チャットGPTなど生成AIは急速に進歩している。
生成AIはテキスト、画像、動画など様々なコンテンツを手軽に生み出すことができる一方で、クリエイターの9割以上がAIに対し、不安を感じているという。

フリーの俳優、音楽家、声優らでつくる一般社団法人「日本芸能従事者協会」が5月8日から「AIリテラシーに関する全クリエイターのアンケート」を行なっているのだが、5月15日に2万5560人が回答した中間集計を発表した(※アンケートは現在も継続中)。

その結果、「AIによる権利侵害などの弊害に不安がありますか?」の質問に対して、94.1%の人が不安があると回答したのだ。

AIによる権利侵害などの弊害に不安がありますか?(画像提供:日本芸能従事者協会)
AIによる権利侵害などの弊害に不安がありますか?(画像提供:日本芸能従事者協会)
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また「AIの推進でご自身の仕事が減少する心配はありますか?」という質問に対しては、58.5%があると回答した。

AIの推進でご自身の仕事が減少する心配はありますか?(画像提供:日本芸能従事者協会)
AIの推進でご自身の仕事が減少する心配はありますか?(画像提供:日本芸能従事者協会)

そして、具体的にどんな不安があるかを聞いたところ、最多は「勝手に利用される」の91.9%で、「権利がなくなる」が64%、「技術が奪われる」が62.4%が続いた。その他、50%以上が不安を抱えていたのは、59.6%の「やる気が削がれる」、50.8%の「報酬が安くなる」、50.2%の「仕事が減る」だった。

どんな不安がありますか?(画像提供:日本芸能従事者協会)
どんな不安がありますか?(画像提供:日本芸能従事者協会)

すでにAIに権利が侵害されている例もアンケートから明らかになっている。

例えば、「イラストをAIに盗作された」「風景写真をAIの学習用データに使われた」「海外のAI生成システムで故人(親族)の写真が利用され、卑猥なコラージュが生成された。」「自分が公開した音声(二次利用・配布禁止)を勝手にAIに学習させ、配布・販売された」など。

また、AIについて思うことや国への要望について聞いたところ、5657人が法整備または法による規制を求めていることがわかった。中には、「抜け道だらけで法整備が整っていない」「創作者の尊厳が軽んじられないようにしてほしい」「世界的な取り決めをして欲しい」といった意見もあった。

クリエイターなどすでに多くの職種で実害が出ているようだが、今回、アンケート調査した日本芸能従事者協会は今後どう活動していくのか?世界ではどんな動きがあるのか?

代表理事の森崎めぐみさんに詳しく話を聞いてみた。

知らない間に“自分の作品”“声”“姿”が使われている

――今回、AIリテラシーに関するアンケート調査を行った理由は?

当団体は、 東京労働局に承認された労災保険センターと連携しています。毎年「労災と安全衛生のアンケート」を実施しています。その回答にAIに関する不安が書きこまれました。これをきっかけに関係者にヒアリングしたところ、すでに被害があるようでしたので緊急に実施した次第です。


――9割を超える人がAIに不安を感じていることをどう思う?

知らない間に、自分の作品や声、姿が使われていると感じている方が多くいらっしゃる現状です。この状況では無理もないと思います。

※イメージ
※イメージ

――特に不安を抱えている人が多い業種はある?

どの業種も多いと思います。


――実際にAIに使われた事例を見て、どんなことを感じた?

時間や手間をかけて生み出した作品や文章または自分自身の姿や声が、知らないうちに変容しているのを見つけた時の思いは、筆舌に尽くしがたい喪失感があると思います。どんな分野のクリエイターにとっても、あってはならないことで、本来ならば未然に防いでほしかったです。

海外事例などを学びながら、包括的に検証し啓発

――5657人が法整備または法による規制を求めていることについて、どう感じている?

当然の思いに感じます。法整備は大ごとだとは思いますが、このままではいけないと思います。


――世界で対策は進んでいる?

2005年ユネスコ文化多様性条約ではデジタル時代のアーティストの報酬の保護などに触れており、欧州議会が5月11日に AI Act: a step closer to the first rules on Artificial Intelligence (AI規制案)を承認したプレスリリースが出ています。韓国の連携団体からも、昨年から政府の取組みがあると聞いています。


――協会として今後、どのような活動を行っていく?

私どものHP「私たちについて」にあります通り、「私たちが考える理想の芸能生活は、社会保障のサポートを受けながら、身体と精神の健康を保ち、まっとうな収入を得て、継続的に仕事ができる生活です。さらに安全に芸術・芸能活動に勤しむことができる環境づくりを、大切に考え実践していきます」、この理念のもと、今回のAIの問題についても、国際的な基準や海外事例などを学びながら、包括的に検証し、啓発して参りたいと思います。



AIは業務の効率化などのメリットがある一方で、クリエイターらの権利を侵害するという課題も出始めていた。どのようにAIを活用していくべきなのか、法整備を進めていくなど早急な対応が必要なのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。