復興拠点の避難指示が解除されてから一年が経った、福島県大熊町。新たなまちづくりに向け一歩ずつ歩みを進めている。大熊町で暮らす人たちの、この一年の思いを取材した。

新しい街づくり進む

2022年6月30日に避難指示が解除されたのは、帰還困難区域のうちの「特定復興再生拠点区域」約860ヘクタール。町の面積の約半分が解除となった。

”あの時”から時間が止まったまま…2022年6月30日避難指示解除
”あの時”から時間が止まったまま…2022年6月30日避難指示解除
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あれから一年。空き家などが点在していた場所では、工事が進められ更地が広がる。JR大野駅前には、商業施設やアパートの建設が予定されている。

JR大野駅周辺で進む工事
JR大野駅周辺で進む工事

街の景色に寂しさと喜び

帰還が始まった2019年に町に戻り生活している伏見明義さん「商店街とかみんな無くなっちゃったので…」と街並みが一変して寂しさを感じているが、学校が戻るなど町が良い方向に進んでいることも実感している。「今までは年配の人しかいなかったので、少し将来が明るくなったね」

伏見明義さん 見慣れた街はなくなってしまったが明るい未来も感じる
伏見明義さん 見慣れた街はなくなってしまったが明るい未来も感じる

町の推計人口は1年前の925人に対し1074人に増加。震災前に比べてまだ10分の1程度となる。

大熊町の推計人口は1074人 震災前の10分の1程度
大熊町の推計人口は1074人 震災前の10分の1程度

大熊町の未来を支える

住民の帰還に向け準備が進められているが「復興の力になりたい」と移住を決意した若者がいる。和歌山県の大学に通う原口拓也さんは、2021年に大熊町を初めて訪れた。荒れ果てた光景を目の当たりにして「本当に時間が止まっているんだ」と衝撃を受けたという。

原口拓也さん「復興の力になりたい」と移住を決意
原口拓也さん「復興の力になりたい」と移住を決意

そして町への復興の思いも込み上げかつての町の特産品「キウイ」に目を向けた。「特産品って町のアイデンティティのひとつだなって。そういったものがまだ栽培されていない現状で、復活に向けて僕も頑張っていきたいなと思って、この町に来ようって思った」と原口さんは語る。

大熊町のかつての特産品「キウイ」
大熊町のかつての特産品「キウイ」

移住を決意 特産品復活へ

原口さんは、かつての特産品「キウイ」を復活させたいと、町に移住することを決めた。有志で作られた「おおくまキウイ再生クラブ」に原口さんも所属。町内に2つの圃場を構え栽培している。震災前キウイを栽培していた地元農家の力も借りながら、3年後の収穫を目指している。

地元農家の力も借りながら3年後の収穫を目指す
地元農家の力も借りながら3年後の収穫を目指す

本格的な移住が始まる

思い描いてた目標が形となる中、またひとつ大きな一歩を踏み出した。福島県内で若者企業家を支援するプロジェクトに、原口さんの活動が認められ年間最大999万円の支援を受けることになった。

若者企業家を支援するプロジェクトに原口さんの活動が認められる
若者企業家を支援するプロジェクトに原口さんの活動が認められる

大熊町での本格的な移住生活が始まる原口さん。「何かをきっかけにキウイを知ってもらって、もう一回大熊に来てみようかなと足を運んでいただければ、僕たちの活動としても報われるなと思う」と話した。特産品の復活で、大熊町にかつての風景と光を取り戻す。

特産品「キウイ」が大熊町に人を呼び込むきっかけに
特産品「キウイ」が大熊町に人を呼び込むきっかけに

避難指示解除のこれまで

福島第一原発が立地する大熊町は、2019年4月10日に大川原地区と中屋敷地区の避難指示が解除された。面積は町全体の約4割を占めるものの、対象となる人口は4%にとどまった。

2019年4月10日に大川原地区と中屋敷地区の避難指示解除
2019年4月10日に大川原地区と中屋敷地区の避難指示解除

さらに2022年に帰還困難区域のうち「特定復興再生拠点区域」に指定されたエリアが解除され、面積は町全体の約半分程度に。

2022年に帰還困難区域のうち「特定復興再生拠点区域」に指定されたエリアが解除
2022年に帰還困難区域のうち「特定復興再生拠点区域」に指定されたエリアが解除

そしてそれ以外の区域、いわゆる「白地地区」について、政府は希望するすべての住民の2020年代の帰還を目指している。

「白地地区」政府は希望するすべての住民の2020年代の帰還を目指す
「白地地区」政府は希望するすべての住民の2020年代の帰還を目指す

白地地区に動き

2023年6月2日に参議院で可決・成立した「改正福島再生特措法」では、この白地地区に「特定帰還居住区域」が新たに設けられることに。各自治体が、対象の地域で帰還に向けた計画を作成し、国が認定すれば、除染費用の負担やインフラ整備を行う。

(福島テレビ)

福島テレビ
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