現役時代、陸上短距離の日本代表として2大会連続でオリンピックに出場したの高瀬慧さん。2021年にスパイクを脱いだ高瀬さんはいま、陸上を「する」楽しさ、そして「見る」楽しさを伝えようと新たな挑戦を始めている。
スプリンターの新たな挑戦
この記事の画像(20枚)静岡市出身・高瀬慧さん、34歳。陸上の短距離選手としてロンドン、リオと2大会連続でオリンピックに出場した。
2021年に引退してからは、子供たちへの指導をはじめ陸上の楽しさを伝える活動をしている。そんな高瀬さんは、2023年5月の静岡国際陸上で新しい取り組みにチャレンジした。
高瀬 慧さん:
静岡県の陸上界を盛り上げるじゃないですけど、少しでも自分が育った県で恩返しをしたいなと
1つは正式種目ではなくオープン種目としての4×400mリレーの開催。オリンピックに出場経験のある仲間などに声をかけ、そして自らも再び走ることで、年齢を重ねても「競技に取り組む楽しさ」を伝えたいと考えた。
そして、もう1つは、「見る楽しさ」を感じてもらう応援だ。陸上を「する」、そして「見る」。それぞれの視点で楽しさを伝えたいと考えた高瀬さん。
仕事の合間を縫って週1回の練習に加え、静岡陸上協会との打ち合わせを重ねてきた。
静岡国際陸上で踏み出した第一歩
2023年5月3日、本番の日を迎えた。
現役時代は試合前にしっかり眠れたという高瀬さんだが、前日は緊張してなかなか寝付けなかったという。
大会開始を告げる最初のレースは4×400mリレー。大会全体の盛り上がりを左右するだけに高瀬さんの表情もこわばっていた。
正式種目ではないとはいえ、真剣勝負。観客たちの声援に背中を押され、出場した人たちも白熱したレースを繰り広げていく。
1位でゴールしたのは、400m走の日本選手権11連覇の実績を持つ金丸祐三さん率いるチーム「金丸世代」。タイムはマスターズ(M35)日本記録を更新する3分17秒93だった。
高瀬さんが率いるチームは、チームメイトのケガで棄権となったが、高瀬さんは安どの表情を浮かべていた。
高瀬 慧さん:
自分も走っていたので、盛り上がっているか不安だったんですけど、あれだけの歓声と盛り上がりを感じました。でもここからが本番です
レースが終わると、休むことなく観客席へ向かった高瀬さん。競技の解説をしながら、集まった応援団とともに、率先して応援し、「見る」楽しさを伝えていた。
観客席から声援を送っていた人たちからは、「有名な選手と応援ができて楽しかった。」「選手も応えてくれるので最高」と評判も上々だった。
観客が楽しみ選手の力に
陸上競技では珍しい、観客たちの息のあった応援。観客たちが楽しむことはもちろん、選手に大きな力を与えていた。
女子200mで高校歴代3位の好記録を出した富士市立高校・小針陽葉選手にもその声は届いていた。
小針陽葉選手:
小針コールが聞こえてきて、すごく力になったしうれしかったです
選手に力を与え、観客を喜ばすことができた今回の取り組み。高瀬さんは決意を新たにしていた。
高瀬 慧さん:
静岡だったらエコパが満員になるのが、今回やってみて改めて目標になったので、観客の人たちを動員させたい。それをするためにはまずはきょう来てくれたお客さん方を楽しめる雰囲気を作っていきたいと思うので、何年かかるかわからないですけど地道に活動していきたいと思います
陸上界のために走り始めたスプリンター。スタジアムを満員にするために高瀬さんの挑戦はまだ始まったばかりだ。
(テレビ静岡)