様々な業界で「担い手不足」が叫ばれているが、地方議会の議員も例外ではない。私たち住民の代表として、意見を政治に反映する重要な役割を担う地方議員のなり手不足。現場で何が起きているのか取材した。

投票の機会なく「市民の総意は…」

6月4日、市長選と同じ日に告示された村上市議会議員の補欠選挙。その掲示板に候補者のポスターが貼られることはなかった。

村上市議会議員 補欠選挙の掲示板
村上市議会議員 補欠選挙の掲示板
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選挙の立候補者はゼロ。1人が欠員のままという異例の事態となった。深刻な地方議員のなり手不足。それは、ほかの自治体でも…

5月22日、新たな顔ぶれが集まっていたのは加茂市議会。

加茂市議会
加茂市議会

4月に行われた加茂市議選は定数15に対し、立候補者が15人で、44年ぶりに無投票となった。

加茂市では同じ日に告示された市長選も無投票となり、投票の機会がなかった市民は…

加茂市民:
残念。加茂市をどういうふうにしたいかと聞く機会があったらよかった

加茂市民:
市民の総意が反映されるのかとなると、クエスチョンマーク

無投票当選の新人市議… 思いは複雑

一方の議員側は現状をどう受け止めているのだろうか。

(Q.議員になってから初めての議会)
加茂市 近藤ゆみ 市議:

めちゃめちゃ緊張したので、雰囲気はあまり分からなかった

加茂市 近藤ゆみ 市議
加茂市 近藤ゆみ 市議

初めての立候補で無投票当選した近藤ゆみ市議(27)。

加茂市内で子ども食堂などを開く市民団体の代表を務めていたが、弱い立場への支援をさらに拡充したいと議員への立候補を決意した。

1年ほど前から立候補の準備を進め、選挙用のビラも用意したが、結局選挙戦とはならず…

加茂市 近藤ゆみ 市議:
1週間、選挙があると思ってやっているので、全然余った

余った選挙用ビラ
余った選挙用ビラ

近藤さん自身、無投票での当選に複雑な思いを抱える。

加茂市 近藤ゆみ 市議:
「選んでくれた人がこれだけいるんだ」というところで、初めて議員として、物を申せるのかなと思っていた節があった。やっぱり選挙で選ばれたかった

元議員に聞く“なり手不足”の理由

こうした地方議員のなり手不足には、どのような背景があるのだろうか。

阿賀まちづくり 高橋真也さん:
議員になって、行政に色んなことを提案したとしても、それが実現するまで非常に時間がかかってしまったり、議員一人の考えだけで何かを変えるというのは非常に難しいというのがあった

阿賀まちづくり 高橋真也さん
阿賀まちづくり 高橋真也さん

阿賀町に住む高橋真也さん。

「地元に貢献したい」と、2017年に町議会議員に初挑戦し、トップ当選したが、思うようなスピード感で改革が進まないことを感じ、2期目の立候補はしなかった。

現在、高橋さんはまちづくりの会社を自ら立ち上げ、空き家を改修した宿泊施設をつくる活動などにあたっている。

阿賀まちづくり 高橋真也さん:
今は自分の思い通りに、とにかく動けるので、突破力が議員のときよりはあるかなと思っている

さらに議員を辞め、自ら事業を起こした理由の一つには報酬の低さも。

町の議員報酬は月額21万円、手取りでは十数万円と高待遇とは言えない。

阿賀まちづくり 高橋真也さん:
「議員の仕事だけで、どうやって食べていくの」という議論にもなると思うし、若い人たちが議員の仕事に興味を持つ機会がどんどん少なくなっている。議員自体が人から憧れられる職業ではどんどんなくなっていっているというのが一番根本

議員に関心を… 市民への発信強化

いかに市民に議員の仕事への関心を持ってもらい、魅力を感じてもらうか。44年ぶりに無投票となった加茂市議会も動き出している。

加茂市 森友和 市議:
広い世代に興味を持っていただけるよう、加茂市議会として継続的な検討を重ねる必要があります

加茂市 森友和 市議
加茂市 森友和 市議

この日、議会で設置が決まったのは「広報広聴特別委員会」。議会として情報発信や市民との意見交換を強化することにしている。

加茂市 森友和 市議:
なり手・立候補者が少なかった、定数ギリギリであった。議会の敷居を下げていくという意味も込めて、市議会の活動と市政というものを皆さんにお届けする場をつくっていかなければいけない

新人の近藤市議も委員会のメンバーに加わった。

広報広聴特別委員会に入った近藤市議
広報広聴特別委員会に入った近藤市議

加茂市 近藤ゆみ 市議:
関心のなさが、立候補する人がいないという結果を招いている。この議会の状況を皆さんに知っていただき、市民をつなげるという活動を頑張っていきたい

民主主義の根幹を揺るがす議員のなり手不足にどう向き合うのか…地方議会のあり方が問われている。

課題解決へ 各地方議会の対策

仕事のスピード感や報酬の問題、関心の低さなど課題が多い中、各地方議会も対策に乗り出している。

上越市議会は、その名の通り「市議を目指しやすい環境整備検討会」を設置し、議員報酬の適正化や選挙のマニュアルを作ることなども提言。

また、柏崎市議会は2022年、災害時や感染症のまん延などに加え、育児や介護などの理由でもオンラインで委員会に出席できるよう条例を改正した。

花角知事も4月の会見で「議員は間接民主制のキーパーソンだ」として、「議員の活動を支える環境を考える必要がある」と話している。

議員のなり手不足という大きな課題に、あらゆる観点から対応が迫られている。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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