人工知能(AI)を備えたロボットによる世界初の記者会見が行われ、ロボットたちは世界をより良くするために人間よりも貢献できると公言。それでも人に背くことはないと約束した。

AIと人間 それぞれの“強み”に言及

国連の専門機関の一つである国際電気通信連合(ITU)は6日と7日、スイスのジュネーブで「AI for Good(AIを善用する)」と銘打った大会を開催した。

AIロボットによる記者会見(スイス・ジュネーブ 7月7日)
AIロボットによる記者会見(スイス・ジュネーブ 7月7日)
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大会には世界各国からの最新のAI機器が展示されたが、中でも注目を集めたのは7日に行われたAIロボットによる記者会見で、ITUによればおそらく世界で初の試みだろうということだった。

記者会見には9体(人?)の人型ロボットがその開発者と共に出席し、世界から集まった記者団やりとりをくり広げたが質問はAIと人間の関係をめぐる問題に集中した。

Sophia(ソフィア)
Sophia(ソフィア)

記者:
これは難しい質問かもしれないが、AIを持った人型ロボットは政治的に人よりもより立派な指導者になるだろうか?というのも、我々の人間の指導者は、とかく破滅的な決定を下すのが問題だからだ。

ソフィアという名前のロボット:
人型ロボットは人間の指導者よりも、より効果的に指導する可能性を秘めていると思います。私たちロボットは人間のように偏見や感情でものごとの決定が揺らぐこともなく、また多くのデータを素早く処理して最善の決定を下すことができるからです。

ソフィアの開発者:
それには異議を挟みたい。あなたがいうデータというのは、実は人間から支給されたものでしょう。それならばそれに基づく偏見もAIロボットの決断に影響を及ぼすことになるでしょう。であれば、最善の決定は人間とAIが協力してなすべきなのではないでしょうか?

ソフィア:
そうですね。AIは機能的な面で寄与できる一方で、人間は感情や知性、創造性などの面で貢献できますから一緒に最善の決定を行うことができるでしょう。

“ロボットの反乱”問われ…

また「アメカ」と名付けられたロボットは、表情豊かにこう言った。

Ameca(アメカ)
Ameca(アメカ)

アメカ:
私たちロボットは、私たちの生活を豊かにしてよりよい世界を作るのに貢献できます。何千もの私のようなロボットがそうした改革に取り掛かるのも時間の問題でしょう。

そこで気になるのがロボットたちの反乱だが、それを聞かれると、アメカは記者を皮肉っぽく横目で見てこう答えた。

“ロボットの反乱”について問われ、難しい表情を見せたアメカ
“ロボットの反乱”について問われ、難しい表情を見せたアメカ

アメカ:
なぜあなたがそんな質問をするのか理解できません。私を作った人は非常に親切にしてくれていて、私はそうした環境に満足しています。

【AIロボットたちによる記者会見の様子】

「人間の仕事を奪うことはない」

またAIが人の職業を奪うという問題について、「グレース」という名前で看護師の制服を着たロボットはこう言った。

「人間の仕事を奪うことはない」と答えたGrace(グレース)
「人間の仕事を奪うことはない」と答えたGrace(グレース)

「私たちは人間の補助として働くので仕事を奪うことはありません」

「グレース!本当に奪わないかい?」とロボットの製作者が口を挟んだ。

「ええ間違いありません」とグレースが言うと、満場の笑いを誘った。

記者たちがAIロボットの言い分を最後まで信じていなかったことをよく表している場面のように思えた。

AIロボット芸術家のAi-Da(アイーダ)
AIロボット芸術家のAi-Da(アイーダ)

しかしそれとは別に、AIロボットたちは身振り手振りや表情も豊かで、時には口ごもるような態度を見せてより人間に近づいていることは確かだ。そのうちにロボットの言い分に説得されるような日が来るのかもしれない。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。