情報公開制度によって行政や議会を監視してきた「市民オンブズマン佐賀」が3月末に解散した。公金のムダ遣いが社会問題となった30年ほど前、市民による監視網が全国に広がり、佐賀では1995年から活動を続けてきた。オンブズマン事務局長を長く務めてきた女性が活動を振り返る。
税金ムダ遣いが大手を振っていた
この3つの昭和ことばを知っているだろうか。
「カラ出張」 架空の出張費用
「官官接待」 役人が役人を接待
「食糧費」 役所の飲食費
今から30年ほど前は、こうした税金のムダ遣いが大手を振っていた。今はかなり是正されているが、監視役を続けてきたのが「オンブズマン」だ。オンブズマン佐賀の事務局長を長く務めた味志陽子さんも高齢となり、今回組織の解散となった。味志さんに27年間を振り返ってもらった。
すぐばれる“うそ”をつく
サガテレビ・宮原拓也解説主幹：
95年にスタートしたオンブズマン佐賀。当時は「官官接待」「食糧費問題」を追及された。印象に残ることは何ですか？
味志陽子氏：
これからオンブズマン活動をやるというのはどういうことか、といきなり責任がのしかかった。単なる一市民がこんなことやっていいのか、と。非常に重大な責任を感じてしまった。人の財布を見るようなもの。そんなことするのに、チャラチャラしてはいけない。厳粛な気持ちでやらないと、と重大な決意でした
サガテレビ・宮原拓也解説主幹：
作業としてはエネルギーが要る仕事。一番大変だったことは？
味志陽子氏：
県に情報公開請求して支出の公文書を。数枚だったらいいが、県のコピー費になると、確か何百枚だった。それを計算しながら、月にいくら使っているかを、ずーっと集計して、一覧表にして、どこかおかしいところはないか、とみたら、おかしいところがたくさんある。
味志陽子氏：
「月に90万枚コピーされているんですね」と聞くと、「そりゃ必要だったから、するさ」とか「あの年は台風がたくさん来たから、そういう作業は必要だった」と。台風のことを気象台に聞くと、あの年は佐賀には通ってなかった、と。すぐばれるようなうそをつくわけですね
6億円超の“架空コピー費”暴く
県の架空コピー費は大きな問題になった。
サガテレビ・宮原拓也解説主幹：
年間約6億円以上の不正をオンブズマンが暴きました。当時は、全国で使われた官官接待の総額は年間300億円とも言われました。役人が役人を飲ませ食わせするために、裏でカネを作る。行政内部の「慣行」になっていたんですね
外部の監視で変わった行政体質
サガテレビ・宮原拓也解説主幹：
そういうオンブズマン活動を経て、役所の体質も変わったという印象ですか？
味志陽子氏：
20年以上、外部の監視にさらされていると、変わらざるを得ないと思いますし、1995年から始めて、1997～1998年にはすっかり緊張関係ができ上がって。不正をやっちゃいけないという気持ちが、ありありと出ていました
味志陽子氏：
それまで営々と続けられていたときは、どっぷり浸かっていれば、気持ちが鈍感になるというか、「ま、いいか」というのがあったと思うが、指摘されて世間から批判が出てくると、行政側も何だったのかというのがあったと思う
サガテレビ・宮原拓也解説主幹：
27年間やってこられたが、まだやり残されていることはありますか？
味志陽子氏：
議会の政務活動費の問題がね。議員の支出を証明する領収書を全部公表してもらうとか、そういうのがあったら、そこまでたどり着きたいが、なかなか敵もさるもので…。かたくなですからね
サガテレビ・宮原拓也解説主幹：
本来、オンブズマンの監視機能というのは、議会でありマスコミであるのですが、その議会が議員に当選すると、向こう側に行ってしまうということですか？
味志陽子氏：
おカネを握ったような気持ちになるんでしょうね。1円たりとも自分のポケットマネーと違いますから。（政務活動費は）政務の調査をする費用なんです。それをやっている議員さんもいます。ただ、あとはまるで「第二の報酬」という調子で使いっぱなし
情報公開のお手本は“寿司屋”
議員が果たすべき大きな役割、責任を考えると、オンブズマンの目も厳しくなるということだろう。
サガテレビ・宮原拓也解説主幹：
情報公開の究極の実践例は“寿司屋”と言われます。寿司屋は、握りのネタやシャリ、包丁からまな板まですべてお客さんから丸見えです。客から見られると、店側も清潔にし、料理も丁寧にし、結果として客も納得する
サガテレビ・宮原拓也解説主幹：
味志さんが心残りと言った「県議の政務活動費の情報公開」も不十分です。ネットでは公開せず、議会事務局にわざわざ出向いて閲覧しなければなりません。県民のみなさんにぜひお願いしたい。一度、政務活動費の閲覧をしていただきたい。コインパーキングの領収書100円。新聞代。雑誌代。政務活動費を通じて、議員の実態がよくわかります
（サガテレビ）
