「くら寿司」で地域限定の天然魚を全国22のブロックで提供する“地産地消”の取り組みが始まる。

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関東では馴染みのない、沖縄でとれる青い魚・ナンヨウブダイや、近畿地方・熊野灘産のあぶり太刀魚。

麻生小百合記者:
北陸エリアで楽しめるという、福井県・三国港のホッコクアカエビですが、身がつまっていてプリプリで特別感があり、美味しいです。

「くら寿司」で、地魚を低価格で味わえる取り組みが始まる。

テーマは、“地産地消”ならぬ“地魚地食”だ。

全国を22のブロックに分け、各エリアで水揚げされた地魚を、その地域にある店舗で限定メニューとして提供する。

メニューは週替わりで、価格は1皿240円(税込み)だ。

地域水産会社との連携で輸送コスト削減

国産の天然魚を低価格に抑えられた理由にも、“地魚地食”が関わっている。

くら寿司 天然魚プロジェクトマネージャー・大濱喬王さん:
大阪・貝塚にあるセントラルキッチンまで魚介類を持ってきて、凍結・加工して、全国に戻すという形になっている。地魚を地元で消費できるようになれば、そこの部分のコストは確実に下がる。

これまで、水揚げした魚介類は、大阪にある自社工場・貝塚センターで加工し、全国の店舗へ配送していた。

今回の取り組みでは、この工場を、地域の水産会社と協力し14か所に増設。収穫・加工・提供を1つの地域で行うことで、輸送コストの削減につなげている。

くら寿司 天然魚プロジェクトマネージャー・大濱喬王さん:
お客さまに関しては、見慣れない・食べたことのない新しい魚に出会えるのは、非常に大きなメリットだと思う。漁業者に関しては、少量で販路を限られていたものが、弊社に向けて出荷できることで販路拡大につながって漁価安定にもつながると思う。

くら寿司はこの取り組みを、15日から約360店舗で展開し、8月には全国530店舗以上に拡大する予定だ。

「今回の取り組みは追随困難」

「Live News α」では、マーケティングアナリストの渡辺広明さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
大手回転寿司チェーンが提供する、お魚の地産地消。渡辺さん、さっそく取材されたということですが、いかがでしたか。

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
神奈川・三浦半島で水揚げされた「天然釣りの金目鯛」を試食させてもらいました。身が引き締まっていて、美味しかった。

その週に食べられる魚が店舗によって異なるため、ワクワク感があり、「土曜日はくら寿司」に行こうという来店の動機付けになりそう。

また、旅行や出張で地方に出かけた際に、地元の美味しい魚をリーズナブルに楽しめるため、「くら寿司」を訪れるきっかけになる。

堤 礼実 キャスター:
これまで回転寿司チェーンによる、いわゆる地魚の提供というのはあまり例がなかったように思うのですが、今回、これが実現できたのは、なぜなんでしょうか。

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
2010年に「くら寿司」は「天然魚プロジェクト」を開始して、全国116の漁港などと直接取引を行ってきた。

さらには船の水揚げを丸ごと買い取る「一船買い」に取り組むなど、漁師や漁港との関係強化に努めてきた。

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
ただ、実は魚を確保することができても、そもそも回転寿司の店舗には魚をさばく職人が基本的にいないんです。そこで、加工センターが必要になるんです。

天然魚の処理は大きさやカタチの違い、さらには季節ごとの水揚げへの対応など高度なノウハウが求められるため、「くら寿司」の試みを他社が追随するのはハードルが高いように思う。

“ご当地ネタ”で差別化も

堤 礼実 キャスター:
競争の激しい回転寿司にあって、今回の試みは差別化につながりそうですね。

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
回転寿司の市場は右肩上がりの成長をしてきたが、7400億円に達したところで頭打ち感がでてきた。

そんな中、地元の食材をふんだんに使った「根室はなまる」、「金沢まいもん寿司」といった
高価格帯の“ご当地回転寿司”は大都市園にも出店し、連日行列ができている。

いま「くら寿司」は“ご当地回転寿司”が得意とする付加価値の高い商品の提供と、大手チェーンならではの、AIカメラによる安心安全への取り組みというハイブリッドな“二刀流”を行い、回転寿司チェーンの新しいカタチを示している。

堤 礼実 キャスター:
今回の取り組みは、全国に店舗を持つチェーン店ならではの強みを活かしたものだと思いました。

企業として差別化が図れて、地元の漁師さんにもメリットがあり、私たち消費者は、美味しいお寿司がいただける。まさに、みんながハッピーになれる素敵な試みのように思います。

(「Live News α」4月12日放送分より)