愛知・名古屋にあるウェブ制作会社が、熊本・球磨郡多良木町の山あいの集落、槻木地区に毎月通い、地域創生プロジェクトを進めている。住民と一体となったその取り組みを追った。

“限界集落”での暮らしを若手が発信

名古屋にあるウェブサイトの企画・制作会社「フリースタイルエンターテインメント」。インターネットを活用した“地域創生”に力を入れている。

多良木町・槻木地区のウェブサイトで魅力を発信
多良木町・槻木地区のウェブサイトで魅力を発信
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彼らが制作、運営しているのが、過疎高齢化が進むいわゆる“限界集落”、多良木町・槻木地区のウェブサイトだ。若手社員たちが山里での暮らしを体験して感じた魅力を、ウェブサイトとSNSで発信している。

槻木地区の住人と交流する社員
槻木地区の住人と交流する社員

彼らは1年ほど前から毎月槻木地区を訪れ、名古屋と行き来する生活を送っている。社長の椎葉保雄さん(41)は名古屋で生まれ育ったが、槻木は父親の地元だ。年々人口が減り、寂しくなっていく現状を見て何かしたいと考えていた。

フリースタイルエンターテインメント・椎葉保雄社長:
このままいったら自分のルーツがなくなるんだろうなと思っていたし、何か地域活性化の取り組みをやりたいという思いはずっとあった

住人の9割が高齢者の槻木地区
住人の9割が高齢者の槻木地区

多良木町の槻木地区は、宮崎県との県境にある山あいの集落。住民91人のうち、約9割が65歳以上の高齢者だ。

休校になった小学校
休校になった小学校

町はかつて地域活性化のために子育て世帯の「集落支援員」を公募し、2014年に上治英人さん家族が移住した。上治さんの娘・南凰ちゃんの入学にあわせて、休校していた小学校が7年ぶりに「再開校」し、大きな注目を集めた。しかし、町の方針転換で2017年に、上治さん一家は槻木を離れることになり、学校は再び休校になった。

フリースタイルエンターテインメント・椎葉保雄社長:
一昔前は、こういった“限界集落”に人を移住させようっていう社会的な流れもあったと思うが、正直言ってかなり困難だと思う。ただ、いいものは残していきたい。こういった田舎で作ったものが都会で売れるなら、ここを仕事場にするっていう“田舎に通う”っていう逆の思考があるのかなと

目標は「地域のブランド力」の向上

滞在中は、椎葉さんの叔父・袈史さん宅の一室が仕事場だ。

フリースタイルエンターテインメント・椎葉保雄社長:
熊本・槻木の「サテライトオフィス」というか、僕らの出張所というか、活動するときの拠点

フリースタイルエンターテインメント ウェブデザイナー・川添美奈さん(28):
月の前半は名古屋で仕事して、後半は槻木で仕事している。畑耕すとか最初はびっくりしていたけど、それがWEB発信のアイデアにつながったりする

2023年1月に立ち上げたオンラインショップ
2023年1月に立ち上げたオンラインショップ

目指すのは“地域のブランド力”を上げること。2023年1月には、特産品を販売するオンラインショップを立ち上げた。販売しているのは、地元で作られる手作りのハムやソーセージ。インテリアとしても人気があるミツマタの枝や、品評会で日本一をとった腕前の生産者が作る「原木シイタケ」だ。

地元住民 シイタケ生産者・落合龍見さん(63):
かっこいいパッケージになっていると思う

フリースタイルエンターテインメント ウェブデザイナー・川添美奈さん:
かっこいいパッケージにしました

地元住民 シイタケ生産者・落合龍見さん:
ああいうこと(デザインなど)が個人的にはやれない。専門的な分野でやってもらえると非常に力強いし、頼りになる。ぜひ、売り上げ伸ばして成果に表れたらうれしい

フリースタイルエンターテインメント ウェブデザイナー・川添美奈さん:
がんばりましょう

アイデアと発信力を生かした“地域創生”

住民のほとんどが60代以上。農産加工品などを作っているものの、広く宣伝する手段がなかった槻木の人たちにとって川添さんたちは強力なパートナーだ。

地元住民 中村ハム工房・中村正廣さん(61):
僕が「こういうことをやりたい」と話したときに、それに対して応えてくれるし、槻木の人たちも応えないといけない。彼らが地域創生をやってくれるから僕らも頑張ろうという相互関係が大事だと思う

“地域創生”事業は多良木町や人吉球磨エリアにも
“地域創生”事業は多良木町や人吉球磨エリアにも

槻木から始まった椎葉さんたちの“地域創生”事業は今、多良木町や人吉球磨エリアにも広がりを見せている。

多良木町役場・上村麻妃さん:
わたしたち以上に、多良木町への思いや(地域創生を)頑張りたいという思いがある会社なので、役場の人間としてもうれしく思っている

フリースタイルエンターテインメント・椎葉保雄社長:
僕のご縁の村だからというだけじゃなくて“街の会社がアイデアを逆輸入する”イメージでデザインとかSNSとかウェブの力を使って“都会と田舎の融合”を手伝いたい

“限界集落”と呼ばれる過疎地域に通い、そこにある可能性を引き出す。アイデアと発信力を生かした“地域創生”が進んでいる。

(テレビ熊本)

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