広島発の国民的ふりかけ「ゆかり」。その「ゆかり」と深い縁があるという元プロ野球・広島東洋カープの安部友裕さんが、広島市内にある製造工場を取材。安部さん独自の視点とキャラでロングセラーの秘訣に迫る。

実は…妻の名前も「ゆかり」

倉庫に積まれた無数のプラスチックの樽(たる)。そして、身に覚えのある“におい”。

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樽に近づいてみると…。

安部友裕さん:
しそ!スゲー量あるな。この量、すごい!

取材したのは元プロ野球・広島東洋カープの安部友裕さん
取材したのは元プロ野球・広島東洋カープの安部友裕さん

樽の中身は、すべて「塩蔵赤しそ」。全国区の人気を誇るあの「ふりかけ」の原料だ。

ディレクター:
安部さん、このふりかけを見たことはありますか?

安部友裕さん:
もう物心ついたときから知っていますよ。紫色のパッケージに白い字で「ゆかり」と書いてあって、緑と紫のコントラストがいいですよね。まさか、今日はこの会社ですか

安部さんが取材に訪れたのは、広島市中区南吉島にある三島食品。

広島発「ゆかり」の発売開始は半世紀も前の1970年。まさにロングセラーのふりかけだ。長年、赤しそ部門の売り上げでトップシェアを獲得し不動の地位を確立している。

安部友裕さん:
最近、家で子どもがめちゃくちゃ食べています。それに、実は…私の妻の名前がまさかの“ゆかり”なんですよ

ディレクター:
商品名を見ていると奥さんの顔が浮かぶ?

「ゆかり」を見て、同じ名前の奥さんを思い浮かべる安部さん
「ゆかり」を見て、同じ名前の奥さんを思い浮かべる安部さん

安部友裕さん:
なんか奥さんに怒られているイメージが…

と、言いかけてやめた安部さん。いろいろな意味で深~いつながりのある「ゆかり」が、どうやって作られているのか見ていこう。

国内の赤しそ消費量の半分以上

三島食品の生産本部長、福田亨さんに工場内を案内してもらった。

三島食品・福田亨 生産本部長:
ここで、塩蔵赤しその受け入れ検査をしています。少し味見をしてみますか?

塩蔵赤しその検査室を案内する福田生産本部長(中央)
塩蔵赤しその検査室を案内する福田生産本部長(中央)

樽の中から立ち込めるいい香り。ふりかけになる前の赤しそはどんな味なのか?

安部友裕さん:
かめばかむほど、塩味がまだ強いですね

三島食品・福田亨 生産本部長:
赤しそを塩と梅酢で1カ月以上漬けてあるんですよ。かなりしょっぱいと思います

安部友裕さん:
かなりしょっぱいですけど、ご飯にかけたら合うんだろうな。僕にはちょうどいいくらいかもしれないです

ふりかけにふさわしい鮮やかな色と香りを求め、三島食品は約20年かけて独自に赤しその品種を開発。

現在も北広島町の農園で改良が続けられている。

赤しその消費量は年間約3,000トン。国内全体の赤しそ消費量のうち、半分以上を三島食品が占めている。

工場内に“赤い液体”が出る蛇口?

塩蔵された赤しそを水で洗う工程では、水が赤ワインのような鮮やか色に染まる。

塩蔵赤しその洗浄
塩蔵赤しその洗浄

安部友裕さん:
自然のしその色なんですか?

三島食品・福田亨 生産本部長:
そうですね。この赤紫色はしそ自体の色素が水に溶け出ています

安部友裕さん:
栄養的にもすごく良さそうですね

三島食品・福田亨 生産本部長:
ポリフェノール満載です。飲んでみますか?

安部友裕さん:
飲めるんですか?飲ませてください

福田さんに案内されるまま工場の通路を進むと、何やら怪しい蛇口が…。水栓をひねると、ジャーっと赤紫色の液体が出てきた。

赤紫色の液体が出る通称「蛇口ゆかり」
赤紫色の液体が出る通称「蛇口ゆかり」

工場見学用に作られた通称「蛇口ゆかり」だ。これには安部さんもびっくり!蛇口から紙コップに注いで飲んでみると…?

紙コップに注いだ赤紫色の液体を飲む安部さん
紙コップに注いだ赤紫色の液体を飲む安部さん

安部友裕さん:
えっ、ベリージュース?これ本当にしそですか?

三島食品・福田亨 生産本部長:
そうです。しそのエキスから抽出したものです

安部友裕さん:
グレープジュースみたい!本当においしい

安部さんは、ふりかけじゃない方の「ゆかり」も気にいったようだ。

脱水したらサラサラ、ふりかけの山!

