2023年5月12日から、熊本でビーチサッカーの全国大会が行われる。将来のプロリーグ化を目指し、国内最高峰のチームが集まる「トップカテゴリー強化リーグ」。ビーチサッカーに人生をかける熊本のチームと選手たちを取材した。
全国大会が熊本で始まる
はだしで試合をする「ビーチサッカー」は、「砂の上の格闘技」とも呼ばれ、ブラジルやヨーロッパでは、サッカーと同じくらいの人気を誇る。

菊陽町で活動する「アヴェルダージ熊本」は、現役の日本代表も在籍する強豪チームだ。

アヴェルダージ熊本・坂田淳監督:
試合を見に来ていただいて、「よし、あすからも頑張ろう」と思える空間にしたいなと思ってます。(全国大会は)前年度準優勝だったので、優勝を目指しています
鋭い動きでゴールを狙う木船祐樹選手(29)は合志市出身。全国大会で得点王にも輝いた実力派で、現役の日本代表選手でもある。5月12日から熊本で始まる全国大会に闘志を燃やしていた。

アヴェルダージ熊本・木船祐樹選手:
熊本でこういった日本のトップレベルの試合ができるのが、選手としてうれしいですし、喜びをプレーで表現できたらと思っています
「ビーチサッカーの面白さを全国に発信したい」
木船選手は普段、合志市にあるフィットネスジムでインストラクターとして働いている。

アヴェルダージ熊本・木船祐樹選手:
膝がまっすぐで、いい感じですね。30kgも余裕そうですね、さすがです。強くなりましたね
プロ選手とはいえ、日本ではビーチサッカーだけで生活していくのはまだまだ難しい状況。多くのプレーヤーが、仕事をしながら競技を続けている。
ーーパソコン関連は得意?

アヴェルダージ熊本・木船祐樹選手:
いや、めっちゃ苦手でした。全然まだ人並みにもできないと思うんですけど、今の会社に入って、少しずつ打つのも速くなったかなと思います
海外のチームから期限付き移籍のオファーも届いているという木船選手。日本でもビーチサッカーをもっとメジャーなスポーツに変えていきたいという夢がある。

アヴェルダージ熊本・木船祐樹選手:
自分自身も、サッカー、フットサルといろいろ経験してきましたけど、ビーチサッカーが胸張って「一番面白い」と伝えられる自信もありますし、熊本から、そして九州、全国っていうふうに、もっともっと発信していけるように頑張っていきたいと思っています
元日本代表選手に突然の病が襲う
2023年2月、1組のカップルが熊本市内で永遠の愛を誓った。アヴェルダージ熊本の中原勇貴選手と妻の舞香さんだ。

元日本代表としても活躍し、海外や全国を転戦していた中原選手。その彼を突然の病が襲ったのは、2021年のことだった。

下された診断は脳腫瘍。それも「グレード4」という最も重い状態。医師から告げられた余命は、5年から10年という厳しいものだった。

アヴェルダージ熊本・中原勇貴選手:
自分がこの病気がわかったときに、もう、ちょっと(交際は)無理やなと思って、「別れよう」という話もしたんですけど、それでも「ついていきたい」って言ってくれた

中原選手の妻・舞香さん:
病気って聞いて動揺もしたし、びっくりもしたけど、例えば手術をしたあとに、体に障がいが出たとしたら「どうやって支えていこうかな」という(伴侶としての)対処しか考えなかったから、「離れる理由はないな」と思った

命の危機に立たされながらも、つらい手術や闘病生活を乗り越えてきた2人。仲間と家族に見守られながら、新たな人生へと踏み出す。
支えてくれた家族
アヴェルダージ熊本・中原勇貴選手:
(奥さんのウエディングドレス姿が)きれいです

中原選手の妻・舞香さん:
手術後はこの姿をあまり想像できなかったんですけど、実際にきょうを迎えられて「本当に良かったな」って思います

アヴェルダージ熊本・中原勇貴選手:
そうね。ここまで来られて良かったなと思います

舞香さんが働く小学校の児童からのビデオメッセージ:
これからも勇貴さんとお幸せに!
中原選手の妻・舞香さん:
お父さん・お母さんなりに、これからのこと、うれしさの半面、心配していたこともわかっています。「舞香が決めたことだから」と全てを受け入れてくれてありがとう

中原選手の妻・舞香さん:
勇貴さんのお父さんとお母さん。初めて一緒にゴルフに行ったとき「(交際は)手術まででいいから」と私の将来のことまで心配して声をかけてくれたお義父さん。私が「今とても幸せだよ」と話すと、涙を流してくれるお義母さん。どんな試練も諦めず、2人で乗り越えてみせます。勇貴さんとなら乗り越えられると思います。2人で力を合わせて、すてきな家庭を築いていきたいと思いますので、温かく見守っていてください

今、妻・舞香さんのおなかには新しい命が宿っているという。

アヴェルダージ熊本・中原勇貴選手:
抗がん剤とか放射線治療が終わって、やっと子どもがつくれる体に戻ってきたので、(病院の)先生からも了承いただいて、そこでできた命だったので、考えてた以上にものすごくうれしかったし、楽しみです

自分と家族の人生を背負い、ビーチを駆ける選手たち。アヴェルダージ熊本が悲願の日本一を目指す全国大会は、5月12日から3日間、菊陽町で行われる。
(テレビ熊本)