新型コロナ感染症は5月、感染症法上の位置付けが「5類」に変更された。苦境に立たされていた飲食店にも客が戻り始め、それにともない「運転代行」の需要も急増。ただ供給が追い付かず、長い待ち時間が常態化している。コロナ収束後の代行業者の“苦悩”を取材した。

コロナ禍で従業員は離職 アフターコロナで客は街に

福井運転代行イエロー・島田誠一代表:
今1時間くらいかかるんです…。すいません、またお願いします

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福井市内を中心に運転代行業を手掛けるイエローは、この日、2台の車で営業を続けていた。比較的客が少ない平日夜でも、待ち時間は混雑時、ゆうに1時間を超えることが常態化しているという。

活気が戻り始めた福井市の繁華街、通称「片町」で代行を待つ人たちも「混むと1時間待ち」「平日はそうでもないけど、金曜日はすごく混む」と諦め顔だ。

混雑の理由は、増える需要に供給が十分に対応できていないからだ。

福井運転代行イエロー・島田誠一代表:
一番はコロナ禍で大量の従業員が離職した。車の台数も減った。アフターコロナでお客が戻ってきていて、その需要に供給が追いつかない

この運転代行業者では、ピーク時、従業員は約40人、車は18台ほどあった。しかし今では従業員が13人ほど、車は5台と、3分の1以下になった。

ほかの業者も「コロナ前は3台、人数12人。ただ、今は週末2台で平日は1台。従業員4人にまで減っている」と話す。

「人手不足」に追い打ちをかける「賃金条件」

全国運転代行協会によると、全国の業者数は新型コロナ前には8,500社あったが、現在は7,800社と8%余り減少した。従業員数の減少率はさらに顕著で23%、7万人から5万4,000人にまで減った。業界全体が深刻な人手不足になっている。

福井運転代行イエロー・島田誠一代表:
そもそも、業界の賃金体系が安かったり、あいまいだったりする。運転代行は給料が安いイメージがついてしまっている。まずは賃金を上げることだと思う

飲酒運転の厳罰化や参入障壁の低さなどで、運転代行業は10年ほど前から価格競争が激しくなった。コストを抑えるため、従業員の賃金は低い状態で固定化されているという。

国土交通省は2018年、交通の安全と利用者保護の観点から、地域の実情に合わせて都道府県が条例で自由に最低利用料金を定めることができると通知した。しかし、現時点で最低利用料金を設定している自治体は一つもない。

福井運転代行イエロー・島田誠一代表:
特に車での移動が多い福井県は運転代行がすごく重要な街。全国に先駆けて最低料金を設定してほしい。行政に動いていただかないと、私たちだけでは無理

「飲酒運転」が増える懸念…

この業者では今、半数以上の利用者を断っている。運転代行がつかまらない状態が続くと、「飲酒運転」が増えるのではないかと懸念している。

福井県は飲酒運転による死亡事故の割合が高い。過去5年間の合計は10万人あたり3.33件で、全国平均の3倍余りだ。

福井運転代行イエロー・島田誠一代表:
一番心配しているのは、待ちきれずに飲酒運転で帰ってしまう方が増えるのではないかということ。飲酒運転に関わる事故が少なくなる。私たちの仕事はそこが一番なので

新型コロナが落ち着き、経済は再び活性化している。需要が回復する一方で、労働条件の向上や賃金の引き上げができない運転代行業は、その変化に対応できないでいる。

(福井テレビ)

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