SNS上に相次いで投稿され、問題になっている飲食店での迷惑行為。福岡の人気店でも難しい対応を迫られている。その現場を取材した。

いま飲食店が直面している問題

牛丼チェーン店「吉野家」で撮影された“迷惑動画”。卓上にある共用の「紅しょうが」を自分の箸で直接かき込んで食べたとして、大阪市の男2人が逮捕された。福岡でも、人気うどんチェーン「資さんうどん」で無料で提供されている「天かす」を共有のスプーンを使って直接食べる動画がSNS上で拡散し、多くの「資さんファン」から批判の声が相次いだ。

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飲食店で横行する様々な迷惑行為。
「嫌だなと思うし、もう勘弁してほしい(20代女性)」、「ノリなのか分かんないですけど、やっていいことのボーダーラインが分からないのかなと思います(20代女性)」、「やっと出掛けられるようになったのに、お店の人もかわいそうですよ。お客さんが来てくれるようになったのに(50代女性)」と、市民の声も一様に厳しい。

くら寿司やスシローでは…

後を絶たない迷惑行為に対して、飲食業界もあの手この手で対策を進めている。

大手の回転寿司チェーン「くら寿司」。レーンの上に取り付けられているのはAIカメラだ。皿のカバーの不審な動きを自動で検知し知らせる。

くら寿司では、過去に一度取った寿司の皿をカバーのなかに戻す動画がSNS上で拡散された。そこで全店に導入されていたAIカメラを改修し、迷惑行為を監視するシステムを取り入れたのだ。

くら寿司・小山祐一郎さん:
回転寿司店の魅力のひとつは「次、どんなお寿司が流れてくるんだろう」というワクワク感にあると思います。回転寿司の文化とも言える“お寿司を回すこと”は、今後も続けていきたい

また、同じく回転寿司チェーンの「スシロー」は、レーン上に寿司を流すことをやめて、タッチパネルで注文された商品のみ提供。レーンとの間にはアクリル板を設置した。

ガリを箸で“じか食い”する動画が投稿された「はま寿司」では、全店舗で袋入りのガリを用意し対応している。

そのほか「餃子の王将」では、客席備え付けの調味料を店員が配膳する度に提供するかたちに変更し、ラーメン店の「一蘭」では、客席備え付けのコップを渡すかたちに変更。また店内での動画撮影は事前申請が必要とした。

「迷惑行為対策」を継続

迷惑行為の余波は、福岡のあの人気店にも及んでいる。

天ぷらを揚げる音が食欲をそそる、天ぷら専門店の「ひらお」。店内はカウンター形式で、揚げたての天ぷらを一品ずつ提供するスタイル。地元のみならず観光客にも人気の店だ。

この店で天ぷらと並ぶほど人気なのが、実は「イカの塩辛」。ご飯との相性バッチリ。しかも無料で食べ放題という「ひらおの名物」となっている。

しかし4月6日、取材班が店を訪れてみると…。

川崎健太キャスター:
ないですね。カウンターに置いていた「イカの塩辛」の容器がありません

カウンターには、あのイカの塩辛や漬物といった総菜の姿が見当たらない。提供をやめてしまったのか?

天麩羅処ひらお大名店・大石尚幸店長:
「イカの塩辛」は、いまは小皿で提供しております。“おかわり”は何度でも自由です

実は感染対策としてカウンターに置く提供方法を中止していて、いまは1皿ずつ小分けして提供するかたちをとっている。

川崎健太キャスター:
これからもまだこのスタイルを続けられるんですか?

天麩羅処ひらお大名店・大石尚幸店長:
今、いろんなところでの飲食店への迷惑行為が多い中で、やっぱり目の届かない部分とか卓上に置いたら(迷惑行為が)出てくるので。このままのスタイルでやることで、迷惑行為の対策になるかなと

このほか使い捨ての割り箸や紙コップの利用など、コロナ禍での感染対策を「迷惑行為対策」として今後も続けていく方針だ。

天麩羅処ひらお大名店・大石尚幸店長:
コスト的には、コロナ禍前の3倍くらいはかかっている状況です。しかし迷惑行為をされたときのリスクのほうが高いと思うので、それに店側としても対応していかないという部分で、継続ですね

コロナ前の提供方法に戻そうとしていた矢先で相次いだ飲食店での迷惑行為。名物のイカの塩辛がカウンターに並ぶのはまだ当分、先になるという。

天麩羅処ひらお大名店・大石尚幸店長:
「イカの塩辛」のお皿が空になった状態のときには、お声がけするようにしていますので、全然、気にせずに気軽にお声がけしていただければ対応しますので

川崎健太キャスター:
じゃあ、無くなったら「塩辛、下さい」って言っていいんですね?

天麩羅処ひらお大名店・大石尚幸店長:
はい。ぜひ、ぜひ!

迷惑行為の多くは「犯罪」

迷惑行為はその多くが「犯罪行為」だ。

例えば、しょう油のつぎ口をなめる行為は「業務妨害罪」。自分で取った寿司を食べ、皿をレーンに戻す行為は「詐欺罪」。レーンの寿司に唾液をつけるのは「器物損壊罪」。他人が注文した寿司を勝手に食べる行為は「窃盗罪」にあたる。そして、民事裁判で莫大(ばくだい)な損害賠償を請求されることもあるのだ。

SNSを運営する会社が、動画が適切に投稿されるよう管理する。その対策を講じていく。この点も重要になりそうだ。

コロナ禍という暗いトンネルを抜けつつある飲食店にとって、相次ぐ迷惑行為は新たな悩みの種となっている。

(テレビ西日本)

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