19日開幕したG7広島サミット。

世界各国のメディアが取材拠点とする、国際メディアセンターでは広島名物のお好み焼きが振る舞われている。

20日には、岸田総理の妻・裕子さんが主催する首脳夫人などとの昼食会でも作り方を実演するなど、“お好み焼き外交”が予定されている中、広島県民のソールフードのルーツなどについて、「お好み焼アカデミー」の松本重訓さんに話を聞いた。

「一銭洋食」がお好み焼きの前身

ーー「お好み焼アカデミー」はどういう場所?
「お好み焼アカデミー」は、2014年に設立して9年目ですが、広島のソールフードであるお好み焼きの調査・研究、さらに海外に普及していくためのお好み焼きにたずさわる人たちが一緒になって作り上げた財団です。

「お好み焼アカデミー」松本重訓さん
「お好み焼アカデミー」松本重訓さん
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ーー広島のお好み焼きのルーツは?
安土桃山時代に千利休が考案したお茶菓子「麩の焼き」に遡るといわれますが、直接的には、大正時代あたりに子供のおやつとして親しまれていた「一銭洋食」が、現在の広島お好み焼きの前身といえます。(※ルーツについては諸説あり)

小麦粉を水で溶いて薄く焼き、ネギや削り節などを乗せて食べる「一銭洋食」は、その後全国に広がりました。

そんな中、昭和20年8月、原子爆弾が投下され焼け野原となった広島は、食料難に陥りました。

人々が餓えに苦しむ中、アメリカから小麦粉(メリケン粉)が支給され、そこから試行錯誤してできたのが、今のお好み焼きです。

昔の人は食材もさまざまなものをアレンジして作っていたと思われるので、通常のお好み焼きと違って「重ね焼き」になっています。それはいろいろな食材をトライしながら作っていった証だと思います。

戦地から帰った人が見付けやすいように

戦後、アメリカ軍からの配給物資の“メリケン粉”を使い、作り始めたという広島のお好み焼き。

広島県内ではコンビニの数よりもお好み焼き店の方が多いという。

また、店の名前は「いっちゃん」や「みっちゃん」など多くに「ちゃん」が入っているのも特徴だ。そこには戦後をたくましく生き抜いた広島の人々の思いがあった。

ーー「〇〇ちゃん」という名前が多い理由は?
1つは、広島の人は相手のことを「〇〇ちゃん」と呼ぶことが多く、親しみを持ってもらうためです。

「お好み焼アカデミー」より
「お好み焼アカデミー」より

また、広島には原爆が投下され、働くところがなかなかありませんでした。

戦争や原爆で夫を亡くした女性が、戦後生計を立てるために家を改装して店を開くことが多くあり、「〇〇ちゃん」と親族の名前を付ければ、戦地から帰ってきた人が見付けやすいからなど、諸説あります。 

G7各国をイメージしたお好み焼きも

広島の人々の戦後復興の象徴となったお好み焼き。

G7に向けて「お好み焼アカデミー」では、おもてなしの気持ちを伝える思いで、参加各国をイメージしたメニューを開発した。

「お好み焼アカデミー」のHPより
「お好み焼アカデミー」のHPより

ーー各国のお好み焼を考案した理由は?
お好み焼アカデミーは今回広島のアンバサダーに選ばれました。

そこで、G7に参加する各国のそれぞれの国の庶民的な食材を使ったメニューを作ると喜ばれるのではないかと思い、母国の食材を使ったお好み焼きを作りました。

ーー評判は?
広島ゲートパークのイベントで2日間ほど販売しましたが、外国人の方が作り方を動画で撮ったり、各国のお好み焼きをSNSに上げたり、地元の方よりも海外の方の方が興味を示してくださいました。

G7の首脳に振舞われるのは、広島焼のスタンダードな「肉玉そば」です。
中にはコイワシの揚げたものを入れたものをお出しします。