信号機のない横断歩道を歩行者が渡ろうとしているとき、一時停止するドライバーの割合は29.6%。JAF・日本自動車連盟の調査で明らかになった鳥取県のデータだ。全国で36位、全国平均を下回っている。この現状を何とか改善しようと、鳥取県警がユニークな動画でドライバーへの呼びかけを始めた。
ウサギやラクダが「一時停止」呼びかけ
鳥取県警が制作した1本の動画に登場したのは、1匹のウサギだ。

「ドライバーのみなさん、信号機のない横断歩道の手前ではとまってくださいね」と呼びかけるが、カメラに背を向けたり、横になってくつろいでみたりと自由気ままだ。

そして突然、画面に現れたのはラクダ。「ラクダもとまる鳥取県」と呼びかけた。
手作り感いっぱいのちょっとシュールな動画の制作を手掛けたのは、鳥取県警交通企画課の岩城雄司課長だ。うさぎ年にちなんで、職員が飼っているペットのウサギを主役に抜てきした。

「いい映像だと思いますね。かわいいですね、とっても」と自画自賛する岩城課長は、その出来栄えに会心の笑みを浮かべた。
7割のドライバーが一時停止せず…
この「ゆるい」動画の狙いを岩城課長に聞いた。
鳥取県警交通企画課・岩城雄司課長:
鳥取県では、まだまだ横断歩道の手前で止まってくれる車が少ないのかなと思って作った

JAF・日本自動車連盟によると、信号機のない横断歩道を歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止する車の割合は、鳥取県の場合29.6%で全36位、全国平均を約10ポイントを下回る低い水準にとどまっている。全国8位だったおとなり島根県の半分ほどの割合だ。

JAF鳥取支部・為廣光章さん:
一時停止しなければ「道交法違反」ということで、運転手は、反則金や違反点数の罰則がある

実際にはどうなのか。JAFの調査と同じように記者が横断歩道の手前に立ち、車が一時停止をするかを調べたところ、30分の調査で一時停止したドライバーは3割。7割のドライバーは止まらず、JAFの調査とは単純に比較はできないが、ほぼ同じ結果となった。

2022年、鳥取県では信号機のない横断歩道で交通事故が9件発生。このうち2件の事故で、歩行者が死亡している。
JAF鳥取支部・為廣光章さん:
歩行者は「車が止まってくれるだろう」と思い、渡り始める。車の運転手は「自分が行った後でも渡れるだろう」という思い違いが生じ、接触事故の危険がある
栃木県警の“成功例”手本に
こうした信号機のない横断歩道での事故を防ぐため、動画を活用して呼びかけ「一時停止率」が劇的に向上した例があった。

「横断歩道で車が止まらず、恋人同士が会えない」というシチュエーションをモチーフに動画を制作した栃木県警だ。

2018年の調査で、栃木県の「一時停止率」は0.9%で全国最下位に。その後、こうした動画を通じた県民への呼びかけが功を奏し、翌年には13.2%に急上昇したという。

動画を制作した栃木県警交通企画課の湯澤宙輝課長補佐は「『CMの内容おもしろかったね』『あそこの場所は全然止まらない』と、声をかけられることが増えた。関心を持ってもらえる取り組みをすることで、県民も自分の問題ととらえて行動してもらえる」と振り返った。

栃木県警はその後も続編を制作してPRを継続。2022年の調査では44.9%と、全国平均を上回るまでになった。栃木県の例をお手本に、鳥取県警もドライバーへの呼びかけに動画を活用し「一時停止率」向上をと意気込んでいる。

鳥取県警交通企画課・岩城雄司課長:
これから他県の取り組みを見習って、鳥取県もドライバーに止まってもらえるように頑張っていきたい
(TSKさんいん中央テレビ)