全国で相次ぐマイナンバーカードのトラブル。多くの国民が不安を感じていた個人情報の漏えいが現実となっている。
利便性が向上も…「マイナ保険証」に“別人の情報”
「身分証明書」としての役割のほかにも、住民票を交付するサービスや保険証としても利用でき、利便性が向上しているマイナンバーカード。
この記事の画像(17枚)会社員(30代):
住民票の取得が楽になったな
大学生(18歳):
病院に行って保険証を忘れたときにマイナンバーカードが出せたので、その時は便利でした
現在、カードを申請している国民は約76%にものぼっている(2023年5月14日現在・総務省)。
岸田文雄首相(政府広報オンライン動画):
マイナンバーカードは豊かなミライを実現するためのデジタル社会のパスポートです
マイナカードに様々な情報をひも付け、国が利便性の良さを強調する中、いま大きな問題が次々と起きている。マイナカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」を利用した際、他人の情報がひも付けられていたというのだ。
厚生労働省によると、情報の誤登録は約7,300件にものぼっているという。
さらにマイナカードを巡っては、住民票の写しなどを受け取れるサービスでも誤って他人の証明書が発行される問題が、全国的に相次いでいる。
病院が恐れていた事態 全国で相次ぐ
北九州市小倉北区にある病院。受付にはマイナンバーカードのカードリーダーが設置されている。この病院がマイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」が読み取れるカードリーダーを導入したのは、2023年2月だった。
小倉記念病院 沼田晃男さん:
利用者は、導入当初は1日1~2人だったんですけど、4月の実績で230人なので、1日10人強ぐらいになると思います
「マイナ保険証」は、カードリーダーにマイナカードをかざし、顔認証か暗証番号を入力するだけで、自動で確認が終了。病院側は、患者の過去の受診記録や処方された薬の情報が分かるようになっている。
小倉記念病院 沼田晃男さん:
患者さんも病院の方も、非常に手間が減少したんじゃないかと思います
患者側も病院側も手続きを簡素化できるメリットがあるが、情報がデジタル化されたことで不安も生じている。
小倉記念病院 沼田晃男さん:
現在は診察情報とマイナンバーが連動していて、そういった情報をもとに診察が進んだときに、別の患者さんの情報で診察が進んで、何かしら、よくない結果に結びつくのではないかなと…
懸念されているのは、「マイナ保険証」に別の人の情報がひも付けられていた時への不安だ。命に関わる大事な情報を扱う病院にとって、恐れていたことがいま、全国で相次いでいる。
30代女性:
すみません、マイナンバーでやろうと思ったら、違う人の名前が出てくる
医療機関スタッフ:
本当ですね。これは…、役所の問題ですね
30代女性:
違う人がひも付いているってことですか?
医療機関スタッフ:
そういうことですね
病院を訪れた30代女性が、医療機関で「マイナ保険証」を使用すると、別人の名前や情報が表示されたという。
厚生労働省によると、医療医療機関などで利用したマイナ保険証に別の人の名前など他人の情報がひも付けられた誤登録が約7,300件あり、これが原因で別の人に医療情報を閲覧されたケースが5件確認された。
その原因は…。
加藤勝信厚労相:
入力時におけるミスがあって、マイナンバーカードに、それ以外の人の情報がくっついていたというケースだと認識しておりまして…
厚生労働省は、医療保険を運営する健康保険組合などにおいて、マイナカードと健康保険証をひも付ける際に入力ミスがあったとみている。
マイナ保険証に別人の情報が表示された30代女性は、国が早急に対策を取らないと大変な事態になると感じていた。
30代女性:
薬局でお薬をもらうときに、飲み合わせが悪いと、家に帰ってから体調が悪くなったら取り返しがつかないと言われ、この保険証の医療情報のひも付け間違いだけは命に関わる問題だと
30代女性:
これがいかに重要なことなのか、国の方が軽視している
コンビニ証明書でも誤交付 久留米市では一時停止に
マイナカードを巡っては、さらに別のトラブルも発生し、その影響が福岡にも及んでいる。
久留米市役所を訪ねてみると―。
久留米市・市民課 山下泰利さん:
全国で起きているシステムの不具合等に関しまして、同じ会社のシステムを使っておりまして、その対応が必要となっております
マイナカードを使い、コンビニエンスストアで住民票などの交付を受けられるサービスでも、他人の証明書が交付されるトラブルが相次いだ。
総務省によると、住民票などの誤交付は14件、さらに印鑑証明でも同一人物の古い印鑑証明が11件誤って交付されていて(2023年5月18日現在)、いずれも「富士通Japan」のシステムが原因だったという。
久留米市では、証明書を誤って交付する不具合は発生していないが、問題となっている「富士通Japan」のシステムを採用しているため急きょ、点検することになった。
久留米市・市民課 山下泰利さん:
コンビニで交付される住民票、印鑑証明書、あと課税証明書、そういったものを止めました
住民票などの証明書のコンビニ交付を一時停止し、システムの点検にあたったという。点検の結果、久留米市のシステムには問題がないことが確認されたため、点検の翌日にはコンビニ交付を再開した。
久留米市・市民課 山下泰利さん:
市民のみなさまのサービス向上につながる利便性のいいサービスですので。こういったかたちになって残念というか、そういう気持ちはございます
抱いていた不安が現実になったマイナカード。銀行口座など他人には知られたくない個人情報もひも付いているだけに、不信感が増す事態を招いている。
これだけ個人情報が漏れ出す状況は、マイナ制度の根幹を揺るがす事態とも言える。政府は、徹底した検証を進めるべきだ。
(テレビ西日本)