北海道札幌市で4月、犬を散歩中の女性をキツネが襲う出来事があった。

札幌市では、キツネの報告件数が年々増加傾向にあり、注意を呼びかけていた最中だったが、なぜキツネは女性を襲ったのか。

野生動物の生態に詳しい麻布大学の塚田英晴教授に、キツネの習性と遭遇した際の対処法を聞いた。

エキノコックス感染に要注意

ーーキツネが犬を散歩中の女性を襲った理由は?
今回のキツネは「キタキツネ」だと思いますが、キツネは3月下旬から4月頭ぐらいに子供を産んで、今の時期はちょうど子育てをしている時期です。

麻布大学・塚田英晴教授
麻布大学・塚田英晴教授
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子供を育てるために親は一生懸命餌を運んだり、外敵から守ろうとしますが、キツネにとって犬は“天敵”です。

もしかしたら近くに巣穴があって、危険を早めに察知して犬を追い払おうと“防衛”の行動をとったのかもしれません。

散歩中の犬を襲うキツネ 提供:雪道太郎さん
散歩中の犬を襲うキツネ 提供:雪道太郎さん

ーー野生のキツネの注意点は?
北海道のキツネは寄生虫の一種のエキノコックスを持っているので、接触は避けたほうがいいです。

巣穴周りだと子ギツネがフンをしていたりするので、もしキツネがエキノコックスに感染していたら土が汚染され、人間への感染リスクにもなるので、フンに触れないように気を付ける必要があります。

逃げず“大きな声”で威嚇

北海道のキタキツネが主な感染源のエキノコックス症。

キツネのフンなどを介して感染し、一度人間に感染すると重い症状を引き起こすことがあるため、キツネとの接触、さらには排泄物に注意が必要だという。

では、キツネと遭遇した場合は一体どう対処すれば良いのか。
塚田教授は、慌てて逃げず“大きな声”で威嚇することで、キツネの方から逃げていくと話す。

ーー遭遇した時の対処法は?
キツネはそんなに大きな動物ではないので、大人が襲われて大怪我をするということはまず無いと思います。

慌てずゆっくりとした態度で、大きな声を出して威嚇すれば、キツネの方が逃げます。
逆に走って逃げると追いかけて来たり、人間が転んでけがをする可能性があるので、なるべくしない方がいいです。

一方、子供の場合は体が小さいので、キツネの方が大胆になる可能性もあります。大人が盾になってキツネを追い払うと危害は避けられます。

犬を襲おうとしたキツネ
犬を襲おうとしたキツネ

ーー子供だけでキツネに遭遇したら?
その場合も、大きな声を出して追い払えば積極的に襲ってくることはないと思います。

1人で行動できる年齢の子供ならキツネよりも大きいので、自信を持って大声を出せばキツネの方が逃げていきます。

逆に走って逃げたりすると、後ろから飛び掛かって噛みついたりすることもあるので、しっかりとキツネの姿を見ながら“自分の方から威嚇”することが危険回避には有効です。

ヒグマのような危険な動物ではないので、自信を持って冷静に威嚇すればキツネは逃げてくれます。