世代別の日本代表候補にも選ばれ、Jリーグでプレーした静岡市出身の五藤晴貴さん。若くして現役を退きいま僧侶としての日々を過ごしている。「現役生活を支えてくれた妻に、そして大好きなサッカーに恩返しを」自分だからこそできることがあると、新たなフィールドを進んでいる。
元Jリーガーが僧侶に転身

400年以上の歴史を持つ静岡県島田市の林入寺(りんにゅうじ)。

2023年4月、2年間の修行を終え、僧侶として新たな一歩を踏み出した、五藤晴貴さん(28)だ。

この日、ジャージ姿で見せてくれたのは、華麗なリフティング。五藤さんはカターレ富山でプレーした元Jリーガーだ。
現役プロ「自分たちの代でナンバー1」

競技を始めたのは6歳の時。地元のクラブチームでチャンスメーカーとして才能を伸ばすと、学生時代にはジュビロ磐田の下部組織で10番を背負い、U-18日本代表候補にも選ばれた。まさにサッカーエリート。
同年代のプロも、当時から一目置く存在だった。

藤枝MYFC・杉田 真彦 主将:
自分たちの代でいったら確実に五藤(旧姓・梅村)晴貴がナンバー1選手だったので。上手いし強いし、見ていて面白い選手で、ああなりたいと思っていました

清水エスパルス・北川 航也 選手:
サッカーでもそれ以外でも、周りの人に気を配れる。そういった大きな人でした
ケガに泣くプロ生活と心の支え

将来を嘱望されたものの、高校卒業後に入団したJ2富山では肩やひざなど度重なるケガに泣かされ、プロ4年間では結果を残すことはできなかった。

そんな悔しい日々を支えてきたのが、当時 交際していた夏美さんだ。東京の大学に通いながら、毎月 富山まで通うだけでなく、アスリートを食でサポートする資格も取得した。

妻・夏美さん:
彼をずっと見てきて、目の前にあることに一生懸命、ケガにも向き合ったし練習も試合にでるために頑張っていので。会いに行くだけじゃなく。傍にいてあげられない時に何をすべきかと考えた時に、食事を十分にとれていないということで、ちょっとした足しになってくれればという気持ちで届けていました
選手引退を機に結婚

その後、富山の契約が満了となり、アマチュアのJFLに環境を変えた後も二人三脚で歩んできた。しかし2018年、「モチベーションの低下」を感じサッカー人生に区切りを付ける。
引退を機に「新たな人生も、一緒にいたい」と、生涯のパートナーとして結ばれた。

ただ、夏美さんの実家がお寺だったため、以前から「将来は家を継いでほしい」と父である住職からの申し出があった。サッカー関連の仕事をしながら悩んだものの、「愛する妻のため」と出家を決意した。
過酷な修行 2年間の山ごもり

僧侶への道は想像以上に過酷だった。
2年間 山にこもり、1日10時間以上の座禅や廊下の雑巾がけ。食事や睡眠も制限される。五藤さんも体重が10kg減ったという。

五藤 晴貴 さん:
修行に入って100日経つと、やっと文通ができるようになるんです。その時に本当にうれしくて、涙が出るんです、「やっと連絡取れる」って。好きな人のために頑張ろうというのがあるので、待っていてくれる人がいるのはありがたいことだし、モチベーションになっていたなと思います
大好きなサッカーに恩返しを

僧侶になった後も、サッカーへの情熱は消えず、お寺のイベントでは、藤枝MYFCとジュビロ磐田のサポーター風鈴を作り、境内に飾り付け、必勝を祈願した。
また、7月29日には境内をライトアップするイベントも予定しており、今後も、サッカーを愛する僧侶として、「応援していきたい」と話している。

五藤 晴貴 さん:
違う形であれサッカーには貢献したい気持ちがまだあるので、静岡サッカーが盛り上がれば本当にいいなと思います。

挫折を乗り越え、第2の人生を歩みだした五藤晴貴さん。サッカーへの恩返しを掲げ、新しいフィールドでも彼らしく進んでいきます。

五藤 晴貴 さん:
寺離れが進んでいるので昔ほど、子供がお寺に来て境内で走り回って遊ぶ姿が見られないので、(サッカーを通じた企画で)市民や地域の方々と触れ合う機会を多くするお寺にしていきたいなと思います
(テレビ静岡)