観光まちづくりで「世界一」に輝いた、「伊予の小京都」とも呼ばれる愛媛・大洲市。一時は町並みが荒廃するピンチに立たされながらも、持続可能な観光地として生まれ変わった「町づくり」の仕組みとは?

歴史的な町並みに新たな観光スポットが続々!

愛媛県の南西に位置する大洲市。市内を肱川が縫うように流れる水郷で、江戸時代は6万石の城下町としてにぎわっていた。

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鈴木瑠梨アナウンサー:
風光明媚な観光地として知られ、「伊予の小京都」とも呼ばれる大洲。散策も風情豊かな人力車で楽しめます

テレビ愛媛・鈴木瑠梨アナウンサーが人力車でめぐるのは、大洲城のふもとの肱南地区だ。肱南地区は、明治から大正にかけて木ろうや製糸業で栄えた。今も当時をしのぶ建物や碁盤の目のような町割りが残っていて、ノスタルジックな雰囲気が人気の観光エリアとなっている。

鈴木瑠梨アナウンサー:
人力車でめぐるのも心地よい風を感じて気持ちが良いですね

人力車の車夫・新田伝弥さん:
歩く目線と違うので、非日常を味わえるので、人力車、みなさん喜んでいただけますね

鈴木アナが訪れたフルーツサンドの専門店「うみとカモメ」の看板メニューは、イチゴやキウイなど7種類の果物を使った「MIXサンド」で、旬のおいしさがぎゅっと詰まっている。

鈴木瑠梨アナウンサー:
サンドイッチの断面、キラキラして宝石みたいです

もともとはキッチンカーから始まった人気店で、2022年11月、この肱南地区に記念すべき1店舗目を出店した。

うみとカモメ・後藤美和オーナー:
地元の方がとても喜んでくれて、「大洲に出店してくれてありがとう」という声をたくさんいただきまして、私もすごくうれしく思っております

持続可能な観光地「世界一」に

鈴木瑠梨アナウンサー:
この通り、古い建物が並んでいますが、建物を再活用しているんですね

人力車の車夫・新田伝弥さん:
古民家を再活用している取り組みが認められまして、大洲市が世界一になりました

鈴木瑠梨アナウンサー:
世界一!

2023年3月、大洲市はオランダのNPO法人が選ぶ、世界の持続可能な観光地の「文化・伝統保全」部門で世界一に輝いた。評価のポイントとなったのが、この肱南地区で進められている、歴史的資源を活用した町並みの保全や地域経済に役立つ取り組みだった。

肱南地区の町づくりを主導するのは地元の「観光地域づくり法人」で、行政や金融機関などと連携している。

キタ・マネジメント 井上陽祐企画広報係長:
大正期くらいから酒店として使われていた建物なんですけど、今は改修して1階をショップに

保全のきっかけは、老朽化した町家や古民家が取り壊されたり放置されるなどして、歴史的なまちの景観が悪化しはじめたことだった。

キタ・マネジメント 井上陽祐企画広報係長:
市としても町としても、これを何とかしなきゃっていうフェーズに来ていたことがきっかけで、事業をやり始めた

町並みの再生に向けた取り組みのひとつが、建物の「保存」と「活用」だ。建物を残すための改修工事だけでなく、改修した建物を事業者に貸し出し、店舗やホテルとして活用。経済を循環しながら、まちの景観を持続的に守る仕組みを作ったのだ。

キタ・マネジメント 井上陽祐企画広報係長:
事業者が入って、商売ができる状態にもっていかないと、なかなか税金だけで保全していくのは限りなく可能性が低い。保全してくためにも活用していくのは重要

古い建物を改修しカフェやホテルにリニューアル

本格的な町の再生が始まった2018年以降、肱南地区では30棟以上の建物が改修され、新たに20の事業者が進出。そのひとつが飲食店だった。明治時代は木ろう製造に携わる労働者の宿舎として使われていたという建物に出店したのは、同じ明治に創業した市内の銘菓店「茶寮 平野屋」だ。

茶寮 平野屋 平井啓太郎代表:
新しい業態をしたいと思っていて、「古民家再生のプロジェクトが動いているので出店しませんか?」と。これは渡りに船だと思って渡ってきました

看板メニューという、黒いネバネバの正体は…。

茶寮 平野屋 平井啓太郎代表:
「賞味期限20分の本わらび餅」です

鈴木瑠梨アナウンサー:
賞味期限20分?

茶寮 平野屋 平井啓太郎代表:
なるべく練りたての本わらび餅の食感と味を楽しんでいただきたいので、「20分」と設定させていただいています

希少な「本わらび粉」を100%使った本わらび餅の驚きの食感は…。

鈴木瑠梨アナウンサー:
口の中に入れた瞬間とけました。とけたあとに口の中に甘味が広がって、きな粉の香りが合うんです

さらに、改修した建物はホテルとしても活用されている。

NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町・稲尾侑紀支配人:
プレミアのお部屋です

鈴木瑠梨アナウンサー:
斬新なデザインですね

建物の中には、むき出しの土壁にガラス張りの浴室が。

NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町・稲尾侑紀支配人:
「梁(はり)」ですね。しっかりとした蔵造の梁をそのまま残しています

ホテルの客室として生まれ変わったのは、特産の木ろうを保存していた「蔵」。大洲の歴史と文化に包まれた客室の宿泊料金は、2人で約7万円だ。

肱南地区には、古民家を改修したホテルが町のいたるところに整備されている。その数、26棟32室。「分散型ホテル」と呼ばれ、客室やレストラン、フロントなどの建物を分けて、地域をまるごとひとつのホテルに見立てている。

NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町・稲尾侑紀支配人:
必ず町を、チェックインからチェックアウトまでの間で歩く仕組み。歩くことによって、町の魅力ある店、自然、景色に出会えるのが、一番の価値

大洲にしかないホテルや店で宿泊客を獲得し、地域経済を活性化することが狙いで、特にサステナブルな取り組みに関心の高いインバウンドをターゲットにしている。

フランスからの観光客:
興味深いわ、古い家とか

フランスからの観光客:
ポコペン横丁の通り沿いの空き家とかね

キタ・マネジメント 井上陽祐企画広報係長:
エリアに貢献するような旅をされたい観光客がちょっとずつ増えている。そういう方々に「大洲にあなたが来るだけで泊まるだけで、古民家が再生される」ということを、観光の中でも伝えている

“いにしえの大洲ロマン” 歴史感じるビール醸造所

人力車でめぐる大洲のまち。最後に訪れたのは、大正時代から残る赤レンガ倉庫だ。ここはクラフトビールの醸造所「臥龍醸造」としてオープンした。

臥龍醸造・梶原玉男マネージャー:
ワールプールって言うんですけど、かきまぜながら不純物を取り除いていきます

臥龍醸造・梶原玉男マネージャー:
ペールエールと言いまして、モルトの甘味とホップの苦味がバランスよく取れた王道、スタンダードなクラフトビール

鈴木瑠梨アナウンサー:
麦芽の香りが、一気に広がります。後味はフルーティー。

鈴木瑠梨アナウンサー:
昔の建物を残しながら、新しいお店にどう感じてますか?

臥龍醸造・梶原玉男マネージャー:
古いものはもう一回作るものができない。この地区全体がそうなんですけど、古い建物を活用している。いにしえの大洲のロマンを感じながら楽しんでほしい

観光地としての新しい可能性を引き出した大洲の町づくり。サステナブルな旅で地域の歴史や文化を応援してみてはどうだろうか。

(テレビ愛媛)

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