地域に必要な病院を作る。それは、もはや医師だけの仕事ではない。40年ぶりに東広島市にできた産婦人科医院。その開業を全面的に支援したのは「薬局」だった。全国から注目される医療コンサルのビジネスに迫る。

40年間、個人の分娩施設は1軒のみ

2023年3月、東広島市西条町のショッピングモールの敷地内に産婦人科医院がオープン。

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実は、この地域で分娩(ぶんべん)ができる個人の医療施設はこれまで1軒しかなかった。

占部産婦人科医院・占部智 院長:
東広島市では40年前に馬越先生が西条で開業されて以来、40年ぶりの新規開院になります

厚生労働省によると、1996年の出生数は約120万人。分娩施設はおよそ3,991軒あった。しかし2020年には、出生数は約84万人に減少。分娩施設も2,070軒まで減っている。

つまり、四半世紀の間に出生数は3割ほど減少し、分娩できる医療施設は約半分になった計算だ。

占部産婦人科医院・占部智 院長:
今後、この地域にお産の施設がなくなると、みなさんが困る

病院の設立を考え始めた占部先生だが、開業を妨げる大きな壁が立ちはだかった。

占部産婦人科医院・占部智 院長:
開業を考えていた時期が、ちょうどコロナが流行し始めたころで先行きの見えない状況でした。コロナ禍で産み控えがあったり、お産の数も減っている中、かなりストレスのある開業準備でした

調剤薬局が病院の開業を支援

そんな占部先生に力強い味方が現れた。呉市に本社を置き、広島・岡山・島根の3県に44店舗の薬局を展開する「マイライフ」が開業を支援。

マイライフ・糸賀誠 社長:
東広島市はお産施設が非常に少ない。この度も40年ぶりの開業で、地域の社会問題だった課題をわれわれは解決したと思っています

呉市を中心に地域医療を支援してきたマイライフは、1997年に1軒の調剤薬局からスタートした。

マイライフ・糸賀誠 社長:
処方権が強くて調剤権が弱い時代だったので、やりたいことが一つもできなかった。これをわれわれは変えたかった。そしてトライアルしたかった

マイライフ・糸賀誠 社長
マイライフ・糸賀誠 社長

糸賀社長は「調剤薬局が病院の開業を支援する」決意をした。

マイライフ・糸賀誠 社長:
まず、いい薬局にするためにいいクリニックを作ろうと。いい仲間を探して医療コンサルを始めました。全国すべての医療コンサルのやり方を研究して、まだやっていないことをやれば新しいやり方を独自に編み出せると考えました

マイライフが展開する「オール薬局」
マイライフが展開する「オール薬局」

全国が注目するビジネスモデルへ

糸賀社長は、開業を支援する「医業経営コンサルティング事業」をスタート。設計事務所や税理士との打ち合わせ、建築、ホームページや看板の作成などすべての開業準備に付き添い、一元管理している。このビジネスモデルは全国から注目されていて、視察に来る企業も多いという。

マイライフ・糸賀社長(左)と占部産婦人科医院・占部院長(右)
マイライフ・糸賀社長(左)と占部産婦人科医院・占部院長(右)

マイライフ・糸賀誠 社長:
われわれ独自の開業支援のやり方なので、国内でもこのコンサルはわが社しかないと思っています

マイライフ・糸賀誠 社長
マイライフ・糸賀誠 社長

マイライフは薬局事業と医業経営コンサルティング事業のほかに、「タニタカフェ」とコラボし健康にこだわった飲食事業も手がけている。
社会情報・メディア論が専門で番組コメンテーターの匹田准教授は次のように意見を述べた。

TSSライク コメンテーター 広島大学大学院・匹田篤 准教授:
これまで薬局は医師の言うことを聞くという主従関係があった。ところが、医師に何かを提案する。しかも、その地域のことを医師よりもよく知っている人たちが開業を支援する。今回の東広島市西条町のケースで言えば、若い世代が増えていること、県の中心にあって立地がいいこと、日常的に利用するショッピングセンターがあることなどを見据えた上での提案。こういうビジネスが、これから先も増えてほしいですね

野菜たっぷりのカフェメニューと匹田篤 准教授
野菜たっぷりのカフェメニューと匹田篤 准教授

26年前の悔しさと熱意で挑戦を続ける糸賀社長。病院と薬局の関係は、地域が必要とする医療とともに変化している。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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