福岡市などが推進している「里親ショートステイ」は、子育てをサポートしてほしい家庭の子どもを、同じ地域に住む里親が1日から最長1週間預かる制度。
この短期間の里親制度を活用し、心の余裕を取り戻したというシングルマザーを取材した。

育児に疲弊した「お母さん」をサポート

里親制度を利用したシングルマザーのAさん:
自分が子どもを預ける側になるとは思わなかったけど、今はまだ子どもが保育園、2歳児と5歳児の2人。「シングル」なのでめちゃめちゃ大変で。「預けて大丈夫なのか」とか「でも預けられる人もいないし、この状況だし」っていうのもあって…

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福岡市東区で幼い子ども2人と暮らすAさん(30代)は、2023年になって元夫との離婚がようやく成立し、故郷の福岡市に戻ってきた。

里親制度を利用したシングルマザーのAさん:
やっぱり、子どもを預けたい時になかなか友人しかいない状況の中で、引っ越しの疲れもあって体調を崩してしまって…。それで、その時に役所に「ちょっといろいろあって困ってるんだけど」って話をした時に、福岡市から「お母さん、ちょっと1回預けてみたらどうですか」っていうお話があって…。最初「そんなに?そこまでしないといけない状況に自分はなってるのか?」っていうのすら気付かなかったんです

Aさんが利用したのは、1泊2日の「里親ショートステイ」。福岡市がこの制度をスタートさせた最大の理由は「子ども」ではなく、育児で疲れてしまった「お母さん」をサポートするため。

里親制度を利用したシングルマザーのAさん:
取りあえず体がしんどかったので早く寝て、アラームとかかけずにひたすらぐっすり寝て、でもそういうのって、出産してからまったく無かったので…朝まで寝れた

「里親ショートステイ」の利用料金は、生活保護の受給世帯やひとり親世帯は無料。そのほかの世帯は、2歳未満の子どもを預ける場合は1日5,350円、2歳以上は1日2,750円となっている。

短期間の里親・吉光由樹子さん:
「リフレッシュできました」って言って下さったお母さんがいらっしゃって、私もすごいうれしい気持ちになったんですよね

吉光さんのように子どもを短期間預かっている里親は現在102世帯。ただ、子どもたちの受け皿は十分ではない。2022年度の利用実績は1,740人だったが、親が希望しても預けられなかった子どもは半年で700人もいた。

子育て中の母親に、どういう時に「サポートがあったらいいな」と思っていたのか聞いてみると…。

子育て中の母親:
「ちょっと預けたい」という時がやっぱ難しい。一生セットですね、この子と

子育て中の母親:
「ちょっと離れたい」と思う時はやっぱりありましたね。例えば「1人で髪を切りに行きたいな」とか思った時に預けられないので

育児によって知らぬ間にストレスを抱えているのは、どの親も同じ。

里親制度への理解を深めるための説明会

福岡市から業務委託を受けて「ショートステイ里親」の運営を行うNPO法人「SOS子どもの村」は、里親のなり手を増やそうと、月に一度「説明会」を開いている。この日の会場には子育て経験のない人や高齢者など、さまざまな人たちが集まった。

参加者:
私はパートナーの方が女性なので、実際、福岡では「まだそういう実績がない」ってことだったので、その辺で親御さん側が「嫌だな」って思う方もいるんじゃないかなとか、なんかそういうのは少し不安ですね

参加者:
案外「高齢者は来てないんだな」と思ったのと、多分私が一番上だからですね、「年齢的な心配とかないのかな」と思いましたけども…

里親になる条件として年齢・性別に制限はなく、保育士などの資格を持っていなくても問題はない。ただ、里親になりたい人は児童相談所で合わせて5日程度の研修と実習を受ける必要がある。また、児童福祉司による家庭訪問を受け、部屋の間取りなどを確認されるほか、職歴や所得証明書も提出する必要がある。

サポートを“次の世代”へ

福岡市東区で2人の子どもを育てるシングルマザーのAさんは、これまでに3回「里親ショートステイ」を利用した。

里親制度を利用したシングルマザーのAさん:
子どもたちもリフレッシュできたというか、ギスギスしてたり疲弊してる自分とずっと家の中でこもっているより、お互い別々でリフレッシュできたというのはすごく大きかったです

Aさんは子育てが一段落したら、今度は自分が「里親」になってほかの人の子育てをサポートしたいと考えている。その強い気持ちの背景には、自身の「複雑な生い立ち」があった。

里親制度を利用したシングルマザーのAさん:
私が幼少期、施設で育って、親元に戻っても家族との関係が難しい家庭の中で育って、自分も助けてもらったりとか、周りの大人たちにしてもらったりしてきたので…。なんだろうな、その助けてもらった分、恩返しする気持ちで、いつか里親とかになれたらなと思って…。恩返しというか、恩送りみたいな…。そうですね、自分がもらったものを次の世代にというか…

支えられる側が支える側に。「里親ショートステイ」はお母さんと子どもを同時に支えるセーフティネットとして成長を続けている。

(テレビ西日本)

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