G7広島サミットの経済効果を試算した。広島県に1年間で924億円、これは前回の伊勢志摩の倍近くだが、そのわけはウクライナ情勢などで警備費用が増え、全体の43%、400億円にも及ぶからだ。また、観光客増にはサミット後も行政が国際会議やイベントを誘致することが重要ということだ。

ウクライナ情勢など国際的緊張でテロ対策など警備費用が膨張

今回、テレビ新広島は数々の経済効果を発表してきた関西大学・宮本勝浩名誉教授と共同で独自に広島県内の経済効果を算出した。
関西大学・宮本勝浩 名誉教授:
たぶん日本で開催された過去のサミットの中では最高クラスの経済効果だと考えています

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宮本教授が算出したサミット開催前から、開催後、1年間の広島県内の経済効果は約924億円。2016年に開催された“伊勢志摩サミット”の経済効果、約483億円に比べて、倍近くになるという。この違いは何なのか?

宮本名誉教授:
警備費が最大の出費項目になるだろうと考える

前回“伊勢志摩サミット”では警備関連の人数は1日あたり最大で約2万3000人。

今回は、それ以上の警備体制が敷かれると予想。警備費の推定総額は約400億円。

宮本名誉教授:
ロシアのウクライナ侵攻や最近の中国と台湾の摩擦など、過去の日本国内で開催されたサミットの時と比べて世界情勢が非常に不安定。私は過去最大の警備費を今回は予算に計上すると考えています

国の出費推定金額は、警備費など合計で、約720億円。

“伊勢志摩サミット”では国の予算の約67%が地元・三重県に投入された。
この数値を適用すると今回、広島県に投入される国の予算は、約480億円になる。

この他、各自治体の出費額などを合わせると、広島県内への直接効果は674億円あまり。このうち、サミット後に増加する観光客の消費額は約82億円という試算。

これに加えて、サミット開催後、1年間の「波及効果」を合わせると、広島県内の経済効果は約924億円と予想される。

宮本名誉教授:
最初はホテルだったり、警備関係だったり、そういう所でお金がかなりかかる。そのあとの段階で、一般の方々の所に経済効果が波及していく事になる。サミットが終わった後に観光客が来る。そういう時に一般の方々や一般の店、みやげ物店、旅館そういう所に経済効果が広がっていく

観光は経済効果を高めるためには重要な要素だ。
宮本名誉教授:
過去にサミットを開催した土地の人たちはサミットが終わったらたくさんの観光客が国内外から来てくれると期待していた

過去のサミットでは観光客は増えていない 自治体レベルの誘導が必要

しかし、宮本教授はサミットの経済効果の意外な特徴を指摘する。
宮本名誉教授:
そんなに期待するほど観光客は増えていない。例えば前回の“伊勢志摩サミット”の時もサミットが終わってから1年間で観光客が増えたのは、前年比で0.7%。ほとんど増えていない。その前の“洞爺湖サミット”の時はマイナス0.5%と逆に観光客が減っている

一部の地域に経済効果があっても、必ずしも地域全体に広がっていくわけではないようだ。なぜ、このようなことが起こるのか?
宮本名誉教授:
サミット開催後の観光客誘致に対する地方自治体の政策や方針がうまく働かなかったと私は思っています

宮本教授はカギを握るのは行政だと言う。
宮本名誉教授:
地方自治体は「サミットをやった。成功だった。もうしんどいね」では困るので、これをいかしてどんどん国際会議や国際的なイベントを誘致することを、これからやらないといけない。これは1つの企業や店ではできない。地方自治体がやらなければならない

サミットまで1カ月を切った。多くの国際的なイベントを見つめてきた宮本教授は最後に期待を込めてこう話す。
宮本名誉教授:
今、私たちが住んでいる世界が安心安全で、暮らしやすい世界になったのは、あの“広島サミット”がきっかけだった、というように言われるようなサミットにぜひしていただきたい

被爆地、広島でのサミットは平和へのメッセージ発信という意味が大きいが、その関連の国際会議や行事の誘致が観光客の増加につながることが期待されている。

(テレビ新広島)

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