長野市のがん患者向けのウィッグ専門美容室がこのほどウィッグを作る工房もオープンさせた。ニーズにきめ細かく対応しようと治療前の患者自身の髪を使っている。工房は体調面から正規の職に就きづらい患者の就労の場や同じ悩みを抱える人たちの相談に乗る場にもなっている。
患者自身の髪を使った「ウィッグ」
ウィッグを取り付けてヘアスタイルを調整。11年前に卵巣がんを患い現在も治療を続ける長野市の松坂千鶴さん。「抗がん剤」で髪が抜ける副作用が出たためウィッグを着けて生活している。
がん治療中・松坂千鶴さん：
（当初は）すごく外見の変化を気にしていて、今はきれいにメンテナンスやカットをしてくれたり、逆に楽しめるようになりました
長野市のしまんりょ小路沿いに3月オープンした医療用ウィッグの工房「スマイルクローバー」。
坂城町出身の鈴木浩子さん（54）が代表を務め、松坂さんもスタッフの一人だ。
ここで作るウィッグは抗がん剤治療などの前にカットした患者自身の髪を使っている。
「少しでもいつもの自分らしく」
スマイルクローバー 代表・鈴木浩子さん：
極力ストレスがない状態で、少しでもいつもの自分らしくいられる形にしたくて
鈴木さんはもともと近くでがん患者向けのウィッグ専門美容室を営んでいた。そこでは、一般の医療用ウィッグを取り扱っていたがー。
スマイルクローバー 代表・鈴木浩子さん：
お客さまから「自分の髪でウィッグって作れないんですか？」という（声があった）のがきっかけ
そこで、患者自身の髪を使ったウィッグを作ろうと工房を構えた。
「うれしい、自分の髪と実感」
治療前にカットするため、作るのは比較的少ない量で短期間でできる前髪や襟足。帽子と組み合わせることで自然に見えるように調整している。
スタッフの松坂さんが着けていたウィッグも自分の髪から作ったものだ。
がん治療でウィッグを着ける・松坂千鶴さん：
自分の髪の毛なので、ふわっと感とか隙間がない。とてもうれしいというか、自分の髪の毛だって実感ができる
患者の就労や相談に乗る場にも
スマイルクローバー 代表・鈴木浩子さん：
本意ではないじゃないですか、長い髪が好きだった方は。失ってしまう髪が（ウィッグとして）自分に添えられることが希望になるんじゃないか
鈴木さんを除くスタッフは全員ががん経験者。工房は体調面から正規の職に就きづらい患者の就労の場に、また、同じ悩みを抱える人たちの相談に乗る場にもなっている。
スタッフ・小林英美さん（2004年に乳がんを患い治療が続く）：
「きょうお仕事だ」とメリハリがつくので、生活にも張りが出る
スマイルクローバー 代表・鈴木浩子さん：
そもそもウィッグっておしゃれアイテムなので、気持ちが上がって「おしゃれできている」と。「ばれたくない」じゃなくて「ばらしたくなる」そういうウィッグライフを楽しんでほしい
県も今年度からウィッグなどの購入費用の一部を助成する取り組みを始めていて支援の輪は今後ますます広がりそうだ。
（長野放送）
