「どうか受け取ってください」とでも言うかのように、1枚の羽根を差し出し自らをアピールするフクロウの姿がかわいいと、話題になっている。
群馬・高崎市にある「ふくろうカフェ楽園」の公式Twitterアカウント(@owlcafe_rakuen)が投稿した動画には、スピックスコノハズクのナツくん(生後10カ月・男の子)が、同種のクルミちゃん(5歳・女の子)に懸命にアピールしている様子が収められていた。


ナツくんは自分の羽根1枚をくちばしで持ち、隣にいるクルミちゃんを見つめる。そして、首を伸ばし「受け取ってください」とでも言うかのように、羽根をクルミちゃんへ差し出しているのだ。

ナツくんはそばへ近づき顔を寄せ、クルミちゃんのくちばしへ直接羽根を渡そうとする。しかし、クルミちゃんはくちばしで数回カミカミするだけで、なかなか受け取らない。


めげずに挑戦するナツくんだが、約35秒の投稿動画では結局、受け取ってもらえないまま終わった。羽根の端をくわえたままのナツくんは、少し寂しそうに見えてしまう。

投稿には「繁殖のためのパートナーを引き付けるための行動と考えられます」と書いてあった。
かわいらしいアピール方法だが、受け取ってくれていない結末に、Twitterでも「可愛い…尊い…」「なんかすごい素敵」といった声だけでなく、「これもしかして振られてる?w」「これは成功なの…??」といった声も寄せられていた。投稿には6万2000のいいねが付き、話題となっている。(5月8日時点)
「とても感動した」その後は無事に…
羽根を広げる求愛行動は有名だが、羽根をプレゼントするのもそうなのか?そして気になるのは、その後、ナツくんは羽根を無事に受け取ってもらえたのだろうか?2羽の関係などを「ふくろうカフェ楽園」の神尾大輔さんに聞いてみた。
ーー羽根をプレゼントする様子を見て、どう思った?
当店ではフクロウの繁殖を意識しての展示飼育に取り組んでおります。フクロウ達の鳴き声には意味があり、今回はオスの鳴き声の変化から推察し動画撮影を行いました。目にした時はとても感動しました。

ーープレゼントしたのは、自ら引き抜いた羽根?
換羽期と発情期が同じ時期のため、自然に抜ける羽根を引き抜いたものです。

ーーその後はどうなった?
無事に羽根を受け取ってもらえました。

なお、公式アカウントでは、5月1日に【続報】としてその後についてを投稿。この中で、ナツくんが再度、プレゼントチャレンジした時の様子を報告している。
こちらでもナツくんは1枚の羽根をクルミちゃんに差し出している。すると、クルミちゃんも首を伸ばし、自らのくちばしでしっかりと羽根を受け取っていた。

プレゼントの羽根を一緒に足で持ち、寄り添う2羽の姿はとてもかわいらしく、癒やされた人もいるのではないだろうか。
くっついて寝たり羽繕いし合う仲の良さ
ーー普段の2羽の仲を教えて。
2022年9月より一緒に飼育しておりますが、早期に打ち解け、いつも仲良くしております。2羽共に好奇心旺盛でとても人馴れしております。
基本フクロウ達は単独行動になりますので、他のフクロウ達も1羽、1羽が離れている事が多いのですが、ナツくんとクルミちゃんは仲良くくっついて寝ていたり、羽繕いし合っている事が多く感じます。

ーーパートナーになる可能性は高いの?
実際にナツ君の両親と似たような行動が断片的にあり、私見では夫婦(パートナー)になる可能性が高いと感じております。

ーー投稿が話題となっていることに対しては、どう感じている?
フクロウ達の事を表面上だけではなく、より深く理解したいと考えており、当店では繁殖を意識した飼育をしております。フクロウの繁殖は難しいのですが、動画内のナツ君は2022年自家繁殖させた子であります。
その子が運命的にもパートナーを自分の力で得ようとしている様子を間近で見守れる事が、なにより感慨深いものがあります。また、この映像を多くの皆様と共有できた事を嬉しく思います。

“求愛給餌”の変化版
そして、ナツくんの羽根をプレゼントする行動について、鳥類学者の樋口広芳・東京大学名誉教授にも話を伺ったところ、「“求愛給餌”と呼ばれるものの変型版」だと考えられるそう。
「求愛給餌」とはつがいの、あるいはつがいになる前の雄が雌に食べものを与える行動のこと。シジュウカラやモズなどの小鳥から、カワセミ類、アジサシ類、フクロウ類、ハヤブサ類などにまで広く見られ、基本は主食としている食べものを与えるという。
しかし今回の投稿動画で、ナツくんが食べられない羽毛を渡しているのは“食べものの代用品”として使っていると考えられるそうで、おそらく飼育下でだけ見られる特異な行動と思われるとのことだった。
フクロウは繁殖期になるとパートナーに対して羽根をプレゼントすることがあります。これは、自分の美しさを示すことで相手に自分の魅力をアピールし繁殖のためのパートナーを引き付けるための行動と考えられます。#フクロウ pic.twitter.com/3mtKVQ3Vg6
— ふくろうカフェ楽園【公式】 (@owlcafe_rakuen) April 26, 2023
「ふくろうカフェ楽園」では、フクロウ達のコンディションにもよるが約15羽を常時展示しており、触れ合うことが可能だという。平日は12〜17時、日曜祝日は11〜17時で営業しており、公式LINEにて24時間予約を受け付けている。
神尾さんは、2羽の様子を今後も見守っていきたいと話していた。ナツくんとクルミちゃんの今後を温かく応援してあげてほしい。