自民党の佐藤正久元外務副大臣は28日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、ウクライナ支援のために防御的な対空火器とその弾薬の提供に前向きな姿勢を示した。「ロシアはウクライナの防空火器の弾薬の枯渇を狙っている」と指摘。「それに対して本当に支援しなくていいのか」と述べた。

佐藤氏は「日本有事で、他国から防空火器やその弾薬をもらわずに東京や大阪、原発を守るのは十分かというと、全然足りない」と明言。「同盟国、同志国で日頃から武器・弾薬についてやり取りできるようにストックしておくべきではないかということを含めていま(与党で)議論している」と明らかにした。

番組コメンテーターの橋下徹氏(弁護士・元大阪府知事・元大阪市長)は「一律に武器や弾薬(の他国への提供)は全部だめだというのは日本の有事のことをまったく考えていない理屈」と断じた。「日本有事で他国に『ください』というものを、日本は他国に『渡しません』というのは通じない。日本も『渡します』、だから(日本有事で)日本にも『ください』というのが国際社会のルールだ」と強調した。

立憲民主党の渡辺周元防衛副大臣はウクライナへの防空火器や弾薬の提供について、(ロシア領内で破壊活動を行ったとされる)ロシア人義勇兵に渡る可能性に触れ、「より慎重であるべきだ」と語った。

ウクライナへの武器供与をめぐっては、ロシア領内で破壊活動を行ったことを明らかにしたロシア人義勇兵ら反プーチン勢力が、ウクライナに提供されたはずの米軍の銃や軍用車両を使用していた疑いが浮上。米国防総省報道官は23日「米国はウクライナ軍以外の第三者への装備移転を認めていない」と表明した。今後の西側諸国からのウクライナ支援のあり方に影響を及ぼす可能性が指摘されている。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
もう一つの新しい流れがある。ウクライナ側につくロシア人義勇兵ら反プーチン勢力がロシア領内で破壊工作を行っている。

そのロシア人義勇兵らの活動に関し、西側諸国から本来ウクライナに供与されたはずの装甲車などの装備品がロシア人義勇兵の手に渡って破壊工作に使われた可能性が浮上。米国防総省は「ウクライナ軍以外の第三者への装備移転を認めていない」と表明した。

佐藤正久氏(元外務副大臣・自民党参議院議員):
建前として、当然、外交的にはそう言わざるを得ない。実際、ウクライナにはジョージア部隊など、様々な外国人義勇軍部隊がいる。ウクライナ人女性と結婚してウクライナにいるロシア人男性もいる。様々な人がいて結構入り乱れている。建前上、準軍隊、準軍事組織には西側の兵器を渡さないといっても、実際は西側の兵器がないとウクライナ領内で反転攻勢もできない状況だ。対戦車火器や携帯の対空火器スティンガーなどは一定程度外国人義勇兵の手に渡るのは仕方ないと思う。ただ、米国が供与したMRAP、装甲歩兵戦闘車がロシア領内で使われるのは、ウクライナ側の統制が甘いと指摘せざるを得ない。
            
松山キャスター:
欧米諸国から支援されたものが義勇兵にわたっているとなると、欧米各国も今後なかなか(ウクライナへの)支援が難しくなるとの見方がある。

渡辺周氏(元防衛副大臣・立憲民主党衆議院議員):
シリアやソマリアなど、国家が崩壊すると世界中いろんな国から武器が集まってきて武器市場になってしまう。そうなると、まったく意図しない目的でまったく意図しない人間に対して武器が使われることがある。結果的に無秩序状態になってしまう。戦場への武器供与は相当歯止めをかけないと厳しい結果になる。より慎重であるべきだ。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
ロシアによるウクライナ侵攻後、日本政府はこれまでウクライナに対して防弾チョッキやヘルメットなどを提供してきた。今月21日、新たに自衛隊の車両100台規模、非常用糧食のビーフシチュー約3万食を提供することを発表した。防衛装備移転三原則では、紛争当事国への装備品の提供を禁止しているが、去年3月の運用指針の一部改定で国際法違反の侵略を受けているウクライナに対しては「弾薬や武器を除く自衛隊の不用品であれば、譲渡することが可能」となった。橋下さんの問題意識は「ビーフシチューより弾薬を」ということだが、ビーフシチューも戦地では必要とされる可能性はあり、それよりも一歩踏み込むべきだということか。

橋下徹氏(番組コメンテーター・弁護士・元大阪府知事・元大阪市長):
ビーフシチューも否定はしない。外国に武器や弾薬を提供できない、いまの防衛装備移転三原則は日本が有事になることはないことが大前提だ。日本の憲法は紛争や戦争がない理想の世界を目指していて、そこから理屈を考えていくと、日本は有事に巻き込まれないとの前提で様々な安全保障の制度ができている。しかし、いま国際情勢は違うではないか。日本も有事に巻き込まれた時に、自国だけですべて武器や弾薬を賄えるわけない。特に弾薬は本当に足りない状況だ。日本が有事に巻き込まれた時に欲しいもの、他国に「ください」というようなものを、日本はいざという時に他国に「渡しません」というのは通じない。日本も「渡します」、だから日本にも「ください」というのが国際社会のルールだ。ただ、現実はロシアと日本は国境を接しているから、これは政治の判断だ。ミサイルや戦闘機を渡すなどというのは、その微妙な関係を見なければいけない。日本だって有事に巻き込まれた時でも日米同盟があるから世界各国に「ミサイルください、戦闘機ください」という必要はない。日本が必要とするものが弾薬だということであれば、それは他国にも渡さなければいけない。渡し方も直接ウクライナに渡すのではなく、米国に渡して米国からウクライナに渡すなど、やり方はいろいろある。一律で武器と弾薬(の提供)は全部だめだというのは、日本の有事のことを全く考えてない理屈だ。

