呼吸器の感染症「百日せき」が、全国的に流行している。聞き慣れた病気ではあるが、生後2か月までの赤ちゃんが感染すると死亡率が5%から8%で決して侮れない感染症といえる。
感染症に詳しい小児科の医師に、百日せきの対応策を取材した。
全国で「爆発的」に拡大…子供を中心に感染 鳥取県は東京都とほぼ同数

子どもを中心に感染する「百日咳」。2025年に入り全国で感染が拡大しており「爆発的」とも表現される現状だ。
百日咳は、咳が長引くのが特徴で、子どもを中心に感染、乳児がかかった場合は重症化して死亡するおそれもある。
国立健康危機管理研究機構によると、4月13日までの1週間で報告された全国の感染者数は、前の週から500人増え、およそ1.7倍の1222人に上り、3週連続で過去最多を更新した。
こうした中、島根県の感染者数は19人で、4月の累計は36人に、また2025年の累計は92人で、既にこの時点で、2018年からの記録では最多、2024年1年間の3倍に達する報告数だ。
また鳥取県の感染者数は、週別では集計中としているが、4月の累計は44人で、2025年の累計は189人に上っている。

鳥取県では、全国的な傾向より早く2024年の夏から流行が続き、2024年1年間に報告があった患者数は382人と東京都とほぼ同数で、2025年に入っても患者の報告が相次いでいる。
感染拡大の背景は?感染症のエキスパート「感染力が強力」

なぜ感染が拡大しているのか…そしてどんな点に注意すべきか?気になるギモンを小児感染症のエキスパートである安来市医師会診療所の成相昭吉医師に聞いた。
百日咳はどんな症状か?「特に乳児は注意」と警鐘

安来市医師会診療所・成相昭吉医師:
熱がないのが特徴です。咳は発作性で突然出てきて、昼も夜も出ることが特徴で、寝ていても出てくる。
成相医師は、「特に乳児は注意が必要だ」と警鐘を鳴らす。そして「死亡率が5%から8%と言われ、とても怖い病気になるのが、2か月齢までのワクチンをやっていないお子さんです」と話す。

百日せきに有効なワクチンは、生後2か月から接種可能な『5種混合ワクチン』の中に含まれている。このため、2か月以上の子どもは速やかに接種することが必要だとし、2か月以下の子どもは、咳が出ていると思ったらすぐに小児科を受診することが重要だという。
流行している背景は?「薬が効かない菌」が増加…

また成相医師は「百日咳の感染力はすごく強く、『はしか』と同等。また薬が効かないタイプの「百日せき菌」が増えていることが分かっている」と流行の背景について分析する。
「耐性菌」にどう対抗? “もう一つ抗菌薬”加え服用を 4月から新方針

従来の処方薬に耐性を持つ菌が流行の中心だとすれば、どう対策すればよいのか?成相医師は「旧来の抗菌薬に加えて、もう一つ抗菌薬を加えて、最低7日服用するという方針が4月から始まった」とし、これを踏まえ「日本小児科学会が2種類の抗菌薬を処方することを推奨。服用後5日から7日で症状は治まり、他者への感染も抑止できる」と話す。

そして「市販の子ども用の咳止め薬はないため、医師への早めの受診が重要だ」と指摘。
また「連続する咳が出るようになったら、早い段階で百日せきを疑って診断していただくことが大事」と呼びかける。
流行期は冬場だけでない コロナ禍以降あらゆる感染症が通年で…
成相医師によると、これまでは冬場に流行するのが基本だったが、コロナ以降は百日せきも含めてあらゆる感染症が流行シーズンがなくなっているとしている。

そして「マスクの着用、こまめな換気、手指の消毒など、基本的な感染症対策が重要であり、大人もかかることはあるが、流行の中心は子ども。子どもを守るのは大人しかできない。それが大人の使命だ」と子供の命を守る対応を呼びかける。