離島医療を描いた漫画でドラマや映画にもなった「Dr.コトー診療所」のモデルとなった医師に、鹿児島・薩摩川内市から感謝状が贈られた。

ドラマや映画は沖縄・与那国島でロケが行われたが、実際にモデルの医師が活躍したのは東シナ海に浮かぶ鹿児島県・薩摩川内市の甑島だ。

39年島民に寄り添ってきた瀬戸上医師

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5月1日、薩摩川内市長から感謝状が贈られたのは医師・瀬戸上健二郎さん。1978年、37歳の時から39年間、甑島の下甑手打診療所で、内科から外科、産婦人科に至るまでたった一人でカバーし、島で手術までできるようになった。

離島医療に全力を傾けるその姿が注目され「Dr.コトー診療所」のモデルとなったのだ。

贈呈式で瀬戸上さんは「非常にありがたい。今までの経験を少しでもお役に立てたらといいなという思い」と喜びを語った。

わら草履を履いて上映会へ

贈呈式前日の4月30日、瀬戸上さんは6年ぶりに甑島を訪れた。2017年に島を去るまでの39年間、島民の命を預かる医師として東奔西走してきた瀬戸上さん。

船を下りた瀬戸上さんを見つけた島民が次々に駆け寄ってきた。「いいですよね、落ち着きます」と、瀬戸上さんも笑顔に。

2023年で82歳になった瀬戸上さんは、鹿児島市で暮らしている。今回、島を訪れたのには理由があった。島で初めての映画上映会に招かれたのだ。

会場の手打小学校体育館では、飾り付けられた大漁旗が雰囲気を盛り上げているが、肝心の映写機がない。すると袋からゲーム機を取り出す関係者の姿が。ブルーレイの再生機がなく、かわりにゲーム機を使うのだという。
上映されるのは、もちろん「Dr.コトー診療所」だ。体育館の周囲には、かつて瀬戸上さんの診察を受けた人たちが大勢集まり、到着を待ち構えていた。

「先生のおかげで20年前ヘリコプターで飛ばされた(救急搬送された)けど、いまだに元気です」笑顔で話しかける男性。思わずハグする女性もいた。島民にとって瀬戸上さんは今でも大恩人なのだ。

島民たちが用意していたわら草履
島民たちが用意していたわら草履

島の人たちの歓迎を受けた瀬戸上さん。ドラマにも登場する「わら草履」、瀬戸上さんは実際に履いていたという。そのわら草履を履いて体育館に入場し、こう挨拶した。

瀬戸上健二郎さん:
いっときでもいいから、(下甑島の)手打(地区)に応援に来てくれないかということで、お世話になりました。家内にはいつも「あと半年、あと半年」と嘘をついてだまし(笑)、気がついたら39年たっていました

映画の上映が始まると、スクリーンに映し出されるドラマを、300人もの島民たちが食い入るように見つめた。

映画では吉岡秀隆さんが演じる一つ一つのシーンに、訪れた人たちは、瀬戸上さんとの思い出を重ね合わせた。ハンカチで目頭を押さえる人も。134分の上映が終わると、会場は温かい拍手に包まれた。

いつまでも心に残り続ける

瀬戸上健二郎さん:
地域医療の主人公、主役は住民一人一人だと思います。そういう目で見れば役者が多いです、島には。誰と会っても楽しい。だから、島作り、村作りに一生懸命になって、そして今がある

薩摩川内市では2023年からふるさと納税などを活用した「Dr.コトー診療所基金」を設置し、甑島の医療体制の充実を図ることにしている。

39年間、島の人たちの命を守り続けた瀬戸上さん、その「Dr.コトー」の物語はいつまでも島民の心の中で生き続ける。

(鹿児島テレビ)

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