夏を前に注意が必要なのが、クマの被害。福島県では大型連休中に須賀川市と会津若松市で、6月4日は郡山市、そして6月5日は福島市で。これまでに5件5人と2022年を上回るペースで被害が出ている。専門家は相次ぐ被害の背景に、人に慣れた“新世代クマ”の存在を指摘する。

自宅の庭先で遭遇

早朝からクマへの警戒が呼びかけられた福島県福島市町庭坂。この周辺で男性がクマに襲われた。被害が発生したのは、6月5日午後4時半ごろ。自宅の庭にいた74歳の男性がクマに襲われ、顔などにケガをした。クマは体長が約1メートルほどで、子グマを連れた母グマとみられている。

男性は自宅の庭でクマに襲われる
男性は自宅の庭でクマに襲われる
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近所の人は「すごい叫び声がするから、急いで行った。そしたら血を流していて、クマが今逃げたばかりだって言っていた」と当時の様子を語った。また他の住民は「日中いつもその辺を散歩していたが、怖いのでやめた」と話した。
福島市などは周辺にワナを設置するとともに、パトロールを強化し警戒を続けている。

周辺にワナを設置しパトロールを強化
周辺にワナを設置しパトロールを強化

6月は要注意

福島大学で野生動物の研究をする望月翔太准教授は、6月はクマ被害に注意すべき時期という。

福島大学・食農学類 望月翔太准教授:この6月ぐらいは一つ交尾期になりますので、オスはメスを求めてかなり広い範囲を移動するようになります。メスに関しては、もし子どもがいればその子どもたちに、どんな餌を食べたらいいのか 植物であればどんなエサが食べられるのか どこで寝床を作ったらいいのか 木の登り方をどうしたらいいのかというのをしっかりと教えている時期にもなります

福島大学・食農学類 望月翔太准教授 6月は特に注意すべき
福島大学・食農学類 望月翔太准教授 6月は特に注意すべき

人慣れした新世代クマ

そして、警戒を呼びかけるのが「新世代クマ」の存在。人里近くの山林を住処にし、生活音に慣れている特徴がある。
福島市の被害現場は「新世代クマ」にとって行動範囲の一部だったかもしれない。捕獲隊の男性は「家との境がはっきりしていないことを踏まえると、クマの警戒が薄れてくるのでは」と話す。

現場に残された爪の跡 
現場に残された爪の跡 

福島大学の望月准教授は「新世代クマは確実に増えていると思う。車の音や人の生活音がある所で生まれて、そこが故郷になってしまう。山から下りてくるクマよりも人に慣れたクマが生まれてしまう可能性というのは、これからも生じるのではないか」という。

車の音や人の生活音がある所で生まれ そこが故郷に
車の音や人の生活音がある所で生まれ そこが故郷に

エサ不足で里山へ

クマは本来、人里から離れた山の奥で生活していたが、林業が衰退したことで山が整備されず、クマのエサとなる木の実などが育ちにくくなった。それで人里まで降りてきているのではと望月准教授は指摘している。
新世代クマは冬眠も人里に近い場所で行い、小さいころから人間の生活音や車の音に慣れているという。

エサ不足で人里まで そこで育った「新世代クマ」は人慣れしている
エサ不足で人里まで そこで育った「新世代クマ」は人慣れしている

遭遇しないためのポイント

新世代クマへの対策でポイントとなるのが「住み分け」 山の近くに住む人は、敷地周辺の藪などを刈り取る。また農地への侵入を防ぐため、電気柵を設置する。そしてペットフードや生ごみなどを放置しないといった対策が必要。

人間のテリトリーにクマを近づけない 住み分けが重要
人間のテリトリーにクマを近づけない 住み分けが重要

さらに夏山シーズンを迎えレジャーなどで本来クマが生息する地域に入る際、遭遇しないためポイントは「時間帯」 2023年発生したクマ被害の時間帯は「早朝」と「夕方」。望月准教授はクマによって多少違いあるとしても、基本は夜行性で夕方は活動をし始め早朝は活動を終える時間だという。

時間帯にも注意を 基本は夜行性 夕方から早朝は活動時間
時間帯にも注意を 基本は夜行性 夕方から早朝は活動時間

そして、山に入る際は一人ではなく複数の人で。自分の存在を知らせるために、クマ鈴やラジオをなどで音を出すことも大事。

もし遭遇した場合は抵抗などはせずに、その場でうずくまりしっかりと頭を守る「防御態勢」を取ることが大切とのこと。

山に入る時は複数人で 音を出すことも重要で鈴やラジオを携帯
山に入る時は複数人で 音を出すことも重要で鈴やラジオを携帯

近年は住宅街などでも姿が目撃されるようになったクマ。人に慣れた新世代クマに、山に入らずとも遭遇する危険性がある。特性を理解し、対策をすることが重要となりそうだ。

(福島テレビ)

福島テレビ
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