秋田・横手市でダム施設を使った日本酒の貯蔵実験が始まった。酒を熟成させることで新たな特産品を生み出す取り組みだ。熟成させる場所はダムの管理・点検用のスペース「監査廊」などで、1年を通じて酒の熟成に適した温度に保たれているという。

“酒の熟成に適した”ダムの監査廊に着目

秋田県が管理する大松川ダムで日本酒の貯蔵実験が始まった。大松川ダムは、横手市の水がめともいえる大きなダムで、ダムの最も高いところから53メートル下にある作業用の通路、空気もかなりひんやりしたところに日本酒が並んでいる。

日本酒が並べられたのはダム内の通路
日本酒が並べられたのはダム内の通路
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5月23日に、県平鹿地域振興局の代表と地元横手市の酒蔵「天の戸」の柿﨑常樹社長が協定書に署名を交わした。大松川ダムを使って最長で3年間、日本酒の貯蔵実験を行う。

秋田県平鹿地域振興局 建設部・鳴海勝哉部長
秋田県平鹿地域振興局 建設部・鳴海勝哉部長

秋田県平鹿地域振興局 建設部・鳴海勝哉部長:
ダムの中では監査廊という所が、年間を通じて一定の気温で、紫外線を防げることもあり、酒の熟成に適した環境であることに着目した。酒どころ・秋田県でもそういった取り組みを進めてみたかった

熟成した酒を新たな特産品に

この日はダムの管理・点検用のスペース「監査廊」など2カ所に、天の戸の純米吟醸や純米大吟醸など約2,800本の酒が運び込まれた。

“適した環境”という監査廊で熟成
“適した環境”という監査廊で熟成

監査廊はダムの水位よりも低い場所に位置していて、温度が1年を通じて酒の熟成に適した10度前後に保たれている。

天の戸・柿﨑常樹社長:
一定温度で9度くらいとなると、そのまま貯蔵するだけで熟成がまろやかに進むと間違いなく思う。飲んでみたいですね、やっぱり

日本酒は品種ごとに熟成の期間を変えることにしていて、純米吟醸は秋の「ひやおろし」のシーズンに一部を取り出すほか、純米大吟醸は1年ほど貯蔵し、味の変化を確認することにしている。

“ダムで熟成”した酒を新たな特産品に
“ダムで熟成”した酒を新たな特産品に

秋田県が管理するダムを使って酒の貯蔵実験を行うのは初めてで、秋田県はこうした取り組みを通じて、熟成した酒を新たな特産品にしたい考え。

天の戸・柿﨑常樹社長
天の戸・柿﨑常樹社長

天の戸・柿﨑常樹社長:
ダムに貯蔵した酒は、日本酒ファン、ダムファンにとってもたまらない酒だと思う。風景を思い出しながら、皆さんで一献交わしてもらえれば最高

ダム利用した取り組みは全国でも

日本酒は周りの温度が変わると味も変わってしまうため、温度管理は非常に重要だ。ダムを使った貯蔵は電気を使わないこともあって、環境に配慮した日本酒造りにもつながっているという。

今回、日本酒の貯蔵実験を行う大松川ダム(秋田・横手市)
今回、日本酒の貯蔵実験を行う大松川ダム(秋田・横手市)

全国でもダムを使った貯蔵の取り組みは行われていて、富山県では黒部ダムなど5カ所のダムで県内15蔵元の熟成が進められているほか、北海道の札内川ダムではチーズの熟成なども行われている。

搬入の様子
搬入の様子

秋田県内には発酵食品がたくさんあり、こうした取り組みが今回の実証実験を通して広がりを見せるか注目だ。

(秋田テレビ)

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秋田テレビ
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