれば諏訪・静岡間の所要時間はおよそ2時間。

丸松水産・松浦志保さん:
始めたころはほとんど国道52号線で、3時間半くらいはかかってたので、1時間以上の短縮にはなってるかなというところですね
下諏訪の店に到着。
魚を降ろすと、松浦さんは得意先に配達する「刺身の盛り合わせ」を作り始めた。

そのあと、配送へ。
中部横断道による時短効果で、下諏訪でひと仕事終えてからでも配送ができることから、松浦さんは東信地方にも配送エリアを拡大。
2023年2月の佐久市の店を皮切りに、7月7日から東御市の店、さらに15日から同じ系列の佐久市の店が加わる。

丸松水産・松浦志保さん:
横断道が開通したことというのは、そこから先の幅もどんどん広がっていくので本当にありがたいです
和田峠を越えておよそ1時間余り。東御市のスーパーに到着。
解体ショー用のマグロや水産加工品を運び入れた。

キンメダイやアジなどが陳列
翌日、松浦さんは本格的に魚を搬入。
キンメダイやアジなどこの日の朝、静岡の市場で買い付けた魚を運び入れた。
店の担当者が早速、さばいていく。
魚は特設コーナーに陳列。店側も新たな仕入れ先に期待を寄せている。

担当者は「静岡から高い鮮度の魚を仕入れることができ、お客様さまにおいしさ、鮮度をアピールできる」と話す。
買い物客が増える夕方、いよいよマグロの解体ショーがスタート。さばいたのは、伊勢沖でとれたおよそ40キロの本マグロだ。
解体ショーのマグロは、切り身にしてすぐに販売。売り場は大盛況だった。

買い物客は「新鮮で良いものが静岡から直接入ってきてうれしい」「また来たい」などと話し好評だ。
マグロに誘われて特設コーナーの魚も大盛況!
丸松水産・松浦志保さん:
もう盛り上がっていただいて。拍手いただいたり、「おー」と盛り上がっていただいて、気持ちよく解体させていただきました
国土交通省によると、山梨・静岡間の開通により交通量は以前の3倍に増加。
残る区間の事業化はまだだが、全てつながれば、観光や物流に大きな効果がありそうだ。

この日、幸先の良いスタートを切った松浦さん。今後も東信エリアでの取引を拡大させたい考えだ。
丸松水産・松浦志保さん:
朝捕れのもの、最高の鮮度のいい魚をお届けしたいなと思っておりますので、ぜひ皆さん食べていただきたい
(長野放送)