松山キャスター:
与党で防衛装備移転三原則の運用の見直しがいま協議されている。殺傷能力があるものを渡せるのかどうかという議論もある。原則をどこまで緩和するべきか。

佐藤氏:
二つの観点がある。日本有事、台湾有事も含めた、日本にとって有利な国際環境を作るために装備移転をする場合と、ウクライナのように国際法違反の侵略を受けている国に対する支援という二つの観点だ。殺傷兵器、非殺傷兵器というが、殺傷兵器の定義というものはない。実は今でも自衛隊法でいう武器が渡せないかというとそうではない。例えば、掃海艇。掃海艇は機雷を破壊するために機銃を載せており、武器だ。それをまったく渡せないというわけではない。防御的な兵器もある。ウクライナの無辜の市民が、ロシアのミサイル攻撃で犠牲になっている。防御的な対空火器や、対空火器の弾薬はいま本当に足りない。防空火器の弾薬の枯渇をロシアは狙っている。それに対して本当に支援しなくていいのか。では、日本が有事の時に、他の国から防空火器や防空火器の弾薬をもらわないで、東京や大阪、あるいは原発、これらを守るためのものは十分なのかというと全然足りない。ウクライナのように1年以上日本の有事が続いた場合、継戦能力を考えれば、自衛隊と日本の防衛産業だけで弾薬・武器が十分足りるかというと全然足りない。であれば、同盟国、同志国で日頃からこういう武器・弾薬についてはそういうやり取りができるようにストックしておくべきではないかということを含めていま(与党で)議論している。

松山キャスター:
防衛装備移転三原則では輸出できる装備品について、安全保障面での協力関係がある国に対して「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5つのカテゴリーに限定している。これも少し緩和してもよいという考えか。

佐藤氏:
これまでも時々の安全保障環境をにらみながら移転の基準や手続きを見直してきている。日本有事をにらんだ場合、あるいはウクライナの市民を守るということを考えた場合、見直してもいい。「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型は日本のシーレーン、海上交通の防衛のためだけのものだ。日本に有利な安全保障環境を作るのはシーレーン防衛だけではない。であれば、その5類型をシーレーン防衛以外にもあてはめるべきではないか。これもいま(与党で)議論している。

渡辺氏:
我々も、三原則の緩和について方向性を出すべくいま議論しているが、優先して守るべきはやはり人命だ。日本は戦争もなく75年以上過ぎてきた。実戦で使ったことのないものが果たして本当に世界から必要とされているのかどうか、ニーズがあるのかどうか。日本製だからこそ欲しい、メイド・イン・ジャパンのクオリティだからほしいと言われるのは、例えば、US-2救難飛行艇などがある。一番欲しいと言われるのは潜水艦だ。静謐性や溶接技術の高さがある。必要とされるものを一つの売り物として考えればいいが、実戦の実績のない我が国のものが果たしてどこまで本当に需要があるのか。今回の自衛隊車両100台規模の提供について政府は「ウクライナ側からのニーズだ」と説明している。オーダーメイド型ではないが、相手国が日本に何を望むかを把握してできる、できない、を判断すべきだ。

橋下氏:
ニーズに基づいた供与はそのとおりだ。もしウクライナが「弾薬がほしい」と、それも「日本から直接でなくてもいい」と言ってきたとしたら。例えば、NATO、欧州諸国がウクライナに弾薬を渡し、米国が欧州に補給し、米国が足りなくなった分を今回韓国が、それを補給するかどうか。ミサイルなど一線を越えるものはいけないとは思うが、このグループで武器を、弾薬ぐらいを、同志国でストックし回していくという考え方には反対か。

渡辺氏:
いや、別に反対とは言っていない。いま(党内で)議論中、検討中だ。他国に武器を渡すには当然、秘密保護協定などを結ぶなりして相当な信頼関係が必要だ。それこそロシア人義勇兵による「自由ロシア軍団」などに横流しされ、結局どこに行ったのかわからないというようなことには歯止をかけなければいけない。

佐藤氏:
他の国もなけなしの兵器を自国の国防のリスクを負ってまで(ウクライナに)渡しているのは事実だ。昔は米国は日本からは弾薬なんか要らないと言っていたが、いまは米海兵隊の総司令官が、日本有事の時は日本から弾薬をもらいたい、と言うぐらい、いま米国も非常に(弾薬が)足りない。与党協議の場で、ある有識者が言っていたのは、日本有事、特に台湾有事の時に「フィリピンに防御的な武器・弾薬を渡さなくて本当に大丈夫か、議論しているか」と。「もしもフィリピンが危ない状況になれば、次は沖縄だろう。そこまでしっかり考えてほしい」という指摘もあった。

日曜報道THE PRIME
日曜報道THE PRIME

今動いているニュースの「当事者」と、橋下徹がスタジオ生議論!「当事者の考え」が分かる!数々のコトバが「議論」を生み出す!特に「医療」「経済」「外交・安全保障」を番組「主要3テーマ」に据え、当事者との「議論」を通じて、日本の今を変えていく。
フジテレビ報道局が制作する日曜朝のニュース番組。毎週・日曜日あさ7時30分より放送中。今動いているニュースの「当事者」と、橋下徹がスタジオ生議論。