ビルの火災で営業休止を余儀なくされた長野県松本市の店が、1年余りたった6月、移転して再オープンした。店主は友人や常連客の温かいメッセージにより再出発を決断。多くの支援や家族の支えに感謝しながら、自慢の野菜料理を提供している。

子どもから大人まで人気の「ベジサポ」
子どもから大人まで人気の「ベジサポ」
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「まさか、ここまでできるとは」

冷水でしめた中華麺を器に入れ、その上に新鮮な野菜をたっぷりと。暑い夏にぴったりの「サラダめん」が出来上がった。

提供しているのは、松本市総合体育館の2階に6月28日オープンした「ベジサポ」。野菜で健康を支える「ベジタブルサポート」が店のコンセプトだ。

客からは、「サラダがたっぷり入っていて、ヘルシー」と早くも好評。

サラダめん×やさい(税込1100円)
サラダめん×やさい(税込1100円)

店主の丸山留実さん(30)。感謝を胸に初日を迎えた。

ベジサポ・丸山留実さん:
とにかく感謝しています。まさか本当にここまでできるとは、火事の直後は思っていなかったので

実は前の店舗が火災の被害に遭い、移転して再出発を果たしたのだ。

「ベジサポ」再出発
「ベジサポ」再出発

「夢」念願の店オープン

小学生の頃から飲食店を開くのが夢だった留実さん。2020年、ラーメン店を営む夫・拓さんのサポートで松本市元町に念願の自分の店「ベジサポ」をオープンさせた。

ベジサポ・丸山留実さん:
なかなか野菜に特化したお店がなかったっていうのと、信州にはおいしい野菜がたくさんあるのに、力になれるかどうかはあれですけど、私が広めることができたらいいなということで始めてみました

留美さんは2人の娘を育てながら店を切り盛り。ちょうどコロナ禍の最中で厳しい状況だったが、デリバリーで挽回した。

松本市元町にオープンした時の「ベジサポ」
松本市元町にオープンした時の「ベジサポ」

県産の新鮮な野菜を使った料理は徐々に評判となり、半年後には松本市大手のテナントビルに店を移転。

移転から半年ほどがたつと、来店客は少しずつ増えていった。

ベジサポ・丸山留実さん:
(2022年)2月3月あたりでまだ寒かったのに、売り上げも伸び始めてて、ここで思いっきり黒(字)出せるかなって

松本市大手にオープンした時の「ベジサポ」
松本市大手にオープンした時の「ベジサポ」

「ショック」店の入るビルで火災

しかし、丸山さんは突然、店を失うことになる。

2022年3月13日の午後5時45分ごろ、「ベジサポ」の入るビルの4階で火災が発生。

ベジサポ・丸山留実さん:
店で仕込みしてました。火災報知器が鳴って、お隣の(店の)スタッフさんが「大変大変、上で火事だよ」って

火はおよそ7時間後に消し止められたが、留美さんの店は水浸し。調理器具は使えなくなり、食器も消火剤まみれとなった。

ビルで火災(2022年3月)
ビルで火災(2022年3月)

ベジサポ・丸山留実さん:
とにかくショックでしたね。火事の日の夜は、とにかく泣いていましたし、やっと皆さまに定着してきたところかなというところで火災だったので

夫の拓さんは、当時の留実さんの様子について、「火事のあと数カ月は見られたもんじゃないというか、心身的にダメージを負ってしまって」と話す。

ビルの再建で、店は立ちのくことに。

保険だけでは損失をカバーできず営業休止を余儀なくされ、スタッフも雇えなくなった。

夫・拓さん
夫・拓さん

「つらかった」娘たちに伝えられず

娘たちには火事があったことをしばらくの間、伝えらなかった。

ベジサポ・丸山留実さん:
たまたま近くを自転車で通ったときに、上の子が「ママのニンジンの(ロゴマークの)お店行きたい、どうしても行きたい」って言うから、連れて行ったら看板のないお店見て大泣きしちゃって「誰がやったの、ママのニンジンのお店返して」って、自転車の後ろの席で大泣きしているのを見て、めちゃめちゃつらかったです。思い出すだけでも涙出てくるくらい、あれはつらかったですね

ベジサポ・丸山留実さん
ベジサポ・丸山留実さん

常連客や友人から応援メッセージ

一方、店のSNSには常連客や友人から応援メッセージが続々と寄せられた。留美さんは再出発を決断する。

ベジサポ・丸山留実さん:
「ぜひ支援させてください」とか「再開待ってます」とか、そういう言葉は火事の直後から本当に多くいただいていて、娘たちがあそこまで「ベジサポ」を思ってくれている。どこかしらのタイミングで再開したいなって

物件探しを始めたところ、「ここだ」とひらめく場所があった。松本市総合体育館の2階だ。

松本市総合体育館
松本市総合体育館

ベジサポ・丸山留実さん:
総合体育館だと健康に気を使う方たちが多くいらしたりするので、その支えがここだったらできるなって

資金不足のため、クラウドファンディングを活用。設備資金などを募ったところ4月までに214人からおよそ220万円が集まった。

ベジサポ・丸山留実さん:
正直びっくりしてます。こんなに多くの方たちが支えてくれて、とにかく感謝しかない

再オープン前日。仕込みなどをしていると、お祝いの花と器がママ友から届いた。

開店祝いに花を届けるママ友
開店祝いに花を届けるママ友

感謝の再出発

再オープン当日―。

開店と同時に続々と客が来店。15分後にはほぼ満席になった。

常連客も駆けつけてくれ、「ずっと楽しみにしていた」と再開を喜んだ。

開店15分後には、ほぼ満席
開店15分後には、ほぼ満席

夫の拓さんもラーメン店を休んで手伝いに。留美さんの相談に乗り、営業再開をサポートしてきた。

夫・拓さん:
何よりも妻が楽しそうに準備して、楽しそうにお店の再建をやっている姿を見て、それが報われる形になればいいなと

ベジサポ・丸山留実さん:
ライバルでもありますし、一緒に子育てをしながら、店もつくりながら、存在は大きいですね

夫の拓さんと留実さん
夫の拓さんと留実さん

涙の営業休止から1年と3カ月

サラダめんは夏季限定で、今後随時、メニューは変えていく予定。

体育館という場所柄、低糖質・高たんぱくの食材を使ったアスリート向けのメニューも提供したい考えだ。

涙の営業休止から1年と3カ月ー。

友人や常連客、そして家族の支えがあってたどり着いた再出発。

ベジサポ・丸山留実さん:
常連さまとか、久しぶりな方たちが来てくださって、すごくうれしい気持ちになりました。ここに来て「また午後、仕事頑張るぞ」とか、元気をチャージしてもらえるような、皆さんにそうやって思ってもらえるようなお店づくりをしてきたいと思います

ベジサポ・丸山留実さん
ベジサポ・丸山留実さん

(長野放送)

長野放送
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