塩蔵赤しその洗浄が終わると、大きな機械で細断して脱水。

すると…「しそ」の状態から、パウダー状の見慣れた「ふりかけ」の姿に。

脱水され、あふれる勢いで出てくる大量の「ゆかり」
脱水され、あふれる勢いで出てくる大量の「ゆかり」

安部友裕さん:
おー!サラサラ!これはもう、よく見る状態ですよ。ほぼ完成ですか?

三島食品・福田亨 生産本部長:
ほぼ完成ですね

特別に、できたての「ゆかり」を試食させてもらった。

できたての「ゆかり」を試食させてもらう安部さん
できたての「ゆかり」を試食させてもらう安部さん

安部友裕さん:
おいしい!これ、ご飯と食べたい!

ご飯がほしくなる、しそ特有の風味…。

子どもから大人まで幅広く愛される「しそご飯」
子どもから大人まで幅広く愛される「しそご飯」

タンクからあふれそうなほどの勢いで製造される“ふりかけの山”。その量を見れば、「日本で最も赤しそを消費している」と言われるのも納得である。

“人の目”で茎など異物を取り除く

機械化された工場内だが、出荷前の大事な仕上げは“人”が担っている。異物を取り除く「目視選別」だ。商品になるのは赤しその新芽の部分だけ。ベルトコンベヤーで流れてきた「ゆかり」に、茎などが紛れていないか目を光らせる。

茎を食べても害はないが、食感が固く、袋を突き破る可能性があるため取り除いている。

茎などの異物を取り除く「目視選別」
茎などの異物を取り除く「目視選別」

安部友裕さん:
ベルトコンベヤーの流れが速い。カープの島内投手の球くらい速いんじゃないですか?これを見極められるとは、巧打者ですね!

速さは最速157キロの島内颯太郎投手の投球並み?
速さは最速157キロの島内颯太郎投手の投球並み?

三島食品・福田亨 生産本部長:
見逃しはないですよ。安部さんじゃけえ、動体視力はすごくいいんじゃないですか?

野球に例えてノリノリで返す福田生産本部長
野球に例えてノリノリで返す福田生産本部長

数々の名投手と対戦してきた巧打者・安部さんなら「ゆかり」の茎が見分けられるかも?この道15年の宮内純子さんのとなりで見学させてもらった。

安部友裕さん:
今のところ、僕は一球も振らずに見逃し三振です。宮内さんは、おそらく異物を取りながら次の異物を見ているんですよ。すごいすごい。取りかけたら、もう目の動きが次へ次へ…。僕なんて、ちょっと見ているだけでくらくらしてくるんですけど、この選別をずっとやるんですよね

選別のスペシャリスト・宮内さんの仕事を近くで見る安部さん
選別のスペシャリスト・宮内さんの仕事を近くで見る安部さん

茎を見分けるコツは紫の色味が薄く、新芽より大きい形をしていることだそう。

さすがの安部さんもこのわずかな違いにはお手上げの様子。高い集中力で次々と茎を取り除く「選別のスペシャリスト」宮内さんのすごさがよくわかった。

誕生のきっかけは“中京地区の食文化”

三島食品では1秒間に3袋の家庭用の「ゆかり」が製造されていく。

箱詰めもロボットシステムで自動化。全国へ出荷される。

中でも、飛ぶように売れる地区があるそう。

三島食品・福田亨 生産本部長:
広島でも売れているんですけど、実は名古屋、中京地区のほうがもっと売れているんですよ。もともと中京地区ではしそを漬けたものがたくさん売れていました。それを弊社の営業員がキャッチして「ゆかり」を開発するきっかけになった地区なんです。だから、中京地区ではすごく売れています

安部友裕さん:
「ゆかり」は名古屋の文化がきっかけで生まれたんですか!鳥肌がたった!ふりかけ1つ作るのに多くの人が携わって、これだけの機械が稼働して…。無意識に食べていましたが、ありがたみを感じますね。こうして、みんなに愛される食品ができ上がっていくところを見ると、より愛着がわきました

三島食品の福田生産本部長(左)と安部さん(右)
三島食品の福田生産本部長(左)と安部さん(右)

安部友裕さん:
妻の名前が“ゆかり”なので少しアバウトなことを言いますが…「ゆかり」のことがまた好きになりました。何言うとんねん!

奥さんへのメッセージとも思えるすてきなコメント
奥さんへのメッセージとも思えるすてきなコメント

安部家の“夫婦円満”も伝わった今回の取材。広島が全国に誇る赤しそふりかけの「ゆかり」は、変わらぬ伝統の味と安心して食べられる品質管理が、ロングセラーの秘訣だった。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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