自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。

今回、元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家に寄せられたのは、こんなエピソード。

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「子どもたちがケンカをしないよう同じお菓子を配ったのに、パッケージのちょっとした違いで結局ケンカに…」

同じ味のゼリーだけど、パッケージに書かれた製造番号が違う…
シールが貼ってあるバナナと貼っていないバナナ…
一見分からないような小さな差、でも一度気付いてしまったら「もう絶対にあっちの方が欲しい!」となってしまう子どもたち、大人には「どうしてそんなことで…」と思えてしまうようなことにこだわりたくなる子どもゴコロって、どうして?

育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんにお話を聞いた。


――小さな違いで大げんか…こだわってしまう子どもゴコロの理由は?

スイスの心理学者であるピアジェ博士が提唱した認知発達段階理論というものがあるのですが、簡単に言うと、子どもの認知発達のステージをその特徴ごとに年齢で4段階に分けたものになります。きょうだいゲンカが頻発しがちな2~7歳くらいの時期は、ピアジェ博士の理論でいう「前操作期」に当たり、その時期の一番の特徴は、エゴセントリズム、つまり「自己中心性」です。
この時期の子どもたちは、物の見方が自己中心的なので、どうしても、

・自分がちょっとでも得したい
・自分は絶対に損したくない


という気持ちが高まる傾向があります。
裏を返せば、自分以外のきょうだいのことを「いいな」「うらやましいな」と思うような状況は許しがたくなってしまうことが多いのです。

さらには、この時期の子は、まだ「保存の概念」というものを獲得していないともピアジェ博士は言っています。
具体的な例で言うと、たとえば同じ200㏄のオレンジジュースが形の違うコップ(1つが細長く、1つはぽってりした形など)に入っていたら、高くまでジュースが満たされている細長いグラスの方が多く見え、結果として、そのグラスに入っているジュースの取り合いということが起こってしまうのです。厳密に200グラムという重さをはかったとしても、子どもに「こっちがいい」と見えたら、それがすべてになってしまう。

このように、見た目の印象にものすごく左右されやすいというのがこの時期の子の特徴です。親にしたら些細な違いが、その子たちにとっては大きな違いとして映る背景にはこんな心理が関係しています。


――では、ケンカは回避できなさそう?親はどうしたらいい?

洋服やおもちゃなどをきょうだいに配る場合、全く同じものを揃える・選ぶ順番を決めておくなどの工夫をされている方も多いと思います。ただ、先にご紹介したような年齢的な背景を踏まえると、「バトルが起きて当たり前」「うまくいけばラッキー」くらいに捉えておく方がイライラが軽減できるかもしれません。

基本的には、7~11歳の間に、「脱中心化」と呼ばれる認知発達が進み「200ccのジュースならば、どのコップに入っていても同じ」という理解ができるようになります。ゼリーのお話で言えば「パッケージが違えど中身は同じ」と思えるようになり、次第に争いが起こらなくなってくるものです。ですので、成長を待つというのが、結果的には一番の解決法とも言えます。

今の時期は、同じようにケーキを切り分けたつもりでも、お兄ちゃんが取ったものが下の子にとっても魅力的に見えたりしますし、もし仮にお兄ちゃんが、「やっぱりこっち」ともう一方に気持ちを移せば、下の子もまた「ボクもこっち」と気持ちが移り……とエンドレスなもめごとになりがちです。
「どっちがいいか」という判断は、ものすごく主観的なものなので、親が同じものを与えたつもりでも、その子にとって“微妙に違う“ように映れば、それが事実となってしまうので、100%解決することは難しいという”あきらめ“も大事かもしれません。

小さなことにこだわる子どもたちのココロは、見た目に左右されやすく「あっちの方が得かも…うらやましい!」と思う気持ちに注目してしまう成長過程にいるから。
大人から見たら「どっちも同じ…」と思ってしまうことでも、子どもたちにとっては大きな違いに見えているはず。今の年齢だけの「子どもの世界」がある…と割り切って見守るのが、イライラ回避につながるかもしれない。


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※入力された内容は記事で紹介させて頂くことがございます。
※改めて取材をさせて頂く場合もございます。

(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。

(漫画:さいとうひさし)

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。