岩手県で東日本大震災からの復興を後押ししようと、約9年間JR釜石線を中心に運行されてきたSL銀河が、6月11日に最後の運行日を終えた。大勢の地元の人や鉄道ファンが沿線に集まり、別れを惜しんだ。
SL銀河 雨の中最後の旅へ
6月11日、ラストランの日を迎えたSL銀河。出発地点の釜石駅には別れを惜しむ多くの鉄道ファンが集まり、次々にその姿をカメラに収めていた。
この記事の画像(20枚)午後2時40分、駅長の合図とともに最後の旅が始まった。
SL銀河は、花巻市出身の作家・宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフとした人気の列車だ。2014年から東日本大震災の復興を観光面で後押ししようと、釜石線を中心に走り続けてきたが、2021年、客車の老朽化を理由に運行終了が決定された。
11日は雨の中、沿線の釜石市・甲子川河川敷にも多くのファンが詰めかけた。列車が通ると大漁旗を振るなどして感謝を伝えた。
ファンが集結したのは、SL銀河の運行開始当初からほぼ毎週のように通っている東京在住の会社員・大嶋朋子さん(47)がSNSなどで呼びかけたからだった。
東京都在住・大嶋朋子さん:
いつも写真を撮っている仲間に協力してもらって、こんな形でお見送りをさせてもらった。車両に乗っている人と沿線で見送る人の距離が近いのがSL銀河の魅力。最後までお見送りできて、手を振ることができて良かったと思う
花巻から訪れた人:
みんなが応援しているというのがしみじみ分かる。たまに顔出してもらえれば地元民としては、うれしいかなと思う
めがね橋の上に3分13秒停車
遠野市宮守町の人気スポット・めがね橋では、特別にライトアップされ、ここにも多くの人たちが集まった。
SL銀河は普段、この橋の上で停車することはないが、この日は3分13秒停車し、別れを惜しむ声に応えた。
多くの人に愛されたSL銀河。集まった人のペンライトの光が星のように輝き、まるで「銀河鉄道の夜」の物語の世界のようだった。
埼玉から訪れた人:
機関士さんの最後の「さよなら」は本当に涙出てきちゃった。最高でした
神奈川から訪れた人:
SL銀河は宮沢賢治がテーマ。一番今までできれいに描かれていて良かった
釜石から訪れた人:
写真もいっぱい撮れたので、息子が大きくなった時に見て、思い出したい
「“希望の列車”だと思う」
11日午後9時すぎ、SL銀河は終点の花巻駅に到着した。
機関士:
ありがとう
東京から訪れた乗客:
もう一生の思い出になった。SL銀河がなくなっても、これからも遠野と釜石を子どもと訪れたい
兵庫から訪れた乗客:
復興の象徴であるSL銀河が、もっと長く再開してくれたらいいかなと思う。“希望の列車”だと思う
「震災からの復興支援」を掲げて走り続けた9年2カ月。運行本数は507本、乗客数はのべ7万4,000人に上り、地域に元気と笑顔を届けてきた。
SL銀河の火が消えても、その勇姿はいつまでも人々の心の中に残り続ける。
(岩手めんこいテレビ)