2020年の7月に豪雨で被災し、一部区間で運休が続くJR肥薩線。熊本県や沿線など12市町村でつくる再生協議会が6月22日に開かれ、鉄道の復旧を目指す各市町村のトップからは、費用負担について厳しい意見が上がった。
復旧費は国・自治体・JR九州で分担
熊本・人吉市で開かれた再生協議会には、熊本県や沿線など12市町村のトップなどが出席した。
この記事の画像(13枚)肥薩線は、2020年7月に豪雨で甚大な被害に遭い、その復旧費は、JR九州過去最大の235億円に上るとみられていたが、国の支援で76億円まで圧縮できる見込み。
協議会では、自治体が線路などのインフラを維持管理する上下分離方式を導入することで、76億円の復旧費を国と自治体、JR九州で3分の1ずつ負担することを検討している。
毎年約1億円の維持費負担
この日の議題は、自治体が負担する約25億3,000万円についてだったが、非公開で行われた協議会終了後、田嶋副知事は厳しい表情を見せた。
田嶋徹副知事:
肥薩線の復旧の難しさは“普段使い”が少なく“観光”に限られ、くま川鉄道と肥薩線がこれまで連携が取れていなかった。沿線と周辺町村で様々な意見が出されました
熊本県は約25億3,000万円のうち半分を負担し、残りの12億円余りについては、人吉市が5割に当たる約6億3,000万円、八代市が3割のおよそ3億8,000万円を負担し、残りを10町村で負担する考えを示している。
また、上下分離方式を導入した際の線路の維持費などは、国や県の補助制度を最大限活用しても12市町村で、毎年約1億2,000万円の費用負担が発生する見込み。
各市町村のトップからは厳しい意見
12市町村の中で最も負担が大きい人吉市の松岡隼人市長は、「応分の負担はしないといけないと思っているが、ない袖は振れないので、今後の議論の中で意見を述べたい」と語った。
また、3割負担の八代市の中村市長は、6月22日の定例会見で次のように述べた。
中村博生八代市長:
(3割)負担は大きい。八代市は肥薩おれんじ鉄道もある。災害が頻繁に起きる中で追加(予算)を出している。協議を深めての話で温度差もあるようなのでバランスが必要
球磨村の松谷浩一村長は、6月14日の村議会で「肥薩線は、地域住民の生活や観光面でも重要な路線。鉄道での復旧に前向きに取り組みたい」と述べる一方で、「球磨村には、くま川鉄道と肥薩線がある。芦北町なら肥薩おれんじ鉄道がある。負担が大きくなるのは厳しい。その負担を少しでも減らすような要望をしていく」と話した。
また、肥薩線の沿線ではない相良村の吉松啓一村長は、6月15日の村議会で「鉄道復旧には協力するが、上下分離方式による線路の維持管理の運営への参加は厳しい」と述べた。
吉松啓一相良村長:
1回参加したらずっと(維持費を)払い続けなければならないのは大変。そう思ったので、私が口火を切ったが、他の町村も思っているだろう
非公開で行われた協議会では、「国や県の支援で市町村の負担を減らしてほしい」、「肥薩線の沿線と非沿線で負担の差があるべきだ」などの意見が上がったという。
熊本県は、6月中にも肥薩線の検討委員会を開いて、国とJR九州との協議も進めたいとしている。
(テレビ熊本)