ゴールデンウィークの観光地に大量のカラスが現れ、鞄をあさられたりフンで汚されるなどの被害が相次いでいる。

屋外での飲食や遊びが増える連休中に、我々は何に気を付ければ良いのか。

カラスの生態に詳しい宇都宮大学・杉田昭栄名誉教授に、カラスが威嚇してきた際の対応やゴミ捨てのポイントなどについて聞いた。

学習能力が高く頭が良い

ーー日本で見られるカラスの種類は?
日本で見られるカラスは、ハシブトガラスとハシボソガラスの2種類が多いです。

東京都に多いのはハシブトガラスで、23区だと8~9割がハシブトガラスです。荒川や江戸川の河川敷にはハシボソガラスも比較的見られます。

それぞれの違いは、ハシブトガラスの方が一回り大きくて、体重が約700グラム、くちばしが比較的大きくて太いです。

一方、ハシボソガラスはちょっと小ぶりで、平均体重は約600グラムです。

宇都宮大学・杉田昭栄名誉教授
宇都宮大学・杉田昭栄名誉教授
この記事の画像(7枚)

ーーカラスは頭がいい?
鳥の中では、非常に学習能力が高くて頭が良いと昔から定評があります。

例えば、クルミを食べる時に殻を落下させて割るとか、車にクルミをひかせて砕けた実を食べるとか、非常に適応性の高い判断力があります。

子供を守るために攻撃

カラスは4~6月が繁殖期のため、ヒナがいる巣を守るために攻撃的になり、襲ってくる機会が増えるという。

ーー人を襲ったり、ごみをあさる理由は?
人から見てカラスが「襲ってきた」と感じるケースは、2つあります。

1つは、ヒナがいる巣を守るために攻撃してくるケース。
もう1つは、人慣れしたカラスがエサを求めて、人が持っている弁当を狙ってくるケースです。

4~6月はカラスの繁殖期で、電柱や木の枝の中に巣を作って卵を産み、ヒナが巣立ちするまでエサを与えて育てます。

その時に、人間が無意識に巣に近付いたり、傘を振り回したりすると、カラスは威嚇してきたり、攻撃してきます。

また、ヒナは育ちが良く元気があるので、巣の中で押し合いへし合いして落下することがあります。その場合、親は地上にいるヒナを育てるのですが、ヒナが隠れている場所に人間が気付かず、その周辺を歩いたりすると、親は監視していて攻撃をかけてきます。

人間が巣の方向を見ているだけでも、カラスは警戒して攻撃してくることがあります。

ーーカラスの数は増えてる?
20~30年前は、東京都には3万6000羽ほどのカラスがいましたが、当時の石原都知事のカラスを激減させる対策により、平成16~17年には、1万6000羽ほどになり、その後も若干減りつつ、ここ10数年は横ばいの状態で、現在は1万数千羽と見られています。

よって、20~30年前に比べたら65%減となっていますが、ここ10数年は横ばいなので、数年のスパンで見る限りは、増えたとか減ったという印象は受けないと思います。

苦情の件数は10数年前に比べると10分の1ほどに減っています。

生ごみは“新聞紙”でくるんで袋に

コロナ対策が緩和され営業を再開する飲食店が増える中、カラスによるゴミあさりのトラブルが増えている。

被害を減らすためには、ゴミを捨てる際の工夫が大事だと杉田昭栄名誉教授は指摘する。

ーー連休で被害が増えるということは?
ゴールデンウィークでアウトドアのレジャーが盛んになります。特にバーベキューなど野外で食事をすることも多いと思います。

カラスは食材を探して食べる動物なので、高い木の上から観察しています。そして、チャンスを見つけて急降下して狙ってきます。

また、この時期は繁殖期なのでカラスもナーバスになっています。
公園や自然の中で人の数が増えると、巣に無意識に近付くケースが増え、カラスの攻撃を受ける機会が普段より増えるかもしれません。

ーー被害を少なくする方法は?
カラスのエサになる生ごみや収穫残渣の管理が徹底されていない場合は、カラスの被害が増える可能性は当然出てきます。

被害を増やさないためには、ごみの中身が見えないように、生ごみは一度新聞紙でくるんでから袋に入れるなどの工夫をしたり、ごみネットをきちんとかけてカラスがめくらないように重しを置くことなどが大事です。

また、収穫残渣はきちんと土に埋めるなど、都心部だけでなく郊外での対策も必要です。カラスは4~5キロ飛び回るので、広域での対策が重要になります。

手を叩いて「来るな」の態度を示す

カラスがゴミ集積所に寄ってきたら、見て見ぬふりをするのではなく、音を出して追い払うなど、一人一人の取り組みが重要だと杉田昭栄名誉教授は話す。

ーーカラスがゴミ集積所にいたらどうすればいい?
寄ってきたら「パン」と手を叩いて音を出して、「来るな!」というサインを出すことによって人間を警戒するようになります。

これを繰り返すことで、カラスは賢いので、人間と距離をだんだん置くようになってきます。

見て見ぬふりをするとカラスを呼び寄せることにもなるので、ささやかでもいいので、例えば、棒で地面を叩いたり、缶で音を出して追い払うなどの取り組みを重ねることがカラス対策にとっては大事です。

大仕掛けをしても長続きしませんから、一人一人の取り組みが大切です。

ーーカラスに威嚇されたら?
頭、目、顔を手で守るようにして伏せて耐えるのが基本的な安全対策です。

カラスの鳴き声を聞き分けることができる人は、距離を置いて手を上げて自分を大きく見せて「怖くないぞ」といった姿勢をとることもできますが、知識がないとカラスが怒っているかどうか聞き分けられません。

声を絞り出すような「ガー、ガー」という枯れた声を繰り返す場合は、威嚇です。

さらにストレスが増すと小枝を割ったり折ったりしますが、それが不思議な行為だなと思ってぼんやり見ていると、カラスはどんどん怒って攻撃を仕掛けてきます。

そのような鳴き声を聞いたら、遠ざかって距離を置くことが大事です。

イット!
イット!

知りたかったことが分かれば、きっと明日が楽しくなる。
知らなかったことが分かれば、きっと誰かに話したくなる。
「明日も頑張ろう」と思えるそのささやかな力になれればと今日もニュースをお届けします。
フジテレビ報道局が制作する夕方のニュース番組。毎週・月曜〜金曜日午後3時45分より放送中。榎並大二郎と宮司愛海が最新ニュースを丁寧にお伝えします。