全国で自転車ヘルメットの着用が「努力義務化」されてから2カ月半が経った。しかし、かぶっている人は少ない。そんな中で、“着用”を後押しするための先進的な取り組みが進む「自転車の街・三原市」を取材した。

「価格が高くて、持ち運びに不便」

2023年4月1日から始まった自転車ヘルメット着用の「努力義務化」。スタートから2カ月半、広島市内では着用が進んでいないのが現状である。

平地が広がる広島市内で、自転車は便利な乗り物
平地が広がる広島市内で、自転車は便利な乗り物
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ヘルメットを着用していない人:
暑いし、ちょっとしか乗らないから

ヘルメットを着用していない人:
まず入手難、なかなか手に入りにくい。それと高いよね。8000円もする。持ち運びが不便。自転車に置いたままにして盗られたら困る

ヘルメットが命を守るための大切な道具であることを裏付けるデータがある。

警察庁の調査では、自転車の運転中に交通事故で亡くなった人のうち頭部への衝撃が致命傷となった人は約6割にのぼる。

さらに、自転車による事故を分析するとヘルメットをかぶっていない場合の致死率は、かぶっている場合の約2.1倍高くなることがわかっている。

広島県警 交通企画課・泉新作 次席:
自転車の乗車中に交通事故で亡くなられた方は、頭に致命傷を負うケースが大変多くなっています。死亡に至らない場合であっても、頭の負傷によって後遺障害を残すことも可能性としてあります

着用率高い三原市 自転車レースも支援

努力義務化前に警察庁が全国13都府県で調査したところ、自転車ヘルメット着用率の全国平均は4%。

そんな中、人口8万8,000人あまりの三原市が12.7%(広島県警調べ)と全国平均の約3倍の着用率を誇っている。

三原市・岡田吉弘 市長:
自転車あるいはサイクリングをしっかりと盛り上げていきたいという思いの中で、さまざまな取り組みを進めてきました。同時に、自転車に安全に乗ってもらえるようにしていきたいという思いがあります

2022年10月、三原市立本郷中学校で開かれた自転車交通安全教室
2022年10月、三原市立本郷中学校で開かれた自転車交通安全教室

三原市は、これまでも自転車の安全教育を通じて自転車の危険な一面を知ってもらい、ヘルメット着用の重要さをアピールしてきた。

幼少期の安全教育こそが、ヘルメット着用の普及に結びつくと考えている。さらに三原市では、自転車ロードレースのプロチーム「ヴィクトワール広島」とスポーツ振興の協定を結ぶなど自転車による街の活性化に取り組んできた。

7月8日に三原市の離島・佐木島で開かれるプロリーグ「ジャパンサイクルリーグ」のレースも支援していて、その一環で“ヘルメット購入費補助”を決定したのだ。

三原市・岡田吉弘 市長:
自転車を通じて、街を盛り上げていく取り組みを進めています。教育的な取り組みもしっかりと根付かせて、より多くの人にヘルメットを着用してもらえるようにしていきたい。まだまだヘルメットの着用率は低いと思っています。ヘルメット着用の意義を市民の皆さんに伝えていきたいです

県内初の「ヘルメット補助金」に期待

三原市が7月からスタートさせる自転車ヘルメットの購入費の補助制度。1人につき1回まで2000円を上限に半額を補助する。年齢制限はなく、すべての住民を対象とした購入費補助制度は広島県内の自治体では初めて。

三原市内の自転車販売店では…

ラブバイク三原店・唐谷稜さん:
ヘルメットだけという人がいっぱい来るようになりました。3月までは一段しか置いていなかったが、4月に入る前からヘルメットの販売スペースを増やしました。帽子型のヘルメットは人気があり、現時点で2、3カ月待ち。三原市が補助金を出してくれるという話を聞いて、下見や予約をしに来た人も何人かいます

購入費の補助制度が発表されて以降、ヘルメットを買い求める人が増えているという。

県警は三原市の制度について、着用を後押しする効果的な取り組みだとして期待を寄せている。

広島県警 交通企画課・泉新作 次席:
三原市の取り組みをきっかけに、他の地域でもヘルメットの着用促進施策が広がってほしい。警察としても引き続き、関係機関・団体と連携して、交通安全教育や広報啓発などを推進していきたいと考えています

自転車事故の死亡リスクを下げてくれるヘルメット。自分自身だけでなく大切な人の命を守るための後押しとなるか…。三原市の試みが注目される。

(テレビ新広島)

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