上皇ご夫妻は5月18日、5日間の京都・奈良への旅行を終えられた。89歳の上皇さまと、88歳の美智子さまの4年ぶりのご旅行から見えてきた、変わったものと変わらないもの。

そのウラ側をフジテレビ社会部の宮内庁キャップが紹介する。

久々に聞かれたご夫妻のお声 和やかな場面も

宮崎千歳 宮内庁キャップ:
今回の旅行のスケジュールを見ると、在位中とはかなり変わって予定が絞られています。新幹線での移動の負担を考え、移動日には極力予定を入れず、朝晩もゆっくりお休みになれるよう配慮されていました。急に暑くなり、ご夫妻の体調を心配する人も多かったと思いますが、逆にご夫妻は葵祭を見て、熱中症になった人のことを心配されていたそうです。そして、今回のご旅行では、久々にご夫妻のお声が聞こえました。

旅行のスケジュール。移動日には極力予定を入れず、朝晩もゆっくりお休みになれるよう配慮されていた
旅行のスケジュール。移動日には極力予定を入れず、朝晩もゆっくりお休みになれるよう配慮されていた
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美智子さま:
ここに組み込まれているんですね。

薬師寺にて
薬師寺にて

説明者:
このように簡単に解体することが可能です。

美智子さま:
全然、釘は使わずに。

「簡単に解体することが可能です」と説明を受け、「それは木の釘ですか?」と上皇さま
「簡単に解体することが可能です」と説明を受け、「それは木の釘ですか?」と上皇さま

上皇さま:
それは木の釘ですか?やはり金物よりも木の方が、長持ちするという考え方ですか?

これは奈良の薬師寺で、1300年前の創建当時から現存する最も古い東塔をどのように修復したのか、模型を使って説明を受けられた時のひとコマ。

宮崎千歳 宮内庁キャップ:
お代替わり以降、ご夫妻の肉声が、ここまではっきり聞こえたのは初めてだったんですが、上皇さまのやり取りの中で、会場の雰囲気がとても和やかになる場面があったんです。

会場の雰囲気が和やかになる場面もあった
会場の雰囲気が和やかになる場面もあった

上皇さま:
これはいつ頃できた模型なんですか?

説明者:
これは昨日できました。

上皇さまが「ああそう、新しいのね」と答えられると、笑いが広がった
上皇さまが「ああそう、新しいのね」と答えられると、笑いが広がった

上皇さま:
ああそう、新しいのね。

宮崎千歳 宮内庁キャップ:
意外な答えに笑いが広がり、こちらも思わず笑顔になりますよね。その後も、屋根の部分の構造や材質について質問を重ねられているんですが、このやりとりを聞いて、ご夫妻の知的好奇心は年齢を重ねられても全く変わっていないと感じました。以前と変わらないのは、支え合われるお姿もです。

階段で美智子さまを支え…歓声に何度も手を振られる

宮崎千歳 宮内庁キャップ:
15日、京都の大聖寺の玄関先で、バランスを崩された美智子さまを上皇さまがさっと手を差し伸べて、しっかり支えられていました。実は、この階段は一段の高さが低く、奥行きも狭かったので、登りづらかったと思います。

登りづらい階段でバランスを崩された美智子さま。上皇さまが手を差し伸べて、しっかり支えられた
登りづらい階段でバランスを崩された美智子さま。上皇さまが手を差し伸べて、しっかり支えられた

榎並大二郎キャスター:
上皇さまの心遣いと優しさがとても伝わってきますね。

側近によると、「普段の生活でも手をつなぎ、本当にお互いに支え合われている」そうで、段差に不安を感じられている美智子さまを上皇さまはごく自然に気遣われていた。

宮崎千歳 宮内庁キャップ:
思い起こせば、2012年の東日本大震災追悼式典で、心臓手術直後だった上皇さまを万が一の際に支えられるようにと、美智子さまは足元が安定する草履で和装を選ばれたんです。齢を重ね、お二人が一層お互いを信頼し、支え合われていることを改めて感じました。

