11日午前0時に当初の「衛星発射」の予告期間が終了したものの、次の発射に向けた準備の可能性を示すなど、抑止力が効かない北朝鮮。対するアメリカの策は――。
フィリピン海に浮上した米原潜 映像公開は異例
フィリピン海を悠然と進むアメリカ海軍のミサイル原潜「メイン」。

海兵隊のヘリコプターによる物資補給を行う映像が公開された。

「メイン」は、射程1万2000キロといわれる戦略核ミサイル「トライデントⅡD5」を最大20発搭載し、海中から発射できる巨大な原子力潜水艦だ。

能勢伸之フジテレビ上席解説委員:
この映像公開は極めて異例です。アメリカは、本来海に潜ったまま3カ月以上も作戦行動するミサイル原潜を、わざわざ北朝鮮が射程に入るフィリピン海で見せつけるように浮上させたのです。ロシアや中国とは違い、北朝鮮には見せないと核抑止が効きそうもないと判断した可能性もあるでしょう。

これに対し北朝鮮は、5月29日、日本に「軍事偵察衛星打ち上げ」を通告。

事実上の弾道ミサイル「千里馬-1型」を大きくカーブさせながら飛ばし、偵察衛星を軌道に載せるとしたが、これは飛翔経路を複雑に変化させることができるミサイル技術を各国に見せつけるかのような予告だった。

しかし、2日後の発射では、「2段目のエンジンが正常に始動できず落下した」とその日のうちに発射失敗を認めた。

能勢伸之フジテレビ上席解説委員:
4月に発射した火星18で脅威を与えた北朝鮮のミサイル技術でしたが、今回はあまりに難しい軌道設定ゆえの失敗だったのか、アメリカの「抑止」への対抗手段が遠のいたように思えます。
「見せる」抑止とみられる動き
北朝鮮が発射を強行したその日、アメリカのオースティン国防長官が山口県の岩国基地を訪問。

乗っていたのは、「メイン」のように海中に潜むミサイル原潜に核ミサイルの発射を指揮する能力がある、「E-4B国家空中作戦センター」だった。

さらに6月5日には、沖縄県の嘉手納基地からF-35A戦闘機2機が岩国基地に飛来した。

航空軍事評論家の石川潤一氏によると、この2機は最新のF-35Aブロック4型機。将来、ブロック4の一部が核爆弾運用可能になるとされている。これらの展開も北朝鮮への見せる抑止の一環なのか。

能勢伸之フジテレビ上席解説委員:
アメリカ・日本・韓国は、北朝鮮の核・ミサイルに対する抑止の手段を「見せる」ことを含めて探っているように見えますが、北朝鮮は、次の衛星の打ち上げの事前通告をしない可能性を示唆するなど、現時点では動きが不透明です。

こうしたなか、アメリカは、次なる発射に備えるためか、巨大レーダーを持つミサイル追跡艦「ハワード・O・ロレンツェン」を洋上に派遣。

嘉手納基地には、飛行中のミサイルの機動を赤外線・光学センサーで追う特殊な偵察機「コブラボール」を2機展開。警戒を強めている。
(「イット!」6月11日放送より)
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