また今回、印象的な場面だったのがこちらの映像。

葵祭の会場を後にされる上皇ご夫妻に歓声を送る園児たち
葵祭の会場を後にされる上皇ご夫妻に歓声を送る園児たち
上皇ご夫妻は名残惜しそうに手を振られていた
上皇ご夫妻は名残惜しそうに手を振られていた

宮崎千歳 宮内庁キャップ:
16日、葵祭の会場を後にされる際なんですが、観客の歓声や拍手に、名残惜しそうに手を振られています。その後も何度も、振り返って手を振られていました。実は美智子さまはお代替わり以降、会釈はされても、以前にように手を振られることはなかったんです。今回、行く先々で「上皇さま~美智子さま~」という歓声に丁寧に応えられていて、コロナ禍で外出を控え、交流の機会がなかっただけに、ご夫妻は歓迎をうれしく思われたそうです。

コロナ禍で外出を控え、交流の機会がなかっただけに、ご夫妻は歓迎をうれしく思われたという
コロナ禍で外出を控え、交流の機会がなかっただけに、ご夫妻は歓迎をうれしく思われたという

今回の旅行では、長く心を寄せてこられた皇室ゆかりの場所を訪ねられた。注目のウラ情報は「ゆかりの場所でうれしい再会」だ。

昭憲皇太后のドレスに再会 修復への思い

宮崎千歳 宮内庁キャップ:
訪問された中宮寺も大聖寺も皇室にゆかりがあり、ご夫妻が長年支援を続けてこられた場所です。京都の大聖寺では、5年間かけて修復された明治時代の皇后、昭憲皇太后のドレスをご覧になりました。ドレスなのに、なぜ長方形の布が置かれているのか不思議に思いませんか?

榎並大二郎キャスター:
以前、このニュースを扱ったんですが、どういう部分なのかなと。

ドレスなのに、なぜ長方形の布が置かれているのか…
ドレスなのに、なぜ長方形の布が置かれているのか…
この布は「トレーン」という腰につける引き裾
この布は「トレーン」という腰につける引き裾

宮崎千歳 宮内庁キャップ:
実は、このドレスは「大礼服」といって最も格式の高いドレスで、この布は「トレーン」という腰につける引き裾なんです。全長3.4mあり、金モールやスパンコールなどで豪華な金属刺しゅうが施されているので、2人でも持ち上げられないほど重いそうです。
130年の年月でモールが外れるなどかなり劣化が進んでいて、5年かけて修復し、今は重さで傷まないようにこうして平置きされています。

2人でも持ち上げられないほどの重さ
2人でも持ち上げられないほどの重さ
130年の年月でモールが外れるなど劣化が進んだ。修復後、重さで傷まないよう平置きされている
130年の年月でモールが外れるなど劣化が進んだ。修復後、重さで傷まないよう平置きされている

榎並大二郎キャスター:
なぜ、明治の皇后のドレスが京都のお寺にあるんですか?

宮崎千歳 宮内庁キャップ:
この大聖寺は、皇族の女性が出家して住職を務めてきた「尼門跡寺院」です。昭憲皇太后が当時の門跡に心を寄せて大切なドレスを贈られたと考えられています。美智子さまは30年前に、尼寺にある貴重な文化財の修復プロジェクトがあることを知って心を動かされたそうです。それ以来、支援を続け、今回のドレスの修復にも寄り添ってこられました。

宮崎千歳 宮内庁キャップ:
今回、ご夫妻はこのトレーンの周りをうなずきながら1周し、「大変なお仕事をなさいましたね」と完成をよろこばれていたそうです。実物を目にし、文化財を守ることができたことを実感されたのだと思います。プロジェクトのメンバーは「ご支援がなければできなかった」「ご夫妻に見ていただき、これからの励みになる」と話していました。

宮崎千歳 宮内庁キャップ:
コロナ禍がなければ、この3年、各地をゆっくりと旅行される機会があったはずでしたが、そうした機会がないまま、ご夫妻は89歳と88歳になられました。今回の旅行は、ご夫妻が希望されたというよりは、久々にお出かけになれるよう、側近が皇室ゆかりの場所を提案した形だったそうです。今回の旅の思い出が、ご夫妻の会話を一層豊かにすると思いますし、またこうした旅を楽しまれると良いなと思いました。

(「イット!」5月19日